ザポリージャ原発 砲撃による火災で外部電源失う 冷却機能維持

ロシア軍が掌握するウクライナのザポリージャ原子力発電所では5日、砲撃による火災の影響で外部電源が失われました。原子炉などを冷却する機能は維持されていますが、IAEA=国際原子力機関が現地入りしたあとも安全性が懸念される状況が続いています。

ザポリージャ原発を運営するウクライナの原子力発電公社エネルゴアトムは、5日、砲撃による火災の影響で、稼働している6号機が、外部の電力網から切り離され、電力供給を受けられなくなったと発表しました。

6号機は出力を下げたうえで運転を続け、原発施設内で必要な電力を供給しており、原子炉などを冷却する機能は維持されているということです。

IAEAによりますと、原発と外部電源を結ぶ送電線自体に損傷はなく、エネルゴアトムは、消火のため、意図的に外部の電力網から切り離したものの、火災が消し止められしだい、再び接続する見通しだということです。

エネルゴアトムは、外部電源が失われるのは先月25日以来だとしています。

これについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は5日、動画を公開し「ザポリージャ原発は、ロシアの挑発によって放射線災害の一歩手前まできている」と危機感を示しました。

そして「原発への砲撃は、ロシアがIAEAや国際社会を軽視していることを意味する」と述べ、各国に対してロシアへの制裁を強化するよう求めました。

原発立地市の市長 ロシア軍の撤退が必要と訴える

砲撃が相次ぎ安全性への懸念が高まっているウクライナのザポリージャ原子力発電所が立地するエネルホダル市の市長が、NHKのオンラインインタビューに応じ「占領者の部隊がとどまるかぎり危険なままだ」と述べて、原発や市民の安全のためにはロシア軍の撤退が必要だと重ねて訴えました。

ロシア軍が占拠するザポリージャ原発周辺では、先月以降、砲撃が相次いでいて、今月1日には、IAEA=国際原子力機関の専門家チームが現地に入り調査を行いました。

しかし、5日には、砲撃の影響で、稼働していた6号機の外部電源が失われる事態となっています。

避難先のザポリージャ市で対応にあたっているエネルホダル市のドミトロ・オルロフ市長はNHKのインタビューに対し「IAEAの調査が行われたことは一歩前に進んだと言える」と一定の評価を示しながらも「残念ながら砲撃は続いていて、状況は変わっていない」と述べ依然として、原発や市民の安全が脅かされていると訴えました。

原発周辺への砲撃については「発射音が聞こえた直後に、爆発音が聞こえる。砲撃がロシア軍の占領地域内からなのは明らかだ」と述べ、ウクライナ軍の信用失墜などを狙ったロシア側による挑発行為だと非難しました。

またオルロフ市長は、市内には今も、およそ2万5000人の市民が残っているとしたうえで「市民が誘拐されるケースが増えている。携帯電話などを奪われ拷問された人もいる」と指摘したほか、食料や医薬品などの支援物資を送ろうとしてもロシア側が認めなかったと明かしました。

そのうえで「占領者の部隊がとどまるかぎり危険なままだ」と述べて、原発や市民の安全のためにはロシア軍の撤退が必要だと重ねて訴えました。