ザポリージャ原発 IAEAが現地入りへ 安全確保につなげられるか

ウクライナのザポリージャ原子力発電所への攻撃が相次ぎ、大規模な事故への懸念が高まる中、IAEA=国際原子力機関は、専門家チームが今週、現地入りすると発表しました。原発施設の状況の把握や安全確保につなげられるかが、焦点となります。

ウクライナ南東部にあるヨーロッパ最大級のザポリージャ原発では今月に入って砲撃が相次ぎ、ウクライナとロシアの双方が相手の攻撃だと非難していて、25日には、外部電源が一時的に失われるなど重大な事故につながりかねないリスクに直面しています。

現地への専門家チームの派遣に向けて調整を進めていたIAEAは29日、グロッシ事務局長が率いる専門家チームが今週、現地入りすると発表しました。

グロッシ事務局長はSNSで「専門家チームは現地に向かっている。私たちはウクライナとヨーロッパで最大級の原子力施設の安全を守らなければならない」と投稿し、今週後半に現地での活動を始める予定だとしています。

IAEAによりますと専門家チームは、原発施設の被害の状況や安全装置が機能しているかどうか、それに、ロシア軍の管理下に置かれている原発の技術者らの労働環境などについて調査することにしています。

これについて、ザポリージャ州の一帯を掌握する親ロシア派側の幹部は29日、SNSに「今週中にIAEAの専門家が到着する予定で、心待ちにしている。ウクライナ側は、訪問を妨害するためには何でもするだろう」と投稿し、ウクライナ側がIAEAの訪問を妨害する可能性があると一方的に主張しました。

一方、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は、ロシア軍が原発の従業員に対して敷地内で進める軍の増強などについて、IAEAに口外しないよう、圧力をかけていると訴えています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は28日、「ロシアは、核施設へのIAEAの査察を妨害し、遅延させようとしたイランと同じような戦略を実施しようとしている」という見方を示しています。

IAEAの専門家チームについてアメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは27日、ロシアと鋭く対立するアメリカやイギリスの専門家は含まないなど、中立性に配慮して、調整を進めてきたと伝えています。

IAEAの専門家チームの派遣によって原発施設の状況の把握や安全確保につなげられるかが、焦点となります。