経産省 この冬の電力需給の「予備率」全国で3%確保の見通し

経済産業省は、この冬の電力需給について、供給の余力を示す「予備率」が、全国すべての地域で、安定供給に最低限必要な3%を確保できるとする見通しをまとめました。夏に続いて冬も全国を対象に、無理のない範囲で節電を呼びかける節電要請を行う方向で調整する方針です。

経済産業省は15日の審議会で、ことし12月から来年3月までの電力需給の見通しを示しました。

この見通しでは、10年に1度の厳しい寒さを想定していて、需給が最も厳しくなる来年1月の供給の余力を示す「予備率」は、
▼東京電力と東北電力の管内で4.1%、
▼中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力の管内で4.8%、
▼北海道電力の管内で7.9%などとなっています。

また来年2月は、
▼東京電力と東北電力の管内で4.9%、
▼そのほかの電力会社の管内は6%以上と、
全国すべての地域で安定供給に最低限必要な3%の予備率を確保できる見通しです。

ただ、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、火力発電の主な燃料であるLNG=液化天然ガスの調達をめぐる状況は予断を許さないほか、ここ数年は想定を超える厳しい寒さで電力需要が高まるケースも相次いでいるとしています。

15日の審議会では、夏に続いてこの冬も、節電要請を行うことについて検討することが了承されました。

これを受けて経済産業省は、数値目標は設定せず、ことし12月から来年3月にかけて全国を対象に、無理のない範囲で節電を呼びかける方向で調整する方針です。

官房長官「依然として厳しい見通し 安定供給確保へ全力」

松野官房長官は、午前の記者会見で「この冬の電力需給は、6月時点における見通しから、火力発電所の復旧前倒しや原子力発電所の稼働により改善する見通しとなったものの、東北・東京エリアの来年1月の予備率が4.1%と見込まれるなど、依然として厳しい見通しだ」と述べました。

そのうえで「電力の安定供給確保に向けて、引き続き、休止中の火力発電所の稼働や必要な燃料調達、原子力発電所の稼働の確保などに全力で取り組む。節電要請の必要性については、経済産業省の審議会での議論の結果を踏まえ適切に対応していきたい」と述べました。

西と東で違う周波数の「変換設備」増設へ 現地の様子を公開

電力各社は需給がひっ迫した際、電力を融通しますが、電気の周波数は東日本が50ヘルツ、西日本が60ヘルツと異なっているため、融通の際には「変換設備」で周波数を変える必要があります。

このため、中部電力パワーグリッドでは電力需給のひっ迫などに備え、周波数の境界線近くの静岡市にある「変換設備」を増設することになり、15日に現地の様子が報道陣に公開されました。
現在1台しかない「変換設備」を新たに2台増やす計画で、設備が入る建物の土台部分を整備する工事が行われていました。

2027年度末の完成を予定していて、これにより現在の3倍の90万キロワットの電力を融通できるようになるということです。
中部電力パワーグリッドで工事責任者を務める島本龍さんは「今回の工事で日本全体の電力の予備率が向上し、安定供給につながるので、計画通り工事が進むよう取り組んでいきたい」と話していました。