サル痘 国内感染確認 症状は 感染経路は わかっていること 8/3

欧米を中心に報告が相次ぐ「サル痘」の感染者が、7月25日に日本で初めて確認されました。続いて7月28日にも、2人目の感染者が確認されています。

感染が確認された人は世界で2万5000人を超え、WHO=世界保健機関は7月23日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しています。

症状は?感染力は?ワクチンなどの備えは?Q&Aでまとめました。(2022年8月3日時点)

「サル痘」国内で初確認 状況は?

7月25日、日本国内で「サル痘」の感染者が初めて確認されました。
東京都などによりますと、感染者は都内の30代男性でした。ことし6月下旬にヨーロッパに渡航し、7月中旬に日本に帰国したということで、現地でサル痘の感染者との接触があったということです。

また、28日には都内に滞在している30代の男性がサル痘に感染していることが確認されました。男性は北中米に住んでいて、7月下旬から日本に滞在しているということです。男性は海外に滞在中から症状があり、現地で感染した可能性があるということです。

東京都によりますと、この2人目の男性について、1人が接触者として特定されたということですが、この人に症状はなく「今後感染が拡大していく可能性は低い」としています。

「サル痘」の症状は?

サル痘は、天然痘ウイルスに似た「サル痘ウイルス」に感染することで起きる病気です。

国立感染症研究所やWHOなどによりますと、サル痘のウイルスの潜伏期間は通常、7日から14日間で、潜伏期間の後、発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日から5日間続き、その後、発疹が出るということです。

発疹は、典型的には顔面から始まって体じゅうに広がります。
徐々に膨らんで水ぶくれになり、うみが出て、かさぶたとなり、通常、発症から2~4週間で治癒します。

多くの場合、軽症で自然に回復しますが、肺炎や敗血症などの合併症を引き起こすことがあり、年齢が低いほど重症化する可能性があるとされています。

今回の特徴は?

ただ、今回広がっているサル痘では様相が異なっています。WHOによりますと、今回の感染拡大では、感染が確認された人の多くが男性で、そのほとんどが男性どうしでの性的接触で起きているということです。

アフリカ以外の地域の患者の症状は、発疹が性器や肛門の周辺など一部にとどまっていたり、発熱などの前に発疹が出たりするケースが特徴的だとしています。また、発疹に強い痛みを訴える患者もいます。

感染力は?

すべての人に免疫がなかった場合などに、1人の患者から何人の人に感染するかを示す「基本再生産数」は1以下とされ、2を超えるとされる新型コロナウイルスなどと比べて、それほど感染力が強いわけではありません。

また、オランダなどでの分析に基づくと感染から発症するまでの潜伏期間は7.6日から9.2日。イギリスでの分析によると、感染した人1人が発症し、次に感染した人が発症するまでの発症間隔は平均で9.8日だと推定されているということです。

重症化リスクについては高くないものの、アフリカで5人の死亡が報告されているほか、7月下旬以降、新たにスペインやブラジルなどで死亡した人が報告されています。

感染経路は?誰にリスク?

サル痘は、一般にネズミやリスなど感染した動物にかまれたり、血液や体液、発疹に触れたりすることで感染するとされています。

また、感染した人の発疹や体液、かさぶた、患者が使った寝具や衣類などに接触したり、近い距離で飛まつを浴びたりすることで、誰もが感染する可能性があると指摘されています。
CDCは、感染経路が特定できない、いわゆる「市中感染」とみられる患者や、女性や子どもの患者も確認されているとして、特定のグループの人々の病気としてとらえずに警戒すべきだとしています。

またWHOは、サル痘にかかった人と密接に接触したことのある人は誰もが感染するリスクがあるとして「病気を理由に不当な扱いを受ける人がいてはならない」としています。

ワクチンで防げるの?

サル痘に対しては、かつて接種が行われた天然痘のワクチンが高い効果があり、WHOなどによりますとサル痘の発症を防ぐ効果は85%に達するということです。

ウイルスへの感染後、4日以内の接種で発症を予防する効果が、14日以内の接種で重症化を予防する効果があるとされています。

これまでの接種や研究のなかでは、副反応としてまれにけいれんを起こすことがありますが、多くは軽症だとされていて、WHOは感染したおそれがある人や、治療に当たる医療従事者などへの使用を推奨しています。

日本に天然痘のワクチンはあるの?

