夏の全国高校野球 愛知 愛工大名電が石川星稜に勝ち2回戦進出

夏の全国高校野球、大会2日目の第2試合は、愛知の愛工大名電高校が石川の星稜高校に14対2で勝ち、2回戦に進みました。

愛工大名電は1回、ノーアウト満塁のチャンスで、4番、山田空暉選手が先制の2点タイムリーヒットを打つなどこの回、一挙5点を奪いました。

続く2回も愛工大名電打線がつながり2点を追加したあと、満塁の場面で7番の美濃十飛選手が走者一掃となるタイムリーツーベースを打ち、2回までに10点を奪いました。

愛工大名電はキャプテンでエースの有馬伽久投手が先発し、8回まで投げ、11本のヒットを打たれましたが、2点に抑えました。

9回は、プロ野球・中日で抑えとして活躍した岩瀬仁紀さんの長男・岩瀬法樹投手が0点に抑え愛工大名電が星稜に14対2で勝って2回戦に進出しました。

一方、星稜は先発したエースのマーガード真偉輝キアン投手が立ち上がりを攻められ、2回途中でマウンドを降りました。

打線は毎回、ランナーを出しましたが、得点に結び付けることができませんでした。

亡きチームメートとともに戦う

愛知の愛工大名電高校の選手たちはこの夏、亡きチームメートとともに戦っています。

3年生の野球部員、瀬戸勝登さん。ポジションは外野手で、チームの盛り上げ役でした。ことし5月の春の東海大会で背番号20でベンチ入りして、最後の夏に向けて調整していました。6月、瀬戸さんは生活していた寮から愛知県春日井市の自宅に戻ったとき突然倒れました。心不全でした。


仲間の死。選手たちは受け入れることができませんでしたが、ある思いが芽生えました。「勝登といっしょに甲子園へ」。同じ外野手の3年生、美濃十飛選手は葬儀のあと、瀬戸さんの父・洋介さんのもとを訪れ、「勝登とまだ一緒に野球をやりたいからグラブを貸してほしい」とお願いしました。ほかの選手たちも帽子のつばに「勝登と共に」と書いて、愛知大会に臨み、甲子園出場を果たしました。

そして、7日の1回戦。一塁側のアルプススタンドには瀬戸さんの家族も応援に駆け付けました。瀬戸さんの写真も飾られました。スタンドで控え部員や保護者は瀬戸さんの「勝登」という名前からとった「勝ち登れ頂点に」ということばが入ったTシャツを着て、応援しました。

美濃選手は7番・ライトで先発出場。瀬戸さんのグラブで守備につきました。バッティングでは1回に2点タイムリーヒット、2回には満塁のチャンスで走者一掃のタイムリーツーベース。4回にもタイムリーヒットを打ち、6打点の大活躍でした。

美濃選手はヒットを打った後、塁上で、空を見上げました。空から見守ってくれている瀬戸さんに「打たせてくれてありがとう」と伝えました。試合後、美濃選手は「瀬戸は『よくやったな』と言ってくれると思います。次の試合も、瀬戸と一緒に戦い抜き、名電らしくのびのびとプレーしたいです」と引き締まった表情で話していました。

瀬戸さんの父・洋介さんは「選手に感謝しかありません。勝登も同じ気持ちだと思います」と甲子園の舞台で息子とともに戦った選手たちを見て、目を細めていました。亡きチームメートとともに頂へ。愛工大名電の夏は続きます。

瀬戸さんの同級生も応援

愛工大名電高校のアルプススタンドでは、瀬戸勝登さんが目指してきた甲子園への思いを胸に同級生たちが応援しました。

このうち、3年生の吉田紗穂さんは、ベンチ入りしている選手たちがメッセージを書き込んだ瀬戸さんのユニフォームや、写真を持って応援していました。また、帽子のツバやシャツの背中には瀬戸さんの名前からとった「勝ち登れ」というメッセージが書かれていました。

