【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(23日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ザポリージャ原発近くの火力発電所に砲撃 2人死亡

ウクライナの原子力規制当局は22日、ザポリージャ原子力発電所の近くにある火力発電所がロシア軍の砲撃を受けたと発表しました。

この砲撃によって、ザポリージャ原発と火力発電所の間の通信が4時間ほど切断されたということです。

また、ザポリージャ原発と火力発電所が立地するエネルホダル市のドミトロ・オルロフ市長は、23日、自身のSNSで発電所周辺で車が攻撃され、男性2人が死亡したと発表しました。

このうち1人は、ザポリージャ原発の作業員だということです。

ゼレンスキー大統領「青と黄色の国旗を守る」

ウクライナのゼレンスキー大統領は23日、独立記念日を前に首都キーウで開かれた国旗掲揚式に参加し「青と黄色の国旗は、あるべき故郷で再び掲げられるだろう。われわれの土地と空に外国の色を認めることは決してない。青と黄色の国旗を守る準備は常にできている」と述べ、ロシアへの対抗姿勢を改めて鮮明にしました。

そのうえで、「この色のために命をささげた英雄たちを追悼する」と述べ、戦闘で犠牲になった兵士などに対して、黙とうをささげました。

侵攻あす半年 岸田首相 “ウクライナ支援を”

ロシアのウクライナ侵攻が始まって24日で半年となるのを前に、政府は関係閣僚会合を開き、ウクライナ国内の戦況や関係国による外交交渉の状況、それに世界のエネルギー市場や物価の動向などについて、最新の情報を共有しました。

そのうえで、岸田総理大臣は関係閣僚に対し、G7をはじめとした国際社会と今後も緊密に連携し、ロシアに対する制裁やウクライナへの支援に当たるとともに、今もウクライナにいる日本人の保護に取り組むよう指示しました。

また、ウクライナ侵攻をきっかけに国際情勢が不透明さを増す中、エネルギーの安定供給や日本の防衛体制の確保なども指示し、政府を挙げて万全の対応をとっていくことを確認しました。

ゼレンスキー大統領「残酷な者たち180日間 攻撃やめない」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、22日に公開した動画で、「残酷な者たちは、180日間、私たちの国のあらゆる場所で攻撃をやめていない。これまでにウクライナに対して使用した巡航ミサイルの数は3500発近くになる」と述べロシアを厳しく批判しました。

ロシア NPT再検討会議「最終文書」草案に強く反発

ニューヨークの国連本部で開かれているNPTの再検討会議は今週が4週間の会期の最終週で、「最終文書」の作成に向けた大詰めの交渉が始まっています。

議題の一つとなっているロシア軍が掌握するウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所については「最終文書」の草案でロシアによる軍事活動などの影響に重大な懸念が示されるとともにウクライナ当局の管理下に戻すよう求めています。

これについて、22日の協議では、ヨーロッパを中心に多くの国が「ロシアによる軍事侵攻が現在の状況を作った」などと指摘して草案の内容への支持を表明しました。

これに対しロシアの代表は、原発周辺への砲撃はウクライナ軍によるものだと改めて主張したうえで、草案の内容について「受け入れられない」と強く反発しました。

このあとの全体会合で再検討会議のスラウビネン議長は歩み寄りを促す考えを示しましたが、各国の対立が続く中、全会一致での合意の見通しはたっていません。

ウクライナ側 ミサイル攻撃を警戒

ウクライナでは、24日、ソビエトからの独立記念日を迎えるのを前に、ロシア軍が攻撃を激化させるという見方が出ていて、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「23日から24日にかけて、ウクライナの都市に向けたミサイル攻撃が増えるだろう。首都キーウも対象に含まれる」と述べ、警戒感を強めています。

一方、反転攻勢を目指すウクライナ軍は、南部ヘルソン州で、22日も、ロシア側が占拠していた橋を攻撃したと明らかにしました。

また8年前ロシアが一方的に併合し、今月に入ってロシアの軍事施設などで爆発や攻撃が相次いでいる南部のクリミアでは、22日、軍港都市セバストポリでロシア側の行政府のトップを務めるラズボジャエフ氏が「セバストポリ郊外で防空システムが作動し、無人機を撃墜した」とSNSで報告しました。

クリミア奪還を目指す2回目の国際会議開催予定

ウクライナ政府は23日、クリミア奪還を目指して各国との協調を図る2回目の国際会議をオンラインで開催する予定です。

これを前にウクライナのクレバ外相は22日、会議にはおよそ60の国や国際機関が参加すると見通しを示したうえで「クリミアはこれまでもこれからもウクライナであり続ける」と述べ、各国との連携を強化し、ロシアに圧力をかけるねらいを強調しました。

