【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(12日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

原発周辺を安全区域に設定する案 協議開始

IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、12日から始まった理事会にあわせてオーストリア、ウィーンの本部で記者会見しました。

この中でウクライナのザポリージャ原子力発電所で重大な事故が起きないよう、原発周辺を安全な区域に設定する提案について「ウクライナ、ロシア双方との協議を始めた」と明らかにしました。

ザポリージャ原発は、相次ぐ砲撃により外部電源が失われた状態でしたがウクライナの原子力発電公社は、11日、一部の送電線が復旧し、外部からの電力供給を受けられるようになったと発表しています。

グロッシ事務局長は記者会見で相次ぐ砲撃について「こういう状況を続けてはならない」と述べあらためて原発やその周辺への砲撃の停止を求めました。

ロシア大統領府報道官「プーチン大統領に報告」

ウクライナ軍が東部ハルキウ州で反転攻勢を続ける中、ロシア大統領府のペスコフ報道官はロシアの軍事作戦について12日、「特別な軍事作戦はすべての目標が達成されるまで継続される」と改めて強調しました。

また、ロシア国防省が10日、ハルキウ州の重要拠点イジューム周辺の部隊について「再配置を決めた」と発表したことについて記者団から問われたのに対し、ペスコフ報道官は「特別な軍事作戦に関連することはすべてプーチン大統領に報告されている。大統領は、24時間体制で、ショイグ国防相や軍の司令官と連絡を取り合っている」と述べるにとどめました。

英国防省「ロシア軍 守勢に追い込まれている」

イギリス国防省は12日、ロシア軍が東部ハルキウ州だけでなく南部ヘルソン州でもウクライナ軍から物流拠点の橋の攻撃を受け、補給面で苦戦していると指摘しました。

そのうえで「ロシア軍の大部分の部隊は急きょ防衛を優先させることを余儀なくされている可能性が非常に高い。ロシア軍の上層部の指揮官に対する信頼はさらに悪化するだろう」としてロシア軍が守勢に追い込まれていると指摘しています。

米シンクタンク「欧米兵器の最大限の活用で奪還成功」

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は11日「ウクライナ軍が急速な反転攻勢によってハルキウ州のほぼ全域を奪還しロシアの作戦に大きな敗北をもたらした。ウクライナの成功は、欧米から供与された兵器を最大限活用し、巧みな軍事作戦を実行したことにある」とする分析を公表しました。

そして「戦争研究所」は、ウクライナ軍がイジュームも奪還したと指摘したうえで「ロシアが東部ドネツク州の全域を掌握するという目的を達成できる見通しがなくなった」としています。

「ロシアが捕虜に虐待や拷問」 国連の人権監視団

ウクライナの人権状況を調査している、国連の人権監視団は、ロシアがウクライナで拘束した戦争捕虜に対して虐待や拷問を加えていることを確認したと発表しました。

ウクライナの人権状況を調査している、国連の人権監視団のマチルダ・ボグナー団長は、12日までにロシアがウクライナで拘束した戦争捕虜に対して虐待や拷問を加えていることを確認したと明らかにしました。いくつかの収容施設については十分な食料や水、それに適切な衛生環境も提供されていないと指摘しています。

また、ウクライナ東部ドネツク州にある収容施設では、多くの収容者が結核やA型肝炎にかかっているという情報もあるということです。

さらにボグナー団長は、ロシア側は、戦争捕虜として複数の妊婦も拘束しているとして、「人道的な観点から即時の解放が考慮されるべきだ」と訴えました。

国連によりますと、ウクライナにおける人権状況の調査は、被害を受けた人への聞き取りなどを通じて行われているということですが、ロシア側は収容施設への立ち入りを拒否しているということです。

ウクライナ東部で大規模停電 火力発電所などロシア軍攻撃か

ウクライナ政府によりますと東部ハルキウ州では11日、火力発電所や水道施設などがロシア軍によるミサイル攻撃を受けハルキウ州やドネツク州を中心に大規模な停電が起きました。

