【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(16日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる16日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

イジュームで集団墓地を確認

ウクライナ軍の反転攻勢で奪還された東部ハルキウ州の重要拠点イジュームで、多数の住民が殺害され、埋められたと見られる集団墓地が確認されました。

現場はイジューム北側の森の中で、16日、数十人の作業員が土を掘り返す中、ウクライナの捜査員が、土の中から相次いで見つかっている遺体の確認作業を進めています。

NHKの取材班が現場に入ったところ、少なくとも6体の遺体がシートに覆われているのが確認されました。

ハルキウ州で戦争犯罪の捜査を行っている検察官は、記者団に対し、「この一帯では、すでに25人の遺体が確認された。中には両手がひもで結ばれていた状態の人もいた」としたうえで、「全体ではおよそ500人の遺体があると見られる」と話していました。

東部のイジューム 周辺で450基の集団墓地か

ウクライナ軍が東部ハルキウ州で奪還した重要拠点、イジュームについて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は16日、この周辺でロシア側が作ったとみられる450基の集団墓地が発見されたと明らかにしました。

ポドリャク大統領府顧問は「数か月の間、ロシア軍の占領地域では暴力や拷問、それに大量殺人が横行していた。私たちは悪を放っておかない」と強く非難しました。

また、イジュームで発見された集団墓地だとしてロイター通信が配信した写真には、木で作られた十字架がならんで立てられている様子がうつされています。

ウクライナの人権オンブズマンのドミトロ・ルビネッツ氏は16日、SNSで「イジュームではロシア軍によって7割の建物が破壊された。また、軍や警察、それに市民たちと、戦争犯罪が行われていた場所を複数特定することができた。このうち、ある建物の地下室では、市民たちが拷問を受けていた」と述べ、戦争犯罪の証拠の収集を継続して行っているとしています。

イジューム中心部の様子は

ウクライナ東部ハルキウ州のイジュームの中心部では、多くの住宅や商店が戦闘によって破壊されています。このうち学校では、入り口や校舎が大きく崩れています。

一方で、中心部にある市役所では、今回の反転攻勢を受けて、ウクライナの国旗が掲げられるようになっています。

住民の女性は「住んでいるアパートの屋根に砲撃があり、少しでもずれていたら死ぬところでした。戦闘が終わりこのまま平和な状態が続いてほしいです」と話していました。

ロシア側の兵力 人員不足深刻か

ウクライナでは、東部や南部でウクライナ軍が反転攻勢を続ける中、イギリス国防省は16日の分析で、ロシア政府とのつながりが指摘される民間軍事会社「ワグネル」が関わる形で、受刑者に対して減刑や金銭と引き換えにウクライナでの戦闘に加わるよう動員を再び活性化させていると指摘しています。

また、ロシアの士官学校では、訓練の期間を短縮したり卒業の時期を早めたりしているとしたうえで「ほぼ間違いなく士官候補生たちをウクライナでの作戦に参加させるためだろう」としてロシア側の兵力不足が深刻になっていると分析しています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州ではほぼ全域を解放したと強調していて、州都ハルキウの中央駅では16日早朝、首都キーウからの列車が到着し、情勢が好転したとして避難先から戻ってくる人の姿も見られました。

子どもを連れた女性は「子どもをポーランドに避難させていましたが今回、ハルキウに戻すために連れてきました。やはりわが家がいちばんです」と話していました。

また、妻と子どもを迎えにきていた男性は「反転攻勢がうまくいっていることをうれしく思います。ただ、解放された地域では、ロシア軍による住民への残虐な行為が明らかになっています。ブチャと同じようなことが起きていますが、こうした問題は絶対に許してはなりません」と話していました。

ロシアで“隠れ動員”の動き

ウクライナ侵攻を続けるロシア軍の兵力不足が指摘される中、ロシア国内では、事実上の動員とも受け止められる動きが出ています。

プーチン大統領の側近の1人で、チェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏は15日、SNSに「政権による戒厳令の宣言を待つことも、軍事作戦の終わりをじっと待つ必要もない」と投稿したうえで、ロシア国内の自治体のトップに対し、地域単位で動員をかけるよう訴えました。

カディロフ氏は「自治体ごとに1000人ずつ志願兵を準備すれば、全国規模で8万5000人という軍勢になる」と主張していて、16日までに少なくとも6人の知事がこれに同調する姿勢を示しています。

ロシア大統領府は、国民を動員する考えはないとしていますが、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は15日「プーチン政権はハルキウ州での敗北に対して総動員の条件を整えるより、隠れた動員に賭けているようだ」と分析しています。

イギリス国防省も16日の分析で、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が、ロシア人の受刑者に対して、減刑や金銭と引き換えに戦闘に加わるよう勧誘する動きを活発化させていると指摘しています。

アメリカ ウクライナに砲弾など860億円相当の軍事支援

アメリカのバイデン政権はロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して最大6億ドル、日本円にしておよそ860億円相当の追加の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には高機動ロケット砲システム=ハイマースに使われるロケット弾や砲弾などが含まれるということです。

アメリカ国防総省によりますとロシアによる侵攻が始まって以降、アメリカがこれまでにウクライナに行った軍事支援は総額でおよそ151億ドル、日本円にしておよそ2兆1600億円に上ります。

ウクライナ軍 ハルキウ州で攻勢もルハンシクなどで警戒強める

ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナでゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州の大部分を奪還したとして「大きな勝利だ」と強調しました。

