フランスで記録的な干ばつ 電力供給や農業生産に深刻な影響

ヨーロッパで猛暑が続く中、フランスでは記録的な干ばつで一部の原子力発電所が出力の大幅な低下を余儀なくされるなど電力供給や農業生産に深刻な影響が出る事態となっています。

ヨーロッパの西部や南部では、ことし6月ごろから高温や乾燥した状態が続き、このうちフランスでは、一日を通して高温となる日が数日にわたって続く「熱波」が、相次いで発生しています。

この影響で7月、1か月の全国の降水量の平均値は9.7ミリと、去年の同じ月の90.8ミリの1割余りとなり、7月の降水量としては統計を取り始めてから最も少なくなりました。

国内およそ100の自治体で、飲料用の水が不足していて、政府は「フランス史上、最悪の干ばつだ」として緊急の対策チームを立ち上げました。

パリでも水を再利用しない噴水の運転が止められたほか、市民に対し風呂に湯をためずシャワーを使うなどの節水を呼びかけています。

また、原子炉の冷却に川の水を利用している原子力発電所では発電所から出る温排水で川の水温が上昇していることから環境への影響を抑えるために一部で出力の大幅な低下を余儀なくされるなど電力供給にも影響が出る事態になっています。

さらに、干ばつは小麦や牛乳などの農業生産にも打撃を与えていて政府はことしの小麦の生産量が前の年に比べ7%余り落ち込む見通しを示しています。フランスでは干ばつが来週以降も続くと予想され、さらに影響が広がることが懸念されています。

酪農 水や栄養不足で牛乳量や品質低下

記録的な干ばつは酪農地帯にも深刻な影響を与えています。

フランス南部にある人口300人ほどの村、ルブシェサンニコラです。

6月からの暑さと乾燥で地下水が大きく減りました。住民の飲み水は村がトラックを手配し、1週間に3回、合わせておよそ30万リットルの水をほかの地域から確保し、給水施設に運んでいます。

夫婦で酪農を営むギヨーム・ジュリアンさんと妻のセリーヌさんは、乳牛を80頭飼育していますが、村に1つしかない農業用の貯水槽が利用できなくなり、6月以降毎日、湖からトラクターで水を運んで急場をしのいでいます。

エサにも影響が出ています。

干ばつのため牛のエサとなる牧草が順調に育ちませんでした。穀物価格が高騰していて、新たに飼料を購入することも難しいため冬用の備蓄を切り崩して使っています。

それでも水や栄養が足りないせいか、牛から取れる牛乳の量は2割ほど減っているほか、品質も低下しているということです。

ジュリアンさんは、「とても壊滅的な状況で、干ばつのせいでみんな落胆している。なんとか解決策を見つける必要がある」と窮状を訴えていました。

電力供給に追い打ち

記録的な干ばつは、フランスの電力供給にも大きな打撃を与えています。

各地の河川や貯水池で水の量が大幅に減ったため、水力発電所がタービンを回す水を十分に確保できず、なかには運転を止めるところも出ています。

南部ガロンヌ川の流域では、降水量が最も多いはずの5月からほとんど雨が降らず、13ある水力発電所の出力は大幅に低下し、発電量がおよそ30%減ったところもあります。

さらに、国の電力のおよそ70%をまかなう原子力発電所にも影響が出ています。フランスの原発の多くは川の水を使って原子炉を冷やし、再び川に戻しています。

しかし、強い日ざしに加えて原発から出る温排水で川の水温が上昇していることから、環境への影響を抑えるためにこれまでに少なくとも6つの発電所が出力の大幅な低下を余儀なくされていてこのうちガロンヌ川沿いにある原発では出力が30%以下に落ち込む日もあるということです。

フランスの原発は定期点検に加えて、一部で不具合が見つかったことから、56基のうち30基が運転を停止する異例の事態となっており、記録的な干ばつは厳しい電力供給に追い打ちをかけています。