ロシアの兵士の人権保護NGO代表 侵攻後の兵士の実態を証言

ロシアで兵士の人権保護に取り組むNGO「徴集兵の学校」の代表、アレクセイ・タバロフ氏がNHKのインタビューに応じ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻後、兵士からの相談について「数倍に増えた。問い合わせは毎日、大量に来ていた」と述べ、急増したと明かしました。

タバロフ氏は、現在はプーチン政権の圧力から逃れるためにロシア国外で活動しているということですが、相談は、兵士本人のほか、兵士の家族や親族から寄せられているということです。

タバロフ氏は「彼らの中には『私たちは戦争に向けた準備ができていないし、参加したくない。ウクライナから去りたい』という人が多い。ロシア軍がこうした兵士をロシア本国に帰すことを認めず、ウクライナ領内に留め置いている」と述べ、戦闘に参加したくないという兵士の帰国をロシア軍が認めないケースが相次いでいたと指摘しました。

そのうえでタバロフ氏は、相談者などからの情報だとして、戦闘を拒否して逃亡しようとした数百人のロシア兵が、ウクライナ東部ルハンシク州の親ロシア派が事実上支配する地域のブリャンカにある収容施設に連れて行かれていたと指摘し、「施設は、ロシアの民間軍事会社『ワグネル』の管理下に置かれ、拒否した兵士は地下室に押し込められ、家畜のような環境に収容されていたようだ。『とにかく戦う必要がある、戦闘の拒否はできない』と言われ、暴力や脅迫も受けていた。皮肉なことに、この施設は『軍人の精神リハビリセンター』と呼ばれていたそうだ」と述べ、兵士が戦闘を強制されたほか、深刻な人権侵害の疑いもあるということです。

またタバロフ氏は、軍事侵攻の長期化で、多くのロシア兵が死傷し、士気低下も伝えられる中、政権側は、経済的に苦しい地方などで多額の報酬を提示して、ウクライナで戦う兵士を募集していると指摘します。

報酬は、兵士になる契約を結ぶだけで20万ルーブル余り、日本円にして50万円近くになるとして、「月収の上限が3万ルーブル(日本円でおよそ7万円)の貧しい田舎で暮らす人々にとっては、ウクライナに行く大きな動機となっている。私の知るかぎり、中央アジア諸国からもカネ目的で戦闘に参加している」と述べました。

そのうえで「これこそが『隠れた動員』の実態だ。われわれは各地方から部隊が編成され、派遣されているのを目にしているが、彼らが死ぬか生きるかはほとんど気にされていない」と指摘しました。

今後の見通しについては、「プーチン大統領には、金銭、物資、人員の面でも、さらに長期間、戦争を継続するための資源がある。代償にこだわらず、いくらでも必要なだけ兵士を投入するだろう」と述べ、プーチン大統領は軍事侵攻を止めることはないと強い懸念を示しました。