地元ハルキウの市長は「皮肉な報復だ」と述べ、東部でウクライナ軍が領土を奪還していることへの報復だという見方を示しました。

ゼレンスキー大統領はSNSに「ロシアのテロリストたちは重要なインフラを攻撃した。軍事施設を標的とするのでなく人々から光と熱を奪うことを目的としている」と投稿し、ロシア側を非難しました。

仏マクロン大統領 プーチン大統領と電話会談 意見は平行線

フランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領は11日、電話会談を行い、ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所の安全確保に向けて意見を交わしたものの、平行線をたどったままでした。

フランス大統領府によりますと、電話会談でマクロン大統領は、ロシア軍が占拠していることで原発が危険にさらされているとしたうえで、ロシア軍が原発から重火器などを撤去し、IAEA=国際原子力機関の勧告に従うようプーチン大統領に求めたということです。

これに対してロシア大統領府によりますと、プーチン大統領は「放射性廃棄物の貯蔵施設などに対するウクライナ側の攻撃が破滅的な結果をもたらすおそれがある」と述べ、原因はウクライナ側の攻撃にあると主張しました。

そして、IAEAが加わった協議について受け入れる姿勢を示しました。

フランス大統領府は、マクロン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領やIAEAのグロッシ事務局長と協議を継続し、原発の安全確保に向けた合意が成立するよう、数日中に再びプーチン大統領と会談する予定だとしていますが、先行きは不透明です。

ウクライナ軍事専門家「領土奪還にはさらなる兵器支援必要」

ウクライナ軍が東部ハルキウ州などで進める反転攻勢について、ウクライナの軍事専門家は「ロシア軍が再び部隊を増強するのを防ぐことになる」と評価した一方で、領土奪還のためにはさらなる兵器の支援が必要だという考えを示しました。

ウクライナの元国防次官で軍事専門家のイーホル・カバネンコ氏は、NHKのインタビューに応じ、東部ハルキウ州などでのウクライナ軍の反転攻勢について、「大きな成功を収めている」としたうえで、「ウクライナ軍は、幹線道路などロシア側の補給ルートを支配下に置き、ロシア軍が再び部隊を増強するのを防ぐことになる」と評価しました。

その一方で、ロシア側からの領土の奪還については、「領土の解放にはさらなる軍事行動が必要で、一つ一つ進めていく戦略になると思う」と述べ、長期化を見据えた戦いが必要だという認識を示しました。

そのうえでカバネンコ氏は「領土を解放していくうえで戦闘がさらに激化することが予想される」として、ウクライナ軍が所有していない、射程が300キロから500キロの兵器があれば、ロシア軍に対する抑止力になるとして、欧米各国からのさらなる兵器の支援が必要だという考えを示しました。

IAEA事務局長 電源供給復旧を歓迎

外部電源が失われ、安全性が懸念されていたロシア軍が占拠するウクライナのザポリージャ原子力発電所への電力供給が復旧したことを受け、IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は、11日「非常に重要な外部からの電力供給を回復できた」と歓迎しました。

一方で、「砲撃が続くかぎり危険な状況は変わらない」として、改めて原発や周辺での砲撃に懸念を示しました。

IAEAによりますと、復旧したのはザポリージャ原発へ電力を供給する予備の送電線です。

原発では、今月5日、砲撃による火災の影響で外部電源が喪失したのを受け、6基ある原子炉のうち唯一稼働していた6号機が出力を下げた状態で運転を続け冷却などに必要な電力を供給していました。

IAEAは、6号機のこの運用はタービンやポンプなど原発の重要な設備の損傷につながるおそれがあり、持続可能な対策ではなかったと指摘しています。

外部電力の復旧を受け、ウクライナ側は11日早朝に6号機を停止し、30時間ほどかけて核燃料を安定して管理できる冷温停止の状態にしようとしているということです。

原発では、残りの5基はすでに冷温停止しているということです。

ウクライナ軍司令官「3000平方キロメートル以上の領土解放」

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は11日、SNSにメッセージを投稿し「ウクライナ軍は占領された領土を解放し続けている。9月はじめから、3000平方キロメートル以上の領土を解放した」と明らかにしました。

また、「ハルキウ州では南や東だけではなく、北に向けても軍を進め始めた。ロシアとの国境まではあと50キロだ」と述べ、ウクライナ軍の反転攻勢が続いていることを強調しています。