【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(15日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる15日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ザポリージャ原発の管理公社総裁“砲撃はロシア軍によるもの”

砲撃が相次ぐウクライナのザポリージャ原子力発電所について、この原発を管理する原子力発電公社の総裁は、砲撃はロシア軍によるものであり、それを裏付ける客観的な証拠を持っていると強調しました。

ザポリージャ原発は今月1日からIAEA=国際原子力機関の専門家チームによる調査が行われている間も相次いで砲撃を受けました。

この原発を管理するウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムのペトロ・コティン総裁は、15日、NHKのインタビューに応じました。

このなかでコティン総裁は「ロシア軍はIAEAが来る前に戦車や武器を動かしたり、砲撃や銃撃のあとを修復したりして、証拠隠滅を図ろうとしていた」と述べ、砲撃はロシア軍によるものであり、それを裏付ける住民らの証言など客観的な証拠を持っていると強調しました。

そして「ロシア軍が原発から撤退すれば、安全に関するすべての問題に終止符が打たれることは明らかだ」と述べて、原発の非武装化の必要性を訴えました。

この原発は砲撃によって一時、外部電源を喪失しましたが、その後送電線の一部が復旧しています。

コティン総裁は原子炉を冷却するなどのための非常用電源について「非常用発電機の燃料はおよそ10日間持つと見ているが発電機が故障したり砲撃されたりすれば、どうなるかわからない。福島第一原発のような事故が起こらないよう、できるすべてのことをしている」と述べ、危険と隣り合わせで安全確保に努めている状況を説明しました。

ゼレンスキー大統領「ハルキウ州のほぼ全域が解放」

ゼレンスキー大統領は15日に公開した動画で、「現在、ハルキウ州のほぼ全域が解放されている。兵士たちの類をみない活躍により多くの人が不可能だと考えていたことを再び成し遂げることができた」と述べました。

国連事務総長 “冷戦期以降で最大の分断 対話を通じ打開を”

国連のグテーレス事務総長は来週から始まる国連総会の首脳演説について「希望を与え、分断を克服するものでなければならない」と述べ、ウクライナ情勢をめぐって国際社会の対立と分断が深まる中、対話を通じて事態の打開に向けて協力するよう加盟国に呼びかけました。

第77期の国連総会は13日に開幕し、来週20日からは各国の首脳や外相らによる演説が行われる予定です。

これを前に国連のグテーレス事務総長が14日、ニューヨークの国連本部で記者会見し「今回の国連総会は大きな危機の時期に開催されている。地政学的な分断は冷戦期以降、最も大きくなっている」と述べウクライナ情勢をめぐって国際社会の対立と分断が深まっている現状に強い危機感を示しました。

さらに、グテーレス事務総長はウクライナ情勢を背景に世界的に食料価格が高騰して貧困層が影響を受けるなど、国際社会は多くの課題に十分対応できていないと指摘しました。

そのうえで来週から始まる首脳演説について「希望を与え、分断を克服するものでなければならない。その希望は対話と議論を通じてのみもたらされる」と強調し、事態の打開に向けて協力するよう加盟国に呼びかけました。

ゼレンスキー大統領の車が事故 大きなけがなし 現地メディア

ウクライナメディアなどは15日、ゼレンスキー大統領の報道官のフェイスブックを引用する形でゼレンスキー大統領が乗った車が首都キーウで、別の車と衝突したと伝えました。ゼレンスキー大統領は医師の診察を受けましたが、大きなけがはないとしています。

事故の具体的な状況については明らかにしていませんが「すべての状況は調査中だ」としています。

ゼレンスキー大統領は14日、東部ハルキウ州の重要拠点イジュームを訪れ、国旗を掲揚するなどしてロシア軍から奪還したことを強調したほか、ハルキウ市内で会議に参加していて、キーウに戻った際に事故に遭ったものとみられます。

ゼレンスキー大統領は15日、自身のSNSに新たな動画を投稿しましたが事故については触れていません。

ウクライナ大統領府副長官 “東部ダムにロシアがミサイル攻撃”

ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官は14日、東部ドニプロペトロウシク州、クリビーリフのダムがロシア軍による8発の巡航ミサイルで攻撃されたとSNSに投稿しました。

この攻撃で水が漏れて近くの川の水位が上がったということで、ティモシェンコ副長官は15日、112棟の住宅が浸水被害を受けたことを明らかにしました。

この攻撃についてゼレンスキー大統領は14日、「街を水没させようという試みだ。占領者は混乱を引き起こし、人々から明かりや暖房、水、食料を奪うことしかできない」と非難する声明を出しました。