一方で、隣接する東部のルハンシク州やドネツク州ではロシア軍が激しい攻撃を続けていて、地元当局は警戒を強めています。

ウクライナでは東部や南部でウクライナ軍が反転攻勢を続けていて、ゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州では、ほぼ全域を解放したと強調しました。

15日には首都キーウを訪れたEU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長と会談し、ウクライナ大統領府によりますと、この中でゼレンスキー大統領は「われわれは町や村をロシア軍の支配から日々解放し、士気を高めている。大きな勝利だ」と述べて自信を示しました。

一方、ハルキウ州に隣接するルハンシク州のハイダイ知事は15日、地元メディアのインタビューで「ルハンシク州を含む多くの地域では、今も激しい戦闘が続いている。ハルキウ州のような速攻のシナリオが繰り返されることはない」と述べ、警戒を強めています。

また、ドネツク州のキリレンコ知事は15日、ウクライナ側の拠点の1つバフムトで5階建てのアパートがミサイル攻撃によって破壊されたほか、別の町では病院が攻撃を受けてけが人が出ているとSNSに投稿し、住民に避難を呼びかけています。

ロシア外務省のザハロワ報道官は15日の記者会見で、ウクライナに兵器を供与する欧米に敵意を示しながら「軍事作戦の目的を達成するという緊急性は日増しに強まっている」と主張し、今後、ロシアが攻撃を激化させる可能性もあるとみられます。

ハルキウ 中央駅 戻ってくる人の姿も

16日早朝、ハルキウの中央駅には首都キーウからの列車が到着し、情勢の好転を受けて避難先から戻ってくる人の姿もありました。

子連れの女性は「子どもをポーランドに避難させていたが、今回ハルキウに戻すために連れてきた。やっぱりわが家が1番です」と話していました。

また、妻と子どもを迎えにきていた男性は「反転攻勢がうまくいっていることをうれしく思う。ただ、解放された地域ではロシア軍による住民への残虐な行為が明らかになっている。ブチャと同じようなことが起きているわけだが、こうした問題は絶対に許してはならない」と話していました。

IAEA理事会 ロシアに原発占拠やめることなどを求める決議採択

砲撃が相次ぎ、安全性への懸念が広がっているウクライナのザポリージャ原子力発電所をめぐってIAEA=国際原子力機関の理事会は、ロシアに原発の占拠をやめることなどを求める決議を採択しました。

今月12日からオーストリアで行われているIAEAの理事会は、15日、ウクライナ南東部のザポリージャ原発に関する議論が行われました。

このなかでロシアによる原発の占拠を非難するとともに、ウクライナ側に管理を戻すためロシアに占拠をやめることなどを求める決議が提出されました。

会合は非公開ですが、ロイター通信によりますと、この決議に35か国の理事国のうちロシアと中国が反対し、アジアやアフリカの7か国が棄権したものの、賛成多数で可決されました。

これを受けて、ロシアの代表部は声明を発表し、「決議はいちばんの問題の砲撃について触れていない」と反発し、砲撃はウクライナによるものだと主張しました。

ザポリージャ原発は、相次ぐ砲撃により一時的に外部電源を失うなど安全性への懸念が広がっていて、IAEAは原発周辺を安全な区域に設定するよう提案しています。

IAEAのグロッシ事務局長は、このところは原発やその周辺で砲撃がやんでいるとしながらも、より広い範囲では砲撃が続いていると懸念を示していて、安全の確保が引き続き課題となっています。

ロシア・イラン首脳会談 結束して欧米に対抗か

ロシアのプーチン大統領とイランのライシ大統領は15日、上海協力機構の首脳会議が開かれているウズベキスタンで会談しました。

イランは今回、これまでオブザーバーとして参加してきた上海協力機構への正式加盟に向けた文書に調印していて、ライシ大統領はロシアの後押しに感謝したうえで「イランは政治や経済、航空宇宙分野などでロシアとの戦略的関係を発展させる決心をしている」と述べました。

これに対し、プーチン大統領は来週、ロシア企業およそ80社による経済視察団をイランに派遣することに触れ「地域を越えたつながりが進み、多くの問題でわれわれは近い立場にある」と述べました。

一方、ウクライナ情勢をめぐり、苦戦を強いられるロシアに対し、イランは無人機を供与しているとアメリカなどから指摘されていて、欧米側は両国の軍事面での接近も警戒しています。

上海協力機構にイランが正式に加盟する見通しとなったことで、今後、両国はこの枠組みを通じて一層結束し、欧米に対抗する姿勢を強めていくとみられます。

中ロ首脳 軍事侵攻後 初の対面会談 対米姿勢で結束強化を強調

中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は、ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降、初めて対面で会談しました。
両首脳は、ウクライナや台湾をめぐる問題についても意見を交わし、ともに対立するアメリカをにらんで、結束を強める姿勢を強調しました。

習近平国家主席とプーチン大統領は、中央アジアのウズベキスタンで、上海協力機構の首脳会議が開かれるのに合わせて、日本時間の15日夜、会談しました。

両首脳が対面で会談するのは、ことし2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降、初めてです。

会談の冒頭でプーチン大統領は「ウクライナ危機に関する中国のバランスのとれた立場をわれわれは高く評価している」と、謝意を示しました。

そのうえで「われわれは中国側の懸念も理解している。きょうはロシアの立場を詳細に説明したい」と述べ、ウクライナ情勢について習主席と意見を交わしたとみられます。