第7波 いつ終わる 専門家やAI分析は わかってきたこと 8/5

新型コロナウイルスの「第7波」の収束はいつになるのか。

感染者の数は各地で過去最多となっていますが、増加のペースは緩やかになってきています。ピークが近づいているという見方もあります。

専門家に見解を聞きました。

直近の感染状況は

全国の感染状況は、8月3日に感染者数が24万9000人余りと、これまでで最も多くなりました。

1週間平均では4日の時点で1日当たり21万人余りとなっています。

前の週と比べた増加のペースは、
▽7月14日は2.13倍
▽7月21日は1.72倍
▽7月28日は1.67倍
急速な増加が続いていましたが、
▽8月4日まででは1.11倍と下がっています。

「第7波」のピークは 専門家会合でも議論

厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は、7月27日の会合のあとに開かれた記者会見で「ピークはいつごろかという予測についていろいろな見方がある。今後も全国的には増加が続くのではないかという見方もあるし、あるいはピークが近くなっているという予測もあった」と紹介しました。

感染の実効再生産数「1」下回ったか

京都大学の西浦博教授は、現在感染者のほとんどを占めると推定されるオミクロン株の「BA.5」系統については、おそらくピークに達したと見ていると言います。

西浦教授は7月30日までのデータを使い、東京都内の「BA.5」の感染状況について分析した資料を8月3日の専門家会合に提出しました。

ワクチンを接種して免疫を得た人に加えウイルスに感染して免疫を得る人が増えることで、感染拡大のペースがどのように変化するかを分析した結果、1人が何人に感染を広げるかを示す実効再生産数は7月下旬にかけて減少傾向になり、7月30日に「1」を割り込んだと見られるということです。

これは感染者1人から広がる先が「1人未満」となることを意味し、今後、感染者数は減少に向かうと予測しています。

西浦教授は「『BA.5』系統の流行はいったんピークを迎えたと考えられる。しかし、旅行などで人の移動が増えるお盆を控えているため、一過性の増加はありうる。また、高齢者の感染が増えているため、医療は引き続きひっ迫し厳しい状況が続くと思う」として、厳しい医療提供体制は今後も続き、安心できる状態になったわけではないと強調しています。

AI予測は “8月6日” がピーク

名古屋工業大学の平田晃正教授はAI=人工知能を使い、感染者数の推移やワクチンの効果、人流などのデータをもとに今後の感染状況の推移をシミュレーションしています。

AIの予測では東京都内の感染者は8月6日に1週間平均で一日当たりおよそ3万9000人となり、その後は減少に転じるという結果になりました。

ワクチンの接種による免疫に加え、一定の人が感染により免疫を得ることで減少すると考えられるということです。
ただ、一日当たりの感染者数は8月末でも2万6000人前後の水準が続くという計算結果になっているということで、平田教授は「感染者数が高止まりする可能性が高いと思っている。ピークを越えたとしても安心せず感染対策を取って過ごしてほしい」と話しています。

『BA.2.75』の影響 見極めも必要

さらに、インドなどで報告され、ワクチンや感染で得た免疫をかいくぐる“免疫逃避”の性質があると懸念されている、オミクロン株の1種「BA.2.75」が今後の感染状況にどのような影響を及ぼすのか、見極めも必要だと指摘されています。

「BA.2.75」は日本でも検出されていて、専門家会合の脇田座長は8月3日の専門家会合で「人びとの接触や感染予防策がどの程度かや『BA.2.75』の拡大次第で、第7波の減少速度が非常に遅くなる可能性があるという議論があった」と紹介しました。

西浦教授らのグループによりますと、5月から7月のインドのデータをもとに分析すると、「BA.2.75」の実効再生産数は「BA.5」の1.14倍と見られるということです。

西浦教授はこれまでのウイルスと比べた場合の広がりやすさについて「軽微な程度にとどまっている」と述べ、「BA.2.75」が急速に広がる可能性は低いという見方を示しながらも「『BA.2.75』のほうが比較的広がりやすいことは確かなので、時間をかけて置き換わりが進むとみられる。今後の感染状況がどうなるのか考えるとき、置き換わりのスピードがどの程度なのかを調べることが重要だ」と指摘しました。

専門家 “『第7波』乗り切れるか瀬戸際”

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は、8月5日のNHKのインタビューに対し「依然として厳しい状況が続いているが、増加のスピードは減少し、大都市圏など感染拡大のピークに近づきつつある地域もある。このままピークを迎えて減少していくのか高止まりの状態が続くか、1、2週間は推移を見ていく必要がある。『第7波』を強い行動制限をかけずに乗り越えていけるということが少しずつ見えてきている状況だと思う。本当に乗り切ることができるかどうかの瀬戸際に来ている」と述べました。

一方、「ただ、大都市圏では検査が追いつかず、見かけの感染者数が増えない『天井効果』が起きてピークのように見える可能性もあるので注意しないといけない」とも指摘しています。
そして「いまは夏休みでこれからお盆を迎える。人と人とが接触しリスクが高まる機会が増えるときは、感染者数の増加が見られてきた。改めて私たち1人1人が基本的な感染対策をもう一度しっかりと意識して行動することが大事だ。体調が悪い人が無理して旅行に行ってしまうことがないように、感染の兆候がある人は今回は旅行を控えてほしい」と述べました。