軍事侵攻が始まってから24日で半年となる中、クリミアをめぐる攻防も激しくなっています。

軍事侵攻の長期化で増え続ける兵士の死傷者や被害の状況

軍事侵攻が長期に及ぶ中、ウクライナ側・ロシア側双方で、兵士の死傷者が増え続けています。

【ロシア側死傷者】
ロシア国防省はことし3月下旬、ロシア側の兵士の戦死者が1351人、負傷者が3825人と発表して以降、人数を公表していません。
アメリカ国防総省のカール国防次官は、今月8日の会見で、軍事侵攻が始まって以降、ロシア側の戦死者と負傷者の数が合わせて7万人から8万人に上るという見方を示しました。

【ウクライナ側死者】
ウクライナの通信社によりますと、ウクライナ軍のザルジニー総司令官は今月22日、退役軍人などが出席する会合で、「戦闘の前線に赴き、死亡したおよそ9000人の英雄の子どもたちが、保護を必要としている」と述べ、これまでにおよそ9000人の兵士が死亡したことを公表しました。
また、ウクライナ大統領府で顧問を務めるアレストビッチ氏は、ことし6月の時点で、ウクライナ軍の兵士の死者数は一日当たりおよそ100人に上り、合わせて1万人ほどの兵士が死亡した可能性に言及しました。

【物的被害:兵器】
ウクライナ国防省は、軍事侵攻が始まってから今月22日までに、
ロシア軍の
▽戦車1919両、
▽装甲車4230両、
▽航空機234機、
それに
▽ヘリコプター198機を破壊したと発表しました。

一方、ロシア国防省は今月21日までに、
ウクライナ軍の
▽戦車と装甲車、合わせて4359両、
▽航空機267機、
▽それにヘリコプター148機を破壊したと発表しました。

【物的被害:インフラ】
国土が戦場となったウクライナでは、ロシア軍の砲撃や空爆による経済的な損失が増大しています。
首都キーウの経済大学の報告によりますと、インフラの被害総額は今月22日の時点で1135億ドル、日本円で15兆円余りに上ります。

▽およそ13万棟の住宅やアパート
▽900以上の医療機関
▽18の空港をはじめとするさまざまなインフラが破壊され、
復興には少なくとも2000億ドル、日本円で27兆円余りが必要になると見積もられています。

【避難した人】
国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、
ロシア軍の侵攻を受け、ウクライナから国外に避難した人の数は、
今月16日の時点でおよそ1115万人に上ります。
主な避難先は、
▽ポーランドがおよそ543万人
▽ハンガリーがおよそ118万人
▽ルーマニアがおよそ104万人
▽スロバキアがおよそ69万人
▽モルドバがおよそ57万人などとなっています。
また、
▽ロシアに避難した人はおよそ219万人となっています。

欧州市場の天然ガス価格 供給懸念から一時10%以上値上がり

ロシアの政府系ガス会社、ガスプロムは19日、ドイツ向けの天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」による供給について、ロシア側の設備の点検のため、今月31日から来月2日までの3日間停止するとしています。

これを受けて、22日のヨーロッパ市場では「オランダTTF」と呼ばれる天然ガスの指標価格が先週末の終値から一時、10%以上高い、1メガワットアワー当たりおよそ290ユーロまで値上がりしました。

これは、去年の同じ時期と比べると7倍近い水準です。

ロシア 思想家の娘死亡 治安当局“ウクライナ側の犯行”

ロシアの捜査当局は、首都モスクワ郊外で20日夜、走行中の乗用車が爆発し、ロシアの思想家のアレクサンドル・ドゥーギン氏の娘で、ジャーナリストのダリア氏が死亡したと発表しました。

ドゥーギン氏は、プーチン大統領の外交政策に影響を与えてきたとされ、欧米メディアからは「プーチン氏の頭脳」とも呼ばれる人物で、当局は、乗用車に爆発物が仕掛けられた殺人事件として捜査しています。

この事件について、ロシアの治安機関のFSB=連邦保安庁は22日、「ウクライナの情報機関が準備し、実行した」とする声明を発表しました。

連邦保安庁は、容疑者は1979年生まれのウクライナ人の女で、先月、ロシアに入国し、犯行後、エストニアに出国したなどと主張しています。

この事件については、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「ウクライナは関与していない」と述べ、両国の緊張が一段と高まるおそれがあります。