吉田さんは、「勝登もずっと勝ち進んで、目標である全国制覇を目指してほしいと思っていると思うので、1戦1戦みんな全員で戦っていきたいと思います」と話していました。

愛工大名電 倉野監督「選手たちの思わぬ力にびっくり」

愛工大名電の倉野光生監督は「非常にバットが振れました。きょうは非常に効率よく点数を取れるバッティングができました」と1回にいきなり5点を先制した打線をほめました。

打線はその後も攻撃を緩めずに4回までに13点を奪い倉野監督は「甲子園というのはなかなか打たせてくれないところだと思っていましたが、よくこの甲子園でこれだけヒットが出るのかと選手たちの思わぬ力にびっくりしました」と笑顔で話しました。

また、足をつるアクシデントもある中、8回まで投げた有馬伽久投手については「星稜さんがなかなか簡単にアウトを取らせてくれないのでどこで有馬を交代させるかまたは最後まで行かせるのかを中盤から考えていました。アクシデントがあっても、本人が『最後までいけます』と言うので、『行けるところまで行け』と言いました。よく投げてくれました」とねぎらっていました。

愛工大名電主将 有馬投手「自分たちの力以上のものを発揮」

8回を投げて2点に抑えた愛工大名電高校のキャプテンでエースの有馬伽久投手は「自分たちの力以上のものを発揮できました。味方が点をとってくれたので気持ちを楽にして投げることができました」と振り返りました。

そのうえで、2回戦に向けては「きょうのような大量得点は難しいと思うので、守備からリズムを作って攻撃につなげていきたいです」と話していました。

愛工大名電 美濃選手「6月に亡くなった同級生 見守ってくれる」

愛工大名電高校の美濃十飛選手は4安打6打点の活躍について「大事な初戦で緊張感はありましたが、ふだん通りの打撃ができてほっとしています」と振り返りました。

また、美濃選手はことし6月に亡くなった同級生で野球部員だった瀬戸勝登さんのグラブで外野の守備につきました。

その理由について「ピンチの時など不安になったときに『一緒に戦うぞ』という気持ちになるからです。自分を見守ってくれていると思います」と話しました。

また、美濃選手は試合中、出塁した時やホームに帰ってきた時には空を見上げたり、空に向かって拳を上げたりして瀬戸さんへの感謝の思いを伝えていました。

美濃選手は「空から見てくれている瀬戸に『打たせてくれてありがとう』という気持ちを伝えたいです」と話していました。

星稜 山下監督「甲子園に戻ってきた」

敗れた星稜高校の山下智将監督は「安打数のわりに得点できませんでした。思っていたのと違う展開になり、私自身も焦ってしまったかもしれません」と試合を振り返りました。

星稜高校は去年夏、複数の部員に新型コロナウイルスへの感染が確認されて準々決勝まで勝ち上がっていた全国高校野球石川大会の出場を辞退していて、山下監督はコロナ禍の中で野球を続けてきた3年生部員について「この2年半、世の中やチームのことで苦しい思いやつらい思いをしてきたと思います。それによく耐えて、甲子園に戻ってくることができました。すごく成長してくれたと思うし、その力を今後の人生に生かしてほしいです」と話していました。

星稜 マーガード投手「力のなさ感じました」

星稜高校で先発したエースのマーガード真偉輝キアン投手は「調子は悪くなかったが、決めにいった球をファウルにされてしまいました。相手バッターのねらっている球もわからず、粘られて甘い球を打たれてしまいました」と9失点で2回途中でマウンドを降りたピッチングを振り返りました。

マーガード投手はことし春のセンバツではベスト8進出を果たしましたが「春の時より独特な雰囲気がありました。ヒット1本、得点1点ごとに球場が沸く中で飲まれていってしまったかなと思います」と春との違いを話しました。

そして「自分の力のなさを感じました。甲子園は楽しい、特別な場所なので、この経験を今後の野球人生に生かしたいです」と話していました。