使い終わったランドセル、押し入れに眠っていませんか?

使い終わったランドセル、押し入れに眠っていませんか?
小学生の相棒、ランドセル。卒業とともにその役目を終えますが、使い道もないのに捨てられないという人、多いのではないでしょうか。山梨県には家庭に眠っていたランドセルにもう一度、命を吹き込んでくれる職人がいます。(甲府放送局記者 清水魁星)

1年待ち 山梨で注目の職人

赤や白のステッチで縁取りが印象的な財布や名刺入れ。すべてランドセルから作られました。

製作したのは山梨県市川三郷町の上田彩さん、オーダーメードの革製品づくりが本業の革職人です。
「成人式を迎える娘に大好きだったおばあちゃんが買ってくれたランドセルをリメークしたものを贈りたい」という友人からの依頼をきっかけに役目を終えたランドセルのリメークを3年前にスタート。
評判が広がって県内外から注文が寄せられるようになりました。

現在なんと1年待ちだといいます。
上田さん
「捨てられない、捨てるにはちょっと忍びないっていう方たちが持ってきてくださいますね。ずっとしまっておいたんだけど、何か形に残るものに残したいというお話をいただいて」

新たな依頼は3兄弟の同時リメーク

ことし、大きな依頼が舞い込みました。

3人の兄弟のランドセルのリメークです。
依頼した齋藤亜紀子さんは、大学入学を機に離れて暮らす長男の彰太さんが、来年、二十歳になるのに合わせて記念のものを渡したいと、高校生の次男と三男の分といっしょに注文しました。
齋藤亜紀子さん
「思い出が詰まったランドセルをもう1回リメークして自分の手元に戻って使えるというところに共感しました」
彰太さんのランドセルは、祖母と11年前に亡くなった祖父が、入学祝いで買ってくれた特別なものだといいます。
齋藤亜紀子さん
「すごくかわいがってくれていたし、朝は毎日信号の角まで6年間毎日見送って、迎えに行ってくれていました。孫ときょう学校で何あったとか会話する時間が楽しかったんじゃないかなと思います」

傷や汚れはあえて残す

思いを託された上田さん。3人のランドセルを使って家族6人分の財布やコインケースなどを作ることになりました。

6年間使い込まれたランドセルだけに、新品の素材とは異なる難しさがあるといいます。

外遊びが大好きだった次男の僚太さんのランドセルは、潰れて形が変形。
表面もはがれていたため僚太さんの財布は兄弟2人のランドセルから作ることにしました。

リメーク作業は、ランドセルから切り取った素材に別の革をあわせ、糸で縫い合わせていきます。

傷や汚れは、一人一人の個性としてあえて残します。
さらにランドセルらしさを残そうと、財布の内側にはランドセルの内張を使いました。
上田さん
「注文を受けるときに、傷はいつついたとかも聞きます。傷には6年間のストーリーがあるので、あえて避けることなく使います」
製作開始からおよそ2週間。

記念の品が完成しました。

再び時を刻みはじめた「ランドセル」

この日、受け取りに来た齋藤さん一家に上田さんはサプライズを用意していました。
ボロボロで財布は断念した僚太さんのランドセルからキーケースを作っておいたのです。
齋藤僚太さん
「すぐ自分のだなってわかるくらい傷ついていて、それも思い出なのかなって思います」
母親の亜紀子さん
「手作業の温かさを感じますし、いろんな思い出とともに形を変えてまた常に身につけるものにしていただいて感動しています。ランドセルみたいに毎日使ってほしいです」

保管してあるランドセル

不要品の買い取りなどを行っている名古屋市の「グッドサービス」がことし行った調査では、小学6年生の子どもを持つ親の75%以上、実に4人に3人以上が、卒業後のランドセルの扱いについて、「まだ決まってない」「保管する」と回答したということです。

小学校卒業から10年余り、筆者もランドセルの行方が気になって両親に尋ねたところ、「保管してある」との回答がありました。
このランドセルは、両親が、6年間使い続けてほしいという思いを込めていろいろ調べて購入したものだということです。

今回の取材を通じて、自分のランドセルも加工してもらうのもいいなと思い始めているところです。
甲府放送局記者
清水魁星
2020年入局
ランドセルの一番の思い出は、中で墨汁をこぼして真っ黒になったこと