【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(8月9日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる9日(日本時間)の動きをお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

親ロシア派勢力 “ロシアへの編入賛否問う住民投票実施へ準備”

ロシアが掌握したとするウクライナ南東部ザポリージャ州の親ロシア派勢力は8日、ロシアへの編入の賛否を問う住民投票の実施に向け準備を開始するとした政令に署名したと発表しました。

これは、親ロシア派勢力の幹部がザポリージャ州の都市メリトポリで行われた集会の中で明らかにしたもので、SNSに投稿された動画には、その場にいた人たちが拍手をしている様子が写っています。

実施日などの詳細については明らかになっていませんが、一部のロシアメディアは、来月にも住民投票が行われると伝えています。

ウクライナでは、南部のヘルソン州でもロシアへの編入の賛否を問う住民投票の動きがあり、ゼレンスキー大統領は7日、住民投票が実施されれば、ロシアとの交渉の道は断たれると述べるなど、強く反発しています。

ロシア編入の住民投票 メリトポリ市長「9割がロシアに反対」

ウクライナ南東部のザポリージャ州で来月ロシアへの編入の賛否を問う住民投票が行われる可能性が出てきたことについて、中心都市メリトポリのフェドロフ市長は9日「ロシアを支持する住民は1割にも満たない。9割はロシアの侵略に反対している」とSNSで述べました。

そのうえで「ロシアは支持を集めようと躍起になっているが、誰も支持しない状況で住民投票ができるはずがない」と非難しました。

英国防省 “ロシア軍前進距離 計画を大幅に下回っている”

ロシア国防省は8日も東部ハルキウ州のほか南部のヘルソン州やミコライウ州をミサイルで攻撃し、ウクライナ軍の兵士を殺害したほか、装甲車などを破壊したと発表しました。
一方、戦況を分析するイギリス国防省は9日、ロシア軍が東部ドンバス地域で前進した距離について「過去30日間、最も成功した地域でおよそ10キロ、ほかの地域では3キロしか前進しておらず、計画を大幅に下回っている。前進できるだけの十分な戦闘歩兵が確保できていない」と指摘しました。

ウクライナから日本に避難した人 7日時点で1701人

出入国在留管理庁によりますと、ウクライナから日本に避難した人は7日時点で1701人となっています。

内訳は、ことし4月に政府専用機で避難してきた人が20人、政府が座席を借り上げた民間の航空機で避難してきた人が合わせて169人、そのほかの手段で避難してきた人が1512人です。

性別は、男性が437人、女性が1264人となっています。

年代別では、18歳未満が371人、18歳以上60歳以下が1108人、61歳以上が222人です。

入国日を月別にみると、3月が351人、4月が471人、5月が332人、6月は282人、7月は224人、8月は7日までに41人となっています。

入国した人のうち、少なくとも57人がすでに日本から出国しているということです。

政府は避難してきた人たちに90日間の短期滞在を認める在留資格を付与し、本人が希望すれば、就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更することができます。
この在留資格に変更すると、住民登録をして国民健康保険に加入したり、銀行口座を開設したりすることができ、7日までに1402人が「特定活動」に資格を変更したということです。

ロシアがウクライナに軍事侵攻を始めて今月で半年になります。
日本での避難生活が長期化する中、ことばや就労、教育などについてニーズに応じた支援が求められています。

ロシア 米との核軍縮条約に基づく査察の一時停止を通告

ロシア政府は、アメリカとの核軍縮条約に基づく関連施設への査察の受け入れを一時的に停止することをアメリカ政府に通告したと発表しました。
アメリカの制裁などが原因だとしていて、ウクライナ情勢をめぐる米ロ間の対立が核軍縮にも影響を及ぼしています。

ロシア外務省は8日、声明を発表し、去年(2021年)延長することで合意したアメリカとの核軍縮条約「新START」に基づく関連施設への査察活動について一時的に査察の受け入れを停止することをアメリカ政府に通告したと発表しました。

この決定について、ロシア外務省は、「アメリカ政府はアメリカ領土での査察を実施する権利をロシアから奪おうとしているため、この手段に訴える必要がある」としていて、アメリカの制裁措置によってロシアの査察官のアメリカへの渡航などが難しくなり、条約に基づくロシア側の査察活動ができなくなっていると主張しています。

そのうえで、「今回の措置は一時的なものだ。ロシアは条約の全条項を順守することを約束している」として、アメリカ側に問題があると主張し、対応を求めました。

ゼレンスキー大統領「ロシアの原子力産業に新たな制裁を」

ウクライナのザポリージャ原子力発電所への砲撃が続く中、ゼレンスキー大統領は8日、動画を公開し、「原子力災害の脅威を生み出していることについて、ロシアの原子力産業全体に対して新たな制裁を科すべきだ」と述べ、ロシアの攻撃だと非難し、国際社会による一層の圧力を訴えました。

