新型コロナ感染の子ども 中等症・重症の3分の2が基礎疾患なし

オミクロン株が感染の主流となっていたことし3月以降に新型コロナウイルスに感染し、中等症や重症とされた主に高校生以下の患者220人を調べた結果、基礎疾患のない人がおよそ3分の2に上ることが日本集中治療医学会の調査で明らかになりました。

日本集中治療医学会は、子どもの入院病床がある全国の医療機関を対象に、オミクロン株が感染の主流となっていたことし3月10日から今月15日までの間に新型コロナに感染した20歳未満の、主に高校生以下の患者の症状や基礎疾患の有無を調べました。

その結果、酸素の投与を受けたり人工呼吸器を装着したりして、中等症や重症として登録された患者は合わせて220人でした。

このうち、重症化のリスクが高いとされる基礎疾患があったのは70人で全体の3分の1以下にとどまり、およそ3分の2は基礎疾患のない人だったということです。

20歳未満の中等症・重症患者 9割以上が小学生以下

220人を年齢別にみると、1歳未満が15%、1歳以上の未就学児が43.6%、小学生が32.7%、中学生が4.1%、高校生以上が4.5%となっていて、小学生以下の子どもが90%以上を占めています。

また、患者の具体的な症状を感染の第7波とされることし6月26日以降から今月28日までに中等症や重症として登録された131人で調べた結果、最も多いのは急性脳症で26%、次いで肺炎が20.6%、けいれんが16.8%などとなっています。
また、およそ60%にあたる79人が集中治療室での治療が必要な状態だったということです。

日本集中治療医学会小児集中治療委員会は「以前と比べ、オミクロン株の流行以降は重症化する子どもの数が増えている。適切な感染対策をとって感染のリスクを下げてほしい」としています。

専門家「子どもの重症化防ぐためにワクチン接種を」

今回の調査について、日本小児科学会理事で新潟大学の齋藤昭彦教授は「オミクロン株の流行によって、感染者の数が増えたことで重症化する子どもの数も増え、臨床現場での大きな問題となっている」と指摘しています。

そして「重症化を防ぐ上で、最も効果的なのはワクチンの接種だ。接種可能な年齢の子どもはワクチンを接種してほしい」と呼びかけています。

5歳から11歳を対象にした子どものワクチンについて今月8日、厚生労働省の専門家で作る分科会は、子どもでのオミクロン株への効果や安全性に関するデータが集まってきたとして、接種を受けるよう保護者が努めなければならない「努力義務」とする方針を決めました。
また、日本小児科学会も今月、「接種を推奨する」と発表しています。
一方で、8月29日時点で5歳から11歳用のワクチンを2回接種した人は19.7%と、ほかの世代より低くなっています。

これについて齋藤教授は「新型コロナの流行が始まった当時、子どもは感染しにくく、感染したとしても無症状か軽症なのでワクチンは必要ないという印象があったことが大きな影響を与えているのではないか」と指摘しています。

「子どもをめぐる状況は大きく変わっている。子どもでもワクチンが重症化を防ぐ効果が確認されているほか、世界中で接種され、安全性に関する膨大なデータが集まっている。これまでのデータを見ても安心して接種できるワクチンなので、重症化を防ぎ、命を落とさないためにも接種が重要だ」としています。