中国軍の弾道ミサイル落下 岸防衛相「動向注視 対応に万全を」

4日中国が軍事演習で発射した弾道ミサイルが、日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下したことを受けて、岸防衛大臣は、7日までの演習期間中、警戒監視と情報収集を続け、対応に万全を期していく考えを示しました。

中国軍は4日、台湾の周辺海域に向けて弾道ミサイルを発射し、その一部は日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下したと推定されています。

これについて岸防衛大臣は閣議のあとの記者会見で「防衛省・自衛隊としてはわが国周辺の海域・空域における中国軍の動向について警戒監視、情報収集活動を継続するとともに引き続き状況を注視し、対応に万全を期していきたい」と述べました。

また中国側の意図について、岸大臣は「中国側の意図は断定的に申し上げられないが、いくつも訓練海域を設定した中であの海域に打ち込んでいることを考えあわせれば、意図してあの地域に落下させたということは言える」と述べました。

一方、岸大臣は、中国軍の無人機2機が4日に沖縄本島と宮古島の間の上空を通過したあと中国が台湾周辺に設定している訓練区域などを飛行したことについて、「軍事演習との関連が考えられるところだ。今後も活動を活発化させている中国軍の動向を注視しつつ、万全を期していく」と述べました。

小野寺元防衛相「反撃能力 一刻も早く政府として方針を」

自民党の安全保障調査会の会長を務める小野寺・元防衛大臣は党の会合で「中国は私どもは何もしてないのに、わが国のEEZ=排他的経済水域に弾道ミサイルをついに打ち込むような状況になった。与那国島を含め、国民は非常に不安に思っている。しっかりとした防衛力、特に反撃能力の保持については一刻も早く政府として方針を決め、その整備にあたってほしい」と述べました。

約1時間に9発のミサイル発射 詳細は

防衛省によりますと、中国は4日午後3時ごろからおよそ1時間に9発のミサイルを発射しました。

1発目は台湾に近い福建省から発射。沖縄県与那国島からおよそ80キロの日本のEEZの外側に落下します。
2発目と3発目は内陸部から発射され、台湾南西の海域に。
4発目は浙江省から台湾北部の海域へ。
そして5発目は浙江省から波照間島の南西の、日本のEEZ内側へ落下と推定されています。
さらに福建省から発射された6発目から9発目は、台湾本島の上空を通過してEEZ内へ落下したと推定されています。

9発のうち5発が日本のEEZ内に落下し、最も近いものは波照間島から110キロほどでした。

海上自衛隊元司令官「ミサイルは最新型ではない」

中国が4日、弾道ミサイルを発射したことについて、海上自衛隊の元司令官は、アメリカのペロシ下院議長が台湾を訪問したことへの怒りをアメリカに伝える狙いがあったとする一方、発射した弾道ミサイルは最新型のものではないとして、過度にアメリカを刺激しないよう配慮も見られると指摘しています。

海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは、中国が弾道ミサイルを発射したことについて、「情勢が緊迫してもミサイルを10発近く集中するという対応は、相手に戦争だと誤解されてしまいかねないためやらないのが通常だ。その意味で中国は今回、非常に厳しい手段をとったということで、政府の立場や怒りをアメリカに伝えようとしたし、アメリカも十分理解していると思う」と述べ、ペロシ下院議長が台湾を訪問したことへの怒りをアメリカに伝える狙いがあったと指摘しています。

今回発射したミサイルについては「外見から判断すると『東風15』とみられる。1996年のいわゆる『台湾海峡危機』でも発射したミサイルで、非常に使い込んでいるため着弾地点の精度が分かり、意図しないところには落ちにくい。そういう意味では安全措置を講じながら発射したみられ、最新型のものでもないので、石橋をたたいたとも言える」と述べ、過度にアメリカを刺激しないよう配慮も見られると指摘しています。

また、ミサイルの一部が日本のEEZ=排他的経済水域に落下したとみられることについては、「近年、日本国内で顕著になっている台湾に対するある意味強い肩入れの動きに対して、『火遊びをすると大変なことになるぞ』というメッセージを伝えてきた。ただ、日本に圧力をかけすぎると対中感情が悪化し、逆に日米関係がさらに緊密化することも中国は読んでいるので、局地的に活動を活発化させることはあっても、弾道ミサイルを日本に向けて発射するようなことは考えられない」と話しています。

米軍嘉手納基地 偵察機「コブラボール」きょうも離陸

沖縄にあるアメリカ軍嘉手納基地では弾道ミサイルの情報を収集する機能を備えた偵察機RC135S、通称「コブラボール」が4日に続き5日も午前10時40分すぎに離陸しました。

航空機が発信する情報情報を公開しているホームページ、「フライトレーダー24」などによりますと、台湾の南方を飛行していて、中国の弾道ミサイルの発射の警戒と監視にあたっている可能性もあります。

沖縄 与那国島では衝撃広がる

4日午後、中国が発射した弾道ミサイル6発が沖縄県周辺の訓練海域に落下し、このうち5発が、波照間島の南西の日本のEEZ=排他的経済水域の内側に、1発が与那国島の北北西に落下したと推定されています。

沖縄県与那国島には衝撃が広がりました。
島に住む女性は「怖い、という思いしかないです。すぐに避難できないのでどうしようもないです」と話していました。
また民宿のスタッフの女性は「中国と台湾だけの話かと思っていたら日本にも迫ってきている感じで全然予想してなかったです」と話していました。

沖縄県与那国島の漁業協同組合は5日、臨時の理事会を開きました。

このなかで4日与那国島の南東の海域に落下したミサイルが、島の西側の上空を通過したという防衛省の情報が報告されました。

会議の参加者からは「きのうまでは艦船の訓練かと思っていたがこの海域に着弾させる演習になっている」とか「ミサイルが途中でトラブルを起こしたら飛行中に落ちてくる可能性もあるのではないか」といった不安の声や、「国から情報は来たが漁に出るのか出ないのか判断は現場でしなければならない」といった戸惑いの声が上がっていました。

理事会では漁の自粛期間を今月8日までと決めた上で、国や県に対して必要な対応を取るよう働きかけることを町に要請しました。

与那国町漁業協同組合の嵩西茂則組合長は「状況が分からない中で右往左往していて、今回のような状況になったときの情報共有が今後の課題だと感じた。国と国の難しい問題ということは分かるが、漁協としてはまず安全に操業できる状況を求めていきたい」と話していました。

沖縄 玉城知事 「甚だ遺憾である」強く抗議

沖縄県の玉城知事は、5日那覇市で記者団に対し、人的な被害は確認されていないとした上で「中国が、県民が生活をする島々の周辺で、ミサイルを落下させるという事態が起きたことは、非常に、甚だ遺憾であるということを申し上げなければならない。身の危険を感じて漁業ができないということは、絶対あってはならないことだ」と述べ、強く抗議しました。

その上で「今回の緊張状態からエスカレートさせるということは、絶対にあってはならない。外交はあくまでも冷静に、対話によって信頼関係を構築していくということを、常に双方で確認をしながら、地域の住民に一抹の不安を与えないということを前提として行うべきだ」と述べ冷静な対応を求めました。

また、「訓練は続くということなので、『弾道ミサイルの発射を繰り返すな』と、政府から中国政府にしっかりと申し入れをしていただくように県としても働きかけたいと思う」と述べました。