ウクライナ領土奪還も “拷問あとが残る遺体” 解放地域で何が

ウクライナ東部の戦況が、この数日で大きく動きました。
領土奪還に向けてウクライナ軍が反転攻勢を強め、ロシア軍は東部での戦線の重要拠点となっているハルキウ州のイジュームからの撤退を事実上、表明しました。
さらにウクライナ軍は、ロシア軍が全域の掌握を主張したルハンシク州でも一部の集落を奪還したとみられています。

一方、ロシア軍から奪還した地域では拷問されたとみられる複数の遺体が見つかり、被害の実態解明が急がれています。

こう着状態から、一気に…

これはアメリカのシンクタンク「戦争研究所」の分析をもとに作成した戦況地図です。最新の9月12日時点の状況です。
東部でウクライナ軍が反転攻勢を強めています。
東部のハルキウ州付近に注目します。
過去にさかのぼり、拡大して見てみました。
すると、5月から今月の初めまではほとんど戦況に変化は見られませんでした。
ところが先週、戦況は大きく動きます。
日に日に“ウクライナが反撃を主張”する水色の地域が大きくなっていきました。

アメリカ軍の高官は12日、ロシア軍がハルキウ市近郊で掌握していた地域の大部分を明け渡し、撤退したという分析を明らかにしました。
部隊の多くはロシア領内に移動したとしています。
イギリス国防省は13日、ハルキウ州から撤退したロシア軍の部隊について「軍事侵攻の初期段階で大きな犠牲を出し、ウクライナ軍の反撃を前に完全に再編成されていなかった」と分析しています。

また、ハルキウ州に隣接するルハンシク州のハイダイ知事は12日、SNSに「ルハンシクの土地は1センチ単位で取り戻されている」と投稿しました。

ウクライナ軍 ルハンシク州でも一部奪還か

ロシアのプーチン政権は、ことし7月にはルハンシク州の全域を掌握したと主張していましたが、ウクライナ軍はルハンシク州でも一部の集落を奪還したとみられています。

ゼレンスキー大統領「6000平方キロメートル以上を解放」

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日に公開した動画で「われわれの兵士たちは、すでに東部と南部で合わせて6000平方キロメートル以上を解放した」と述べ、反撃をさらに進める考えを示しました。

反転攻勢に市民からは喜びの声

ウクライナ軍が東部で反転攻勢を強めていることについて、首都キーウの人たちからは喜びの声が聞かれました。

28歳の女性は「軍の仕事はすばらしく、ウクライナの勇敢さを目の当たりにできて誇らしく思います。戦争の終結と勝利を心待ちにしています」と話していました。

67歳の男性は「こうした状況を待ち望んでいました。ハルキウ州だけでなくドネツク州やルハンシク州、それにクリミアも取り戻さなければなりません。戦争にはさらに時間がかかるでしょうが、私たちは抵抗を続けます」と話していました。
一方、30歳の男性は東部での反転攻勢を好意的に受け止めつつも「ロシアは最後の手段として核のボタンを押すおそれもあります。今後どうなるかわかりませんが私たちはすでに多くの最悪な出来事を目の当たりにしており、何も恐れてはいません」と話していました。

ロシア軍の占領から解放された町では…

こうした中、ロシア軍が去った町では“新たな悲劇”が次々と明らかになってきています。

ウクライナの検察当局は12日、SNSへの投稿で、ウクライナ軍によってロシア軍の占領から解放された、東部ハルキウ州のザリズニチネで拷問のあとがある4人の遺体が発見されたと明らかにしました。

遺体は11日に見つかり、4人のうち3人は民家の敷地に、もう1人は工場の敷地にそれぞれ埋められていたということです。

検察当局は、4人が占領中にロシア軍によって殺害された可能性があるとして詳しい捜査を進めているとしています。

戦争犯罪が疑われる遺体も…

さらにウクライナの警察などは、同じく解放された州内の村、フラコウェの住民から寄せられた情報として、村が占領中だったことし3月、ロシア軍が2人の若い男性を殺害したうえ、住民に穴を掘って遺体を埋めるよう強制したと明らかにしました。

警察の調べによりますと遺体は耳がない状態で、後頭部には銃で撃たれたあともあり、戦争犯罪が疑われるということです。
またウクライナ軍は13日、SNSに「解放された地域などではロシアによる多数の戦争犯罪が、記録されている」と投稿し、残虐な行為に関する訴えが相次いでいるとしています。被害の実態解明が急がれています。