新型コロナ 全国感染者減少も過小評価の可能性指摘 専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、直近の1週間の全国の感染者数は減少に転じたものの、最多の感染レベルが続き、お盆などによる検査の遅れで感染者数が過小評価されている可能性があると指摘しました。
今後、亡くなる人の数はこれまでの最多を超えてさらに増加することが懸念されるとして、医療体制のひっ迫を避けるための対策を取るよう求めました。

専門家会合は、現在の感染状況について首都圏を中心に減少に転じたものの、一部地域では増加が続き、これまでで最も高いレベルでの感染が継続していると分析したうえで、検査体制のひっ迫や夏休みやお盆などで検査の報告遅れもあり、感染状況が過小評価されている可能性があると指摘しています。

これまでの感染拡大と同じように感染者数の急増から遅れて重症者や亡くなる人の数が増加していて、亡くなる人の数はこれまでの最多を超えてさらに増加することが懸念されるとしています。

そして、医療従事者が感染して欠勤したり、救急搬送が困難なケースが増加したりするなど、医療体制の状況は改善しておらず、コロナだけでなく一般医療を含めた医療提供体制に大きな負荷が生じていて、今後のさらなる深刻化が懸念されるとしています。

専門家会合は、病床や発熱外来など医療体制のひっ迫を避けるための対策が必要だとして国や都道府県に対して、抗原検査キットの供給体制を強化し、医療機関を経ないで在宅療養に入る仕組みを周知することや、無症状で念のために検査をする目的で外来を受診することを控えるよう呼びかけることなどを求めました。

また、オミクロン株に対応するワクチンの接種を10月中旬以降に開始する準備を進めることが必要だとした一方で、「BA.5」が広がっている中でも3回の接種で発症予防効果が高まる可能性が示されたとして、現在の感染状況を踏まえると、できるだけ早い時期に3回目の接種や高齢者の4回目の接種などを促進していくことが必要だとしています。

そして、基本的な感染対策を徹底して感染リスクを伴う接触機会を可能なかぎり減らすよう呼びかけました。

脇田座長「全数把握の2つの役割、どのように継続するかが重要」

厚生労働省の専門家会合のあと開かれた記者会見で、脇田隆字座長は地域によって感染状況に差が出ていることについて「個別の地域の要因は判断が難しいが、感染者数の増加や減少の要因としていちばん大きなものは感染や、ワクチンの接種による免疫の獲得の状況だ。それに加えて、感染レベルが高い大都市に近いかどうかや、観光地があるかといった地理的な状況も影響してくる。また、全国から多くの人が集まるイベントやお祭りがあると、接触が増えることもあり、そうしたことで地域で差が出ていると考えている」と述べました。

また、感染者の全数把握については「ワクチンの接種をどういう年代にどういう時期に進めるかなどの対策を検討していく上で非常に重要ではないかという議論が出た一方で、現在の発生届にもとづく全数把握が医療機関や保健所に非常に大きな負荷になっていることも確かなので、そういった負荷をなるべく減らしていくことが必要だという議論があった」と述べました。

そして「全数把握にはサーベイランスによって流行状況を把握することと、保健所や医療機関が感染した患者さんをどのように管理していくか情報共有するという2つの役割がある。その2つの役割をどのように継続していくかが重要なポイントになる」として厚生労働省と国立感染症研究所が定点サーベイランスなど、新たな仕組みを導入する検討を進めていると述べました。

全国では前週比0.87倍減少に転じる

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、お盆の時期を含む17日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて0.87倍と6月下旬以来、およそ2か月ぶりに減少に転じています。

一方で、感染者数が過去最多レベルの状態は続いています。

首都圏の1都3県では、
▽東京都が0.82倍、
▽神奈川県と埼玉県が0.77倍、
▽千葉県が0.69倍と減少しています。

関西では、
▽大阪府が0.82倍、
▽兵庫県が0.86倍、
▽京都府が0.83倍、
東海でも、
▽愛知県が0.82倍、
▽岐阜県が0.95倍、
▽三重県が0.85倍と減少しています。

人口当たりの感染者数が最も多い沖縄県は0.80倍となっています。

また、
▽徳島県で1.19倍、
▽山形県で1.17倍、
▽高知県で1.16倍、
▽山口県と香川県で1.15倍などと、
東北や中国・四国地方を中心に17の県で前の週より多い状態が続いています。

人口10万当たりの直近1週間の感染者数は、
▽沖縄県が1752.80人と全国で最も多く、
次いで▽宮崎県が1581.47人、
▽鹿児島県が1577.96人、
▽佐賀県が1470.47人、
▽長崎県が1417.57人、
▽福岡県が1349.88人となっているほか
▽大阪府で1305.40人、
▽東京都で1240.23人など
26の都府県で1000人を超えていて、全国でも1036.18人となっています。