ゼレンスキー大統領 東部重要拠点を訪問 攻勢続ける姿勢を強調

ウクライナのゼレンスキー大統領は、侵攻を続けるロシア軍が支配していた東部ハルキウ州の重要拠点を訪れてロシア軍から奪還したことをアピールし、さらに攻勢を続ける姿勢を強調しました。

ウクライナ軍は東部のハルキウ州で反転攻勢を続けていて、マリャル国防次官は14日、SNSにこれまでに州内380余りの集落とおよそ15万人が解放されたと投稿したうえで「今後も戦わなければならない。時間と体力と忍耐が必要だ」と強調しました。

また、ゼレンスキー大統領は14日、ハルキウ州の重要拠点イジュームを訪れ、国旗を掲揚するなどしてロシア軍から奪還したことをアピールしたうえでほかの地域の奪還に向けてさらに攻勢を続ける姿勢を強調しました。

ウクライナ側の反転攻勢についてロシアの国営メディアはほとんど伝えていませんが、12日に放送された国営テレビの政治討論番組では、出演した著名な映画監督が「今回の敗北は認めざるをえない。そうしないとさらに深刻な敗北を味わうことになる」と述べました。

こうした指摘に対して、プーチン大統領に忠誠心を示す武闘派の側近で、ウクライナ侵攻ではチェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏が14日、SNSで動画を公開し「作戦に懐疑的な解説者たちを安心させてやろう。われわれはどこへも引き下がらない」などと批判したうえで、軍事侵攻への支持を呼びかけました。

一方、ロシアの議会では国民を動員すべきだという意見も出る中、政権与党の幹部で下院のボロジン議長は14日、「これは軍事作戦だ。重要なのは国家の安全だ」と述べ、ウクライナ情勢は非公開の場で話し合うよう議員に求める場面も見られました。

軍事専門家 “ウクライナ 進軍速度は遅くなる”

ウクライナの軍事専門家はNHKの取材に対し、ウクライナ軍は東部に向けて反転攻勢を強めるとする一方、さらに東部に進めばロシア軍がロシアからの後方支援を受けやすい地域になるため、ウクライナの部隊が進む速度は遅くなるという見通しを示しました。

ウクライナの軍事専門家、ムシエンコ氏は14日、首都キーウでNHKのインタビューに応じ、ウクライナ軍の東部での反転攻勢について「ロシア軍が東部ドンバス地域を掌握する機会を失わせる成果をあげた」と指摘しました。

また、今後について、ウクライナ軍はさらに東に進むとする一方で「東に進めばロシア軍はロシアから後方支援を受けられやすくなる。ウクライナ軍の反転攻勢のスピードは遅くなるだろう」と述べ、ウクライナ軍が先週以降見せているような速度で部隊を進めていくのは難しくなるとの見方を示しました。

一方、ロシアの次の出方については「ハルキウ州での敗退の後、ロシア軍の主な目的は部隊をとどめて冬まで持ちこたえることだろう。冬がくればエネルギー問題でウクライナや欧米を脅し圧力をかけられると考えている」と述べ、ロシアは戦闘を長期化させることで、欧米の「支援疲れ」が起きることをねらっているという見方を示しました。