また、クレバ外相もSNSに「戦場で撃退されたひきょう者は、われわれの重要なインフラと市民を相手に戦争をしている。ロシアはテロ国家だ」と投稿しました。
現地からの映像では、道路がひざ下ほどの高さまで浸水し、女性2人がボートに乗って移動する様子が確認できます。

また、家の中が水浸しになり、男性がほうきで水をかき出す様子がうつっています。

住民の男性は「下水道が機能していない。トイレの水が流れなくなっている」と話していました。

また、クリビーリフの行政トップのオレクサンドル・ビルクル氏は「まだ修理作業を行っている。浸水の被害を受けた地域の水位は低下してきている」と話していました。

プーチン大統領 国連事務総長と電話会談

ロシアのプーチン大統領は14日、国連のグテーレス事務総長と電話で会談しました。これは国連のグテーレス事務総長が14日の記者会見で明らかにしたものです。

電話会談ではロシア産の食料や肥料の輸出について協議し、グテーレス事務総長は、世界的な肥料の価格高騰に懸念を示したうえで「食料不足につながるリスクがある。ロシアの肥料の輸出を阻む障害を取り除くことは現時点で絶対に必要だ」と述べ世界の食料危機を回避するためロシア産の肥料の輸出再開が必要だという考えを改めて強調しました。

一方、ロシア大統領府によりますと、プーチン大統領はウクライナにあるザポリージャ原子力発電所の安全確保に向けて、IAEA=国際原子力機関と協力しながら適切な措置をとっていると強調したということです。

ゼレンスキー大統領 東部の重要拠点訪れ国旗掲揚 奪還を強調

ウクライナのゼレンスキー大統領は14日、東部ハルキウ州の重要拠点、イジュームを訪れ、国旗を掲揚するなどしてロシア軍から奪還したことを強調しました。

ゼレンスキー大統領は集まった兵士たちを前に演説し「亡くなったものたちの記憶に1分間の黙とうをささげよう。彼らはわれわれの土地を解放し、命をささげた真の英雄だ」と述べ、ロシア軍との戦闘で犠牲になった兵士たちを追悼しました。

このあと、ゼレンスキー大統領が「ウクライナに栄光あれ」と呼びかけ、国旗の掲揚と国歌の斉唱が行われました。

14日に現地で撮影された映像では、集合住宅や学校が攻撃によって大きく壊れたり焼け焦げたりしているほか、建物の壁には無数の銃弾のあとが残されていて至るところで激しい戦闘があったことがわかります。

ゼレンスキー大統領は「この景色はとても衝撃的だが、同じ景色を最初に奪還したブチャで見た。これはわれわれの歴史であり、ロシアの歴史でもある。彼らがやったのだ」と、ロシア側を強く非難したうえで、ほかの地域の奪還に向けて、攻勢を続ける姿勢を強調しました。

ウクライナ側の反転攻勢についてロシアでは

ウクライナ側の反転攻勢についてロシアの国営メディアはほとんど伝えていませんが、12日に放送された国営テレビの政治討論番組では、出演した著名な映画監督が「今回の敗北は認めざるをえない。そうしないとさらに深刻な敗北を味わうことになる」と述べました。

こうした指摘に対して、プーチン大統領に忠誠心を示す武闘派の側近で、ウクライナ侵攻ではチェチェンの戦闘員を率いるカディロフ氏が14日、SNSで動画を公開し「作戦に懐疑的な解説者たちを安心させてやろう。われわれはどこへも引き下がらない」などと批判したうえで、軍事侵攻への支持を呼びかけました。

一方、ロシアの議会では国民を動員すべきだという意見も出る中、政権与党の幹部で下院のボロジン議長は14日、「これは軍事作戦だ。重要なのは国家の安全だ」と述べ、ウクライナ情勢は非公開の場で話し合うよう議員に求める場面も見られました。

軍事専門家 “ウクライナ 進軍速度は遅くなる”

ウクライナの軍事専門家、ムシエンコ氏は14日、首都キーウでNHKのインタビューに応じ、ウクライナ軍の東部での反転攻勢について「ロシア軍が東部ドンバス地域を掌握する機会を失わせる成果をあげた」と指摘しました。

また、今後について、ウクライナ軍はさらに東に進むとする一方で「東に進めばロシア軍はロシアから後方支援を受けられやすくなる。ウクライナ軍の反転攻勢のスピードは遅くなるだろう」と述べ、ウクライナ軍が先週以降見せているような速度で部隊を進めていくのは難しくなるとの見方を示しました。

一方、ロシアの次の出方については「ハルキウ州での敗退の後、ロシア軍の主な目的は部隊をとどめて冬まで持ちこたえることだろう。冬がくればエネルギー問題でウクライナや欧米を脅し圧力をかけられると考えている」と述べ、ロシアは戦闘を長期化させることで、欧米の「支援疲れ」が起きることをねらっているという見方を示しました。