【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(13日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる13日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

領土奪還も “拷問のあとがある遺体” 残虐行為の訴え相次ぐ

ウクライナの検察当局は12日、SNSへの投稿で、ウクライナ軍によってロシア軍の占領から解放された、東部ハルキウ州のザリズニチネで拷問のあとがある4人の遺体が発見されたと明らかにしました。
遺体は11日に見つかり、4人のうち3人は民家の敷地に、もう1人は工場の敷地にそれぞれ埋められていたということです。
検察当局は、4人が占領中にロシア軍によって殺害された可能性があるとして詳しい捜査を進めているとしています。

さらにウクライナの警察などは、同じく解放された州内の村、フラコウェの住民から寄せられた情報として、村が占領中だったことし3月、ロシア軍が2人の若い男性を殺害したうえ、住民に穴を掘って遺体を埋めるよう強制したと明らかにしました。
警察の調べによりますと遺体は耳がない状態で、後頭部には銃で撃たれたあともあり、戦争犯罪が疑われるということです。

またウクライナ軍は13日、SNSに「解放された地域などではロシアによる多数の戦争犯罪が、記録されている」と投稿し、残虐な行為に関する訴えが相次いでいるとしています。

ウクライナ ルハンシク州でも一部集落を奪還

ハルキウ州に隣接するルハンシク州のハイダイ知事は12日、SNSに「ルハンシクの土地は1センチ単位で取り戻されている」と投稿しました。
ロシアのプーチン政権は、ことし7月にはルハンシク州の全域を掌握したと主張していましたが、ウクライナ軍はルハンシク州でも一部の集落を奪還したとみられています。

ウクライナ軍の反転攻勢にキーウでは喜びの声

ウクライナ軍が東部で反転攻勢を強めていることについて、首都キーウの人たちからは喜びの声が聞かれました。
28歳の女性は「軍の仕事はすばらしく、ウクライナの勇敢さを目の当たりにできて誇らしく思います。戦争の終結と勝利を心待ちにしています」と話していました。
67歳の男性は「こうした状況を待ち望んでいました。ハルキウ州だけでなくドネツク州やルハンシク州、それにクリミアも取り戻さなければなりません。戦争にはさらに時間がかかるでしょうが、私たちは抵抗を続けます」と話していました。

一方、30歳の男性は東部での反転攻勢を好意的に受け止めつつも「ロシアは最後の手段として核のボタンを押す恐れもあります。今後どうなるかわかりませんが私たちはすでに多くの最悪な出来事を目の当たりにしており、何も恐れてはいません」と話していました。

原子力発電公社トップ「冷却停止だと2時間でメルトダウン」

ウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムのコティン総裁は、アメリカのCNNテレビのインタビューで、南東部にあるザポリージャ原子力発電所について「もし電力が失われ、冷却ができなくなれば、1時間半から2時間でメルトダウンが起きる」と述べ原子力事故のリスクに強い危機感を示しました。
また、コティン総裁は原子炉や燃料プールは常に冷却する必要があるとしたうえで「外部電源が失われた場合、ディーゼル発電機が唯一の選択肢だ。ディーゼル発電機は10日間ほどしか稼働できない」と述べ、外部電源を確保することの重要性を強調しました。
ザポリージャ原発についてIAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は12日の会見で相次ぐ砲撃によって一時、外部電源を喪失したものの、外部から電力を供給する予備の送電線が復旧したなどと説明しましたが、いまだ攻撃の対象となるリスクはなくなっておらず、原発の安全をめぐって予断を許さない状況が続いています。

「戦争犯罪」など捜査 日本の検察官2人を派遣

オランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所は、ウクライナ国内で行われた疑いのある「戦争犯罪」や「人道に対する犯罪」について捜査を進めています。
葉梨法務大臣は閣議のあとの記者会見で、この夏、日本の検察官2人をICCに派遣したことを明らかにしたうえで「ICCは、法の支配に基づく国際秩序の維持や強化という観点からその役割が期待されている。さらなる協力の一環として派遣した」と述べました。

米軍高官 “ハルキウ市近郊からロシア軍が撤退”

アメリカ軍の高官は12日、記者団に対し、ウクライナ軍が反転攻勢を続けるウクライナ東部の戦況について、ロシア軍がハルキウ市近郊で掌握していた地域の大部分を明け渡し、撤退したという分析を明らかにしました。
撤退したロシア軍の部隊の多くは国境を越えてロシア領内に移動したとしています。
そのうえで、この高官はウクライナ軍がハルキウ州内の重要拠点のイジュームも奪還した可能性が高いという認識を示しました。
この高官はアメリカなどが供与している兵器がウクライナ軍の反転攻勢に役立っていると指摘し、国際社会と連携しながらウクライナに対して必要な軍事支援を続けていく考えを強調しました。

松野官房長官「引き続き 対ロ制裁とウクライナ支援」

松野官房長官は閣議のあとの記者会見で「戦況の見通しについて確定的な評価や予測を示すのは困難だが、国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げてきた国際秩序の根幹がロシアのウクライナ侵略によって脅かされており、平和秩序を守り抜くため、G7=主要7か国をはじめとする国際社会が結束して、断固たる決意で対応していく必要がある」と述べました。
そのうえで「わが国は、主権と領土そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民とともにある。引き続き、強力な対ロ制裁とウクライナ支援の2つの柱にしっかりと取り組んでいく」と述べました。

ゼレンスキー大統領「6000平方キロ以上を解放」

ウクライナのゼレンスキー大統領は12日に公開した動画で「9月初めから今日までにわれわれの兵士たちはすでにウクライナの東部と南部で6000平方キロメートル以上を解放した。わが軍の移動は続いている」と述べ、さらなる反転攻勢を強調しました。