天然痘はワクチン接種が積極的に行われた結果、1980年に地球上から根絶されました。

日本国内で最後に天然痘ワクチンの接種が行われたのは1976年で、そのときに子どもだった今の40代後半以上の世代は、接種を受けていればサル痘に対する免疫がある可能性があります。

厚生労働省は8月2日、熊本県のワクチンメーカー、KMバイオロジクスの天然痘のワクチンについて、サル痘に対する予防としても使用できるよう承認しました。
このワクチンはテロ対策の一環として国家備蓄されていて、厚生労働省は東京の国立国際医療研究センター病院で、濃厚接触した患者の家族などを対象に接種できる態勢を整えています。

病院では、入院患者を担当する医師や看護師など50人に接種を済ませていて、接種の対象を保健所や地方衛生研究所の職員などにも拡大することを検討しています。

治療薬は?どこで受けられる?

治療薬についても、国内では臨床研究での投与が検討されています。用いられるのは、アメリカの製薬会社が天然痘の治療薬として開発した「テコビリマット」という飲み薬で、ヨーロッパではサル痘の抗ウイルス薬として承認されています。

「特定臨床研究」として患者に投与できるようになっているのは、現時点で1.東京の国立国際医療研究センターと2.大阪のりんくう総合医療センター、3.愛知の藤田医科大学病院、それに4.沖縄の琉球大学病院の4か所だということです。

アメリカでは一部の患者に対し「テコビリマット」の投与が始まっています。ただ、WHOなどによりますと、薬の流通量などにかぎりがあり、多くの場合は対症療法で対応しているということです。

なぜ“サル痘”というの?

サル痘は、1958年、ポリオワクチンを製造するために世界各国から霊長類が集められた施設にいたカニクイザルで最初に発見されたことから、名付けられました。

しかし、通常の状態でこのウイルスを持っている自然宿主は、サルではなく、げっ歯類だと考えられています。WHOは「サル痘」という名称について、変更を検討しているということです。

人への感染は、1970年に現在のコンゴ民主共和国で最初に確認され、アフリカでは現在も感染が頻繁に起きています。

世界の感染状況は?WHOの対応は?

ことし5月以降、サル痘の感染が欧米を中心に拡大しています。

CDC=アメリカ疾病対策センターのまとめでは、感染が確認されているのは83の国と地域で2万5000人以上に上っています。

WHOのテドロス事務局長は、2022年7月23日、今回のサル痘感染の広がりが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたると宣言しました。
「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」は、「国際保健規則」に定められた手続きです。

「他の国々に公衆衛生上の危険をもたらすと認められ、緊急に国際的な調整が必要な事態が発生したとき」に出されます。

英語で「Public Health Emergency of International Concern」というもので、頭文字をとってPHEIC、「フェイク」または「フィーク」と呼ばれています。

現在、新型コロナウイルス、ポリオの感染拡大にもPHEICが出されていて、サル痘で3つとなります。

感染者最多のアメリカの対策は?

アメリカは最も多く、CDCによりますと、8月2日現在、6300人以上の感染が確認されています。

最も多くの感染者が確認されているニューヨーク州は、7月29日、感染拡大を止めるための取り組みをさらに強化する必要があるとして、知事が非常事態を宣言しました。「医療従事者がさらに多くの人にワクチン接種を行うための対応をとれるようにする」としています。
こうした状況を受けて、アメリカ政府はワクチン接種の拡大に力を入れています。7月29日までにおよそ34万回分のワクチンが各州に供給され、接種が進められています。ワクチンを接種できるのは感染リスクの高い人に限られますが、接種を希望する人が供給を上回ったため、さらに、およそ79万回分のワクチンを確保して各州への供給を進めています。

さらに検査態勢の強化も進められていて、当初は1週間に6000件だった検査数は、いまは1週間に8万件にまで拡大されました。

日本国内の態勢は?

サル痘は感染症法上、狂犬病などと同じ「4類感染症」に指定され、診断した医師は患者の発生を保健所に届ける必要があります。

サル痘は、現在、欧米だけでなく、日本に近い、韓国やシンガポール、タイ、台湾などアジア地域でも感染者が確認されています。

サル痘のウイルスは、水疱に含まれている液体などから新型コロナウイルスと同じようにPCR検査で調べることができます。
厚生労働省は国立感染症研究所のほか、すべての都道府県の地方衛生研究所で実施できる態勢を整備し、自治体に対して感染が疑われる患者がいれば速やかに報告するよう求めています。

そして、感染が確認された場合は、全国に58か所ある感染症の指定医療機関などで優先的に受け入れ、患者の家族など感染したリスクが高い人がいれば、毎日、保健所を通じて健康状態の確認を行うことも求めています。

専門家「日本で市中感染は想定しづらい」

元国立感染症研究所の獣医科学部長で「サル痘」を研究してきた岡山理科大学の森川茂教授に、感染状況や対策について話を聞きました。

≪以下、森川教授の話です≫

Q1.世界の感染拡大の状況について、どう見ますか?

