【詳しく】新型コロナ水際対策 7日から緩和

新型コロナの感染拡大防止と社会経済活動の両立を図るため、水際対策が7日から緩和されました。

入国者数の上限は? 入国時に必要な手続きは? 経済への影響は?

今回の変更点、影響を受ける観光地などの受け止めについて詳しくまとめました。

水際対策 何が変わる?

まず、一日当たりの入国者数の上限が、これまでの2万人から5万人に引き上げられました。
そして、日本人を含むすべての入国者に求めてきた陰性証明書の提出について、3回目のワクチン接種を済ませていることを条件に免除されます。

また観光目的の外国人の入国について、添乗員を伴わないツアーを認めます。

「個人旅行」については認められず

一方で、航空券や宿泊先については旅行会社が手配することになっていて、個人旅行については引き続き認められていません。

また、すべての入国者に対しビザの取得が引き続き義務づけられています。

政府は、さらなる入国者数の上限の引き上げや、外国人の受け入れ条件の緩和を検討する方針です。

空港では「手続きの簡素化」歓迎の声

成田空港では7日、海外から到着した人のうち、3回目のワクチン接種を済ませた人は、検疫でこれまで求められていた陰性証明書の提出をせずに入国審査に向かっていました。
娘と孫に会うため訪れていたマレーシアから帰国した女性は「現地での検査にかかる時間や費用が負担になって、これまで会いに行けませんでしたが、今回の免除で孫にも初めて会えてぎりぎりまで家族で過ごすことができました。これで以前のように海外にも行きやすくなります」と話していました。

お土産店では観光客増加に期待

東京 浅草の「仲見世商店街」の土産店「仲見世 なかつか」では、ことし6月の外国人観光客受け入れ再開後、餅のような食感のお菓子やさまざまな味の金平糖など外国人に人気がある商品を充実させたということです。

ただ、ツアー客に限定されたほか、全行程で添乗員が同行することが求められたことからか思ったよりも外国人観光客による売り上げは増えなかったということで、今回の緩和に期待していました。

店を切り盛りする中塚よしみさんは「どうやって買ってもらおうかと魅力ある商品を並べるようにしています。外国人旅行客はどんどん増えてくれればありがたいなと思います。ただ、今後は時間の制限がない個人客も早く認めてもらいたい」と話していました。

「陰性証明書免除は大歓迎」出張再開の動き

国内の企業では、これまで見送ってきた海外出張を再開する動きも出ています。廃電線のリサイクル装置を製造している千葉市の会社は、新型コロナの感染拡大でおととし2月を最後に海外出張を見送ってきました。
海外出張の妨げになっていた大きな要因の1つが、これまで帰国した時に求められていた陰性証明書の提出です。コロナの検査を現地で受ける必要があるため、どこで検査を受けられるのか事前に調べるのに手間がかかることや、1人当たり数万円の費用が必要なこと、それに検査結果が出るまでに数時間かかるため出張期間が伸びてしまうことなど多くの課題があったということです。

会社では、今回の水際対策の緩和で3回目のワクチン接種を条件に陰性証明書が免除になることを受けて、インドの企業と契約を進めるため、今月4日から10日間の日程で海外出張を再開しました。

「三立機械工業」の中根昭会長は「陰性証明書の免除は大歓迎だ。先方と顔を合わせて話をすることで生まれるビジネスチャンスも多い。2年半、我慢をしてきたので久しぶりの海外出張でいいビジネスにつなげてきたい」と話していました。

“ビザの取得 緩和すべき”との声も

一方、海外の旅行会社の関係者からは、すべての入国者に義務づけられているビザの取得を緩和すべきだという声が聞かれました。

北海道運輸局はコロナ禍で人気が高まるゴルフをきっかけに道内を訪れる外国人観光客を増やそうと、海外の旅行会社を招いた商談会を開きました。
参加したシンガポールの旅行会社の担当者は「日本はアジアの人たちにとって最高の観光地の1つで、水際対策の緩和はよいニュースです。ただ、さらに多くの観光客を呼び込むには、ビザの緩和が必要です」と指摘していました。

また、韓国の旅行会社の担当者は「韓国人にとって気軽に行ける目的地になるには時間がかかると思います。できるだけ早くビザなしで入国できるようにしてほしい」と話していました。

「今回の緩和にメリットなし」疑問の声も

個人旅行が引き続き認められず、観光ビザの取得も義務づけられていることから、観光都市・京都では宿泊客の増加につながるのか疑問の声も出ています。

京都市下京区のゲストハウスには、紅葉シーズンで人気の来月と再来月、水際対策の緩和を予想して個人旅行を予定していた外国人を中心に10件以上の予約が入っていました。しかし今回の緩和が限定的だったことから、半分がすでにキャンセルになり、厳しい経営状況が続くことになりました。

ゲストハウスの野上嘉之さんは「旅行代理店を通した予約しかできない現状では正直、今回の緩和にもメリットはありません。小さな宿泊施設は限界がきていて、いつまで待てばいいのかと残念に思います」と話していました。

専門家 “経済効果は限定的になる可能性”

観光政策などに詳しいJTB総合研究所の牧野博明主任研究員は「海外との交流や旅行が以前のように戻っていく一歩となり影響は大きい。外国人観光客の入国について添乗員を伴わないツアーができるようになると、観光客が一定の時間、自由に行動できるようになる。地域の飲食店に立ち寄り売り上げに貢献するなどして、地域のにぎわいにつながる効果も見込める」と期待感を示しました。

一方で「水際対策が緩和されても、すべての入国者にビザの取得が義務づけられていたり、個人旅行が認められていなかったりするなど、ハードルは残っている。特にインバウンドの面では観光客が限られるのでさほど大きな効果は期待できないのではないか」と経済効果は限定的になる可能性があるという認識を示しました。