またゼレンスキー大統領は、「ウクライナは、ロシアに一時的に掌握されている地域をすべて取り戻さなければならない」と述べ、反転攻勢への強い決意を示しました。

ウクライナ出発の貨物船 レバノンに入港できず

ロシアによる侵攻後、初めてウクライナの港から中東のレバノンに向かっていた穀物を積んだ貨物船について、レバノンにあるウクライナ大使館は、積み荷の買い手が到着の遅延を理由に、受け取りを拒否したため、入港できなくなっていると明らかにしました。

レバノンのウクライナ大使館は8日、ウクライナ南部のオデーサの港を出発し、レバノンの港に向かっていた貨物船について、ツイッターで「レバノン側の積み荷の買い手が到着の遅れを理由に受け取りを拒否している」と明らかにしました。

この貨物船はウクライナからの船舶での穀物輸出の再開を受け、今月1日、トウモロコシを積んで出港し、先週中にもレバノンの港に入る見通しでしたが、レバノンの当局者は8日の時点で、「貨物船から入港を求める連絡を受けておらず、到着の見通しがたっていない」としていました。

ウクライナ大使館によりますと、荷主側はレバノンの国内外で新たな荷受人を探しているということです。

米 ウクライナに最大で10億ドルの追加の軍事支援

アメリカのバイデン政権は、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して最大で10億ドル、日本円にしておよそ1350億円相当の追加の軍事支援を行うと発表しました。

具体的には、高機動ロケット砲システム=ハイマースに使われるロケット弾や、対戦車ミサイル「ジャベリン」1000基などを供与するとしています。

アメリカ国防総省のカール国防次官は8日、記者会見で、ウクライナ東部の戦況について、「ロシア軍は少しずつ前進しているが、それほど大きくなく、大きな犠牲を伴っている。ウクライナ軍のすぐれた働きと彼らが得たすべての支援の成果だ」と述べて、ウクライナへの軍事支援を続ける考えを示しました。

米国防総省 ロシア側の死傷者 7万~8万人

アメリカ国防総省のカール国防次官は8日、記者会見で、ことし2月にウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、ロシア側の戦死者と負傷者は合わせて7万人から8万人にのぼるという見方を示しました。

カール次官は「ロシアが侵攻を開始したときのプーチン大統領の目標を何一つ達成していないことを考えるとこれは注目すべきことだ」と述べました。

世界銀行 ウクライナに45億ドルの追加の資金支援

世界銀行は8日、ウクライナ政府に対して45億ドル、日本円でおよそ6000億円の追加の資金支援を行うと発表しました。

ロシアによる軍事侵攻で甚大な被害を受けているウクライナ政府が行政サービスを維持するための緊急の需要に応えるもので、市民の福祉に欠かせない医療サービスや年金などの支払いができるようにして戦争の影響を和らげるとしています。

世界銀行は、ロシアによる軍事侵攻の直後からウクライナへの資金支援を続けていて、今回の追加の支援はアメリカからの助成金でまかなわれるということです。

世界銀行のマルパス総裁は、「ウクライナは、生活環境や貧困のさらなる悪化を防ぐために医療や教育、社会保障といった政府によるサービスの継続を必要としている」とコメントしています。

両国のIAEA大使 原発への視察や調査 受け入れる姿勢示す

ウクライナのザポリージャ原子力発電所への砲撃について、ウクライナとロシアの双方が相手方による攻撃だと主張する中、両国のIAEA=国際原子力機関の大使は、IAEAなどによる原発への視察や調査を受け入れる姿勢を示しました。

このうち、ウクライナのツィンバリュクIAEA大使は8日、オーストリアのウィーンで会見を開き、ロシア軍がザポリージャ原発にある使用済み核燃料の貯蔵施設のすぐ近くを攻撃したと主張しました。

そのうえで、「IAEAなどが主導する形で、ザポリージャ原発に国際的なチームが派遣されることを期待している」と述べ、IAEAなどによる原発への視察や調査が必要だとの考えを示しました。

また、ロシアのウリヤノフIAEA大使は国営のロシア通信に対し、「ザポリージャ原発へのIAEAの視察を受け入れる用意がある」と述べ、ロシア側としてもIAEAの視察などに協力する姿勢をアピールしました。

“福島第一原発やチョルノービリ原発レベルの大惨事のおそれ”

ウクライナの原子力発電公社、エネルゴアトムのコティン総裁は8日、テレビ局のインタビューで、ザポリージャ原子力発電所について「今後とも砲撃が続いて使用済み核燃料の保管容器が複数、損傷するなどした場合、福島第一原発やチョルノービリ原発レベルの大惨事が起きるおそれがある」と述べ、強い警戒感を示しました。

またコティン総裁は、「発電所を非武装化する必要がある」と述べ、発電所や周辺から軍の部隊を撤退させる必要があると訴えました。

東京電力福島第一原子力発電所とチョルノービリ原子力発電所の事故は、放射性物質の放出量などから、国際的な基準に基づく評価で最も深刻な「レベル7」とされた史上最悪レベルの原発事故で、「レベル7」となった事故は、この2つしかありません。