A.アメリカのように急速に患者が増えて、一部で非常事態を宣言しているところもあれば、落ち着いてきているところもあります。男性どうしの性的な接触を通じて感染が広がっている傾向は、今のところは変わっていません。

政府や関係当局がいろいろな方法で国民に情報提供することで行動を控える人が増えてくると、増加が抑えられるかもしれません。感染拡大のペースは、そろそろピークを迎える可能性もありますが、各国がどういう対策をとっていくかにもよるかと思います。

Q2.日本での市中感染のおそれは?

A.感染した人に接触した人が1人いたということで、その方が潜伏期間となる21日間の間に発症しなければ、恐らくそこで収束します。市中感染が起きることは想定しづらく、今のところ、封じ込めはできていると思います。
ただ、入出国を禁じているわけではないので、感染した人はこれからも入ってくる可能性があります。海外からの人の出入りが多くなれば、それに応じて患者さんも増えることは考えられます。

Q3.重症化のリスクはどうですか?

A.ブラジルの死亡した人はリンパ腫を患っている40代で、免疫の状態はよくなかったと報告されています。感染すると重症化しやすいグループに属する人であったということになります。スペインで亡くなった2人の患者さんについては、あまり情報が公開されておらず、どういう形でどういう症状で亡くなったかというのは分かっていません。

Q4.天然痘のワクチンはなぜサル痘にも効果がある?

A.天然痘ウイルスの仲間「オルソポックスウイルス属」のウイルスは、構成するタンパク質が非常によく似ていて、あるオルソポックスウイルスの仲間に感染すると、別のオルソポックスウイルスに対しても非常に強い免疫ができることが知られています。

このため天然痘ワクチンは、オルソポックスウイルスの一種のサル痘に効くと考えられます。実際に、今回の承認された日本の会社の天然痘ワクチンと、デンマークの会社の天然痘のワクチンについては、動物実験で発症や死亡を抑える効果が確認されていて、非常に有効だということが明らかになっています。

Q5.サル痘ウイルスにどのように接触する感染する?

A.人の手には目に見えない傷がいっぱいあって、ウイルスはそこから入り込んで感染します。サル痘のウイルスは皮膚などの上皮細胞でよく増えるので、ほんの少しでも傷があると、そこから上皮細胞にくっついて感染します。

また、血液中には単球という細胞がありますが、感染したその細胞がリンパ節に移ってリンパ節が腫れたり、扁桃が腫れたりして、発熱するのです。

Q6.患者の飛まつを吸い込んで感染するリスクはある?

A.患者の唾液からウイルスが検出されるケースもありますが、検出されない患者も結構います。そういう意味では、飛まつ感染のリスクはゼロではありませんが、今のところ、あまりリスクは高くないと考えられます。

一方で、病変した皮膚にはウイルスがたくさんいますので、そこに直接触れるといちばん感染しやすい。今のところ、皮膚の接触がメインの感染ルートだろうと考えられています。

Q7.感染しても症状が出ないケースはあるのでしょうか?

A.サル痘がたびたび流行しているアフリカでは、症状が出た記憶がないのに、抗体を持っている人がいたと指摘されていて、感染しても症状が出ない場合があるかもしれません。

今回の流行では、これまでアフリカで起きた感染拡大と、感染のパターンや経路が違うので、症状の出方も違うようです。無症状感染を指摘する人もいますが、現状ではよくわかっていません。

Q8.感染を防ぐために気をつけるべきことは?

A.新型コロナウイルスより、はるかに感染はしにくいけれども、同じような対策が有効だとまず、御理解いただきたいと思います。そのうえで、WHOは、患者さんや感染したと疑われる人と非常に近い距離で接する場合は、マスクを着用すべきだとしています。

また、手洗いや手の消毒を行ってもらうほか、患者に触れる場合は手袋をすることを推奨しています。
あとは、男性どうしの性的な接触でしかうつらない病気だとSNSなどでよく言われているそうですが、そんなことはありません。女性の患者さんもいますし、医療スタッフで感染してしまったケースもある。サル痘ウイルスに接触すれば誰でも感染しうることは強調しておきたいと思います。
(科学文化部・安土直輝、アメリカ総局・田辺幹夫)