国連 ウクライナで少なくとも5587人の市民死亡

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から8月21日までに、ウクライナで少なくとも5587人の市民が死亡したと発表しました。
このうち362人は子どもだとしています。

地域別では、
▽東部のドネツク州とルハンシク州で3317人、
▽首都のあるキーウ州や東部ハルキウ州など、そのほかの地域で2270人の死亡が確認されているということです。

犠牲者の多くは砲撃や空爆などに巻き込まれ、命を落としたということです。

また、けがをした市民は7890人に上るとしています。

国連人権高等弁務官事務所は、激しい戦闘が行われた地域では死傷者の数が正確に把握できないとして、実際は、発表された人数を大きく上回るという見方を示しています。

侵攻から半年 世界経済への影響深刻に

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化は、インフレに拍車をかけ、世界経済を減速させると懸念されています。

ことしの世界経済の成長率について、IMF=国際通貨基金は1月の時点で4.4%と予測していましたが、その後、この見通しを2回下方修正し、7月には3.2%と、軍事侵攻前と比べると1.2ポイントの引き下げとなりました。

下方修正の理由について、IMFは、軍事侵攻がエネルギーや食料価格の高騰を招き、インフレを抑えるため、欧米の中央銀行が急ピッチで金融の引き締めを進めていることなどを挙げています。

そのうえで、ロシアからの石油の輸出減少やヨーロッパへの天然ガスの供給の停止などが、成長率のさらなる低下につながる下振れリスクだと指摘しています。

また、世界銀行もことしの世界経済の成長率を6月の時点で2.9%と、侵攻前の見通しと比べて1.2ポイント引き下げ、物価の上昇と景気の減速が同時に進む「スタグフレーション」のリスクが世界的に生じていると警鐘を鳴らしています。

原油価格は、景気の減速懸念などから侵攻前の水準まで下落していますが、天然ガスの価格は高騰していて、ロシアの軍事侵攻はインフレを通じて世界経済に深刻な影響を及ぼしています。

侵攻から半年 食料危機への懸念依然続く

ロシアのウクライナへの軍事侵攻から半年となる中、両国からの穀物の輸入に依存しているアフリカや中東では食料不足への懸念が続いています。

ロシアとウクライナは穀物の輸出大国で、軍事侵攻のあと輸出が滞るという懸念から小麦などの価格高騰につながりました。

FAO=国連食糧農業機関が、穀物などの国際的な取り引き価格をもとにまとめている「食料価格指数」は、3月は159ポイント余りと統計の開始以降、最も高くなり、その後も6月まで150ポイント台が続きました。

ロシアとウクライナが、トルコと国連の仲介でウクライナの農産物の輸出を再開することで合意した7月の指数は、140.9ポイントと低下したものの、比較的高い水準となっています。

また国連によりますと、8月20日までにウクライナの南部オデーサの港などから65万トン以上の穀物が運び出されたということですが、食料危機への深刻な懸念は依然として続いています。

FAOと国連のWFP=世界食糧計画が6月に公表した報告書では、アフリカや中東など20か国で9月にかけて深刻な飢餓の悪化が予想されるとしています。

このうち、エチオピアやナイジェリア、それにアフガニスタンなど6か国では最大で75万人が餓死するおそれがあると警告しています。

米 元国防長官「アメリカと同盟国が結束しウクライナ支援」

アメリカのオバマ政権時に国防長官やCIA長官を務めた、レオン・パネッタ氏はNHKとのインタビューで、「ウクライナでの戦争は、転換点となる戦争だ。なぜなら、ウクライナで起きていることは、21世紀の民主主義に何が起こり得るかについて、多くのことを示唆するからだ」と述べました。

そのうえで、「今起こりうる最悪のシナリオは、この戦争が長期にわたる消耗戦に陥ることだ。なぜなら、それがまさにプーチン氏がもくろんでいることだからだ。プーチン氏は、アメリカとその同盟国の力を時間をかけて弱らせようとしており、それを許してはならない」と強調しました。

そして、「アメリカと同盟国が強く結束して、ウクライナを支援し続けることが非常に重要だ」と述べ、今、西側諸国に求められているのは、ロシアに対し軍事的、経済的な圧力をかけ続けることだという考えを示しました。

そのうえでパネッタ氏は、「プーチン氏は当初、ウクライナに侵攻して2日以内に首都を制圧して政府を転覆させられると考えながら、それを達成できなかった。私はそのこと自体が、最終的にはロシアに敗北をもたらすとみている。プーチン氏はウクライナでの戦争に踏み切る決断をしたことにより、最終的には弱体化するだろう」と述べました。