また、11日と12日の2日間にロシア軍が行ったエネルギー関連のインフラへの攻撃により、数十万人が停電の影響を受けたとしたうえで、ロシア軍が民間施設をミサイルで攻撃していると非難しました。

そして、「これはこの戦争をたくらんだ者の絶望の表れであり、ハルキウ州での敗北への反応である。彼らは戦場でわれわれの英雄に何もできないので、民間のインフラに卑劣な攻撃をしている」と述べました。

ウクライナ反転攻勢も ロシア軍事侵攻を継続する構え

ウクライナ軍が東部ハルキウ州で反転攻勢を続ける中、ロシア大統領府は12日「すべての目標が達成されるまで作戦は継続される」と軍事侵攻を継続する構えを改めて強調し、今後のプーチン政権の出方が焦点になります。

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、東部でウクライナ軍の反転攻勢の動きが鮮明になっていて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は「ウクライナ軍がハルキウ州のほぼ全域を奪還した」と分析しています。

ハルキウ州にいる親ロシア派の幹部は12日、国営ロシアテレビで、現地でウクライナ軍の部隊の規模がロシア軍の8倍に上ったという見方を示すとともに、市民およそ5000人が国境を越えてロシア国内に避難したと明らかにしました。

ロシア国防省はウクライナ東部での戦線の重要拠点となっているハルキウ州イジュームからの撤退を事実上、表明していて、「戦争研究所」はウクライナ軍がイジュームも奪還したと指摘しています。

そのイジュームの状況について12日、オンラインの記者会見を開いた市議会議員は戦闘に巻き込まれるなどして少なくともおよそ1000人の市民が死亡したと明らかにしました。

ロシア側は軍事侵攻の継続を強調

ロシア大統領府のペスコフ報道官は12日「すべての目標が達成されるまで作戦は継続される」と述べ、軍事侵攻を継続する構えを改めて強調しました。

プーチン大統領は、今月15日から行われる上海協力機構の首脳会議に出席するためウズベキスタンを訪問する予定ですが、大統領府に近い情報筋によりますと、これを前に戦況などについて分析する安全保障会議が開かれる可能性があるということで、今後のプーチン政権の出方が焦点になります。

原発周辺を安全区域に設定する案 協議開始

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、砲撃が相次いでいるウクライナのザポリージャ原子力発電所の安全確保に向けて、ウクライナとロシアの双方と協議を始めていることを明らかにしました。

グロッシ事務局長は、12日から始まったIAEAの理事会に合わせて本部があるオーストリアのウィーンで記者会見を開きました。

このなかで、相次ぐ砲撃によって今月5日に外部電源を喪失したウクライナのザポリージャ原発について外部から電力を供給する予備の送電線が復旧し、ほかの送電線についても復旧が検討されているなどと説明しました。

一方で、グロッシ事務局長は、「危機的な状況が起きるたびに技術者たちが対応し、次に同じことがないよう神に祈っている。こういう状況を続けてはならない」と述べ、改めて原発やその周辺への砲撃の停止を求めました。

そのうえで、原発周辺を安全な区域に設定するIAEAの案をめぐってウクライナとロシアの双方と協議を始めていることを明らかにし、「双方が関心を示している兆候が見て取れる」として原発の安全確保に向けて働きかけを強める考えを示しました。

「来年は世界の人口養う十分な食べ物ない可能性」世界食糧計画

世界各国で食料支援を行っているWFPでウクライナのほか中東や北アフリカなどを担当するフライシャー局長が12日、NHKのインタビューに応じ、ロシアによる軍事侵攻で滞っていたウクライナからの農産物の輸出が8月、再開されたことを重要な一歩だと評価しました。

しかし、今後については「農地や農業インフラが破壊されている上、農業が盛んな東部が戦いの前線となっていて、農家も兵士となって戦闘に加わっている」と述べ、ウクライナでは農作業が例年どおり進められない事態に陥っていると指摘しました。

そのうえで、この秋から来年にかけての穀物の収穫量は豊作だった昨シーズンの1億トン余りに比べ、3割以上落ち込むという見通しを明らかにしました。

また、世界の肥料の多くを生産していたロシアからの輸出が滞り、肥料の価格が高騰していることで世界中の農家が十分な肥料を買えなくなり、農産物の生産量が落ち込むおそれもあると指摘しました。

フライシャー局長は「ことしは農産物の価格の上昇で食料を買えないことが問題だったが、来年は世界の人口を養うために十分な食べ物がない状況に陥る可能性がある」と述べ、強い懸念を示し、危機的な状況は決して終わっていないと訴えました。

イジュームの被害と訴え

ウクライナ軍が東部ハルキウ州で反転攻勢を続ける中、ロシア国防省は10日、州内の重要拠点イジューム周辺に展開する部隊について「再配置を決めた」と発表し、イジュームからの撤退を事実上、表明したと受け止められています。

そのイジュームの状況について市議会議員が12日、オンラインで記者会見に参加し、市内では、戦闘に巻き込まれるなどして少なくともおよそ1000人の市民が死亡したと明らかにしました。

また、ロシア軍によって医療施設が破壊され、薬局の薬は略奪されたなどとして、必要な治療を受けることができず亡くなった人もいるということで、医療支援が喫緊の課題だと訴えました。

現在、市内には、およそ1万人がとどまっているということですが多くのインフラが破壊されていて、今後、冬に向けては住宅の暖房設備の復旧なども急ぐ必要があるとしています。