【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(8月10日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

G7外相 ザポリージャ原発の安全への懸念で声明

ウクライナ南東部にあるロシア軍が掌握するザポリージャ原子力発電所に砲撃が相次ぎ、原発の安全への懸念が広がっていることを受けて、G7=主要7か国の外相は10日、声明を出しました。

声明では「ウクライナの原子力施設をロシア軍が掌握し、施設の安全に深刻な脅威をもたらし、原発事故のリスクを著しく高めウクライナや周辺国、そして国際社会を危険にさらしていることを深く懸念している」として、ロシアに対して原発をただちにウクライナ側に戻すよう求めました。

また声明では「IAEA=国際原子力機関のスタッフは、ウクライナにあるすべての原子力施設に安全、また妨害を受けずに出入りできなければならない」として、IAEAの専門家チームが現地に入ることが必要だと訴えています。

ロシア軍 ウクライナ東部2町の住宅地攻撃 13人死亡

ウクライナ東部ドニプロペトロウシク州の2つの町が、ロシア軍による夜間の攻撃を受け、これまでに13人の市民が死亡したと10日、地元の州知事がSNSへの投稿で明らかにしました。

それによりますと、ロシア軍が住宅地に80発ものロケット弾を発射し、集合住宅のほか、文化施設や学校などが被害を受けたとしています。

攻撃を受けたのは、ザポリージャ原子力発電所から川を挟んだ対岸の町で、引き続き、激しい攻撃が続いているものとみられます。

南部クリミアの基地爆発 ウクライナ側の関与伝える報道も

ロシアが一方的に併合したウクライナ南部のクリミア半島にあるロシア軍の基地で発生した大規模な爆発について、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは9日、ウクライナ政府高官の話として「ウクライナ政府に忠誠を尽くすパルチザン部隊が関与した」と伝えています。

また、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は9日、爆発の原因は分析中とする一方、「ロシア政府はウクライナから攻撃を受けたと非難する動機がない。ロシアの防空力が機能していないことを実証してしまうからだ」と指摘し、ロシアとして攻撃を受けたとは言わないだろうとの見方を示しています。

米国務省 ウクライナでの地雷や不発弾除去に約120億円相当の支援

アメリカ国務省は9日、ウクライナでの地雷や不発弾の除去のため8900万ドル、日本円にして約120億円相当の支援を行うと発表しました。

除去のための技術指導や装備の提供を行い、ウクライナで約100の専門チームが作業にあたれるようにするということです。

国務省は声明で、ロシアがウクライナの広範囲に地雷や不発弾などの爆発物を残したと非難したうえで「市民の死傷者を出し続け、復興の取り組みや避難した人々の帰還の妨げになっている」と指摘しています。

ロシア軍東部で苦戦 兵力不足か

ロシア国防省は9日も、各地をミサイルで攻撃し、東部ドネツク州や南部のミコライウ州とヘルソン州で指揮所や弾薬庫などを破壊したと発表しました。

戦況を分析するイギリス国防省は9日、ロシア軍が東部ドンバス地域で前進した距離について「過去30日間、最も成功した地域でおよそ10キロ、ほかの地域では3キロしか前進しておらず、計画を大幅に下回っている。前進できるだけの十分な戦闘歩兵が確保できていない」と指摘しました。

また、アメリカ国防総省のカール国防次官は8日の記者会見で、ことし2月に軍事侵攻が始まって以降のロシア側の戦死者と負傷者の数が合わせて7万人から8万人にのぼるという見方を示しました。

カール次官は「侵攻を開始したときの、プーチン大統領の目標を何一つ達成していないことを考えると、注目に値する」と述べ、ロシア側の人的な損害が非常に大きい可能性も出ています。

南部クリミア基地で爆発か

ロシアの国営メディアやロイター通信などは9日、ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部のクリミアで複数の爆発音や大きな煙が上がっている様子を伝え、その後、ロシア国防省はクリミアに駐留するロシア軍の基地で爆発があったと発表しました。

爆発があったのは、クリミア半島の西部にある軍の飛行場で、ロシア国防省は、航空機の弾薬の施設が爆発したと主張する一方、攻撃を受けたのではないとしています。また、地元のロシア側の当局者は、ロシアの国営メディアに対し、この爆発で1人が死亡したと説明しています。

これについて、ウクライナ国防省は9日、フェイスブックに「クリミアの飛行場の火災について、国防省は原因を特定できていない。火災の事実が情報戦に利用される可能性がある」などと投稿しました。

ゼレンスキー大統領「クリミアを諦めない」 爆発には言及せず

ウクライナのゼレンスキー大統領は9日、公開した動画の中で「クリミアはウクライナのもので、われわれは決して諦めない」と述べ、8年前にロシアが一方的に併合したクリミアを取り返す考えを重ねて強調しました。

ゼレンスキー大統領は「ロシアはヨーロッパで最もすばらしい場所の1つ、クリミア半島を、最も危険な場所の1つに変えてしまった」と指摘したうえで「ロシアの占領者がクリミアにいることは、ヨーロッパ全体と世界の安定に対する脅威だ」などと述べ、ロシア側を強く非難しました。

一方、ゼレンスキー大統領は、クリミアに駐留するロシア軍の基地で9日、起きたと伝えられる爆発については、今回の動画で直接、言及しませんでした。

IAEA 原発砲撃に改めて重大な懸念

ウクライナ南東部にあるロシア軍が掌握するザポリージャ原子力発電所に今月5日から砲撃が続いていることを巡り、IAEA=国際原子力機関は、9日、声明を発表し、6日の砲撃の被害についてもウクライナ側から連絡を受けたことを明らかにしました。

IAEAはすでに声明を発表し、砲撃による原発の安全への懸念を表明していて、今回の声明では、ウクライナ側から、6日の砲撃で使用済み核燃料の貯蔵施設がある一帯の建物の壁や屋根などが損傷したといった連絡を受けたとしています。

使用済み核燃料の容器には明らかな被害はないということでIAEAの専門家の評価では、原発の安全が直ちに脅かされる状況ではないと説明しています。

しかし、IAEAは、施設の安全など、原発の安全に不可欠だとしている多くの要件が守られていない状況だと指摘し、グロッシ事務局長が改めて重大な懸念を示して原発への軍事行動をやめるよう求めました。そして、原発の安全確保のためにIAEAの専門家チームがすみやかに現地を訪れることが必要だと訴えました。

ロシア産の原油 欧州3か国への輸送停止

ロシア産の原油をヨーロッパに輸送するためのパイプラインを運営する国営の「トランスネフチ」は9日、ヨーロッパの一部の国に向けた原油の輸送が停止されたと発表しました。

「トランスネフチ」の声明によりますと、輸送が停止されたのは、ヨーロッパのハンガリーとチェコそれにスロバキアの3か国で、いずれも、ウクライナを通過するパイプラインを使ってロシア産の原油を購入していました。

「トランスネフチ」は輸送停止の理由について、ウクライナ領内でパイプラインを運営するウクライナの会社に先月、パイプラインの通過使用料を支払おうとしたものの、欧米の制裁によって送金ができなかったためだと主張しています。そして「ウクライナ側への支払いができなくなったため、今月4日以降、ウクライナ経由の供給は止まった」と説明しています。

「トランスネフチ」は、これとは別に運用している隣国のベラルーシを通過してヨーロッパに輸送するパイプラインについては、通常どおり稼働しているとしています。