どうなる原油価格?増産か 現状維持か?専門家の見方は

サウジアラビアが主導するOPEC=石油輸出国機構と、ロシアなどの主な産油国が、原油の生産量を協議する会合を3日に開きます。

アメリカや中国の景気減速懸念で原油価格は一時よりは値下がり傾向にあるものの、ロシアによるウクライナ侵攻の状況次第でいつ高騰するか分かりません。

果たして産油国は増産に踏み切るのか、それとも現状を維持するのか。専門家に見立てを聞きます。

(ドバイ支局・山尾和宏記者、ロンドン支局・松崎浩子記者)

9月以降の生産量が焦点

OPECとロシアなど非加盟の産油国で作るOPECプラスは3日、9月以降の原油の生産量を協議します。

OPECプラスは原油の増産幅について月ごとにおよそ日量40万バレルとしていましたが、6月30日の会合で9月に予定していた増産分を前倒しして、7月と8月は増産幅を日量64万8000バレルと拡大しました。

一方、9月以降の生産量については方針が示されておらず、今回、大きな焦点となります。

欧米は増産迫るも…

ロシアからの石油の禁輸措置を決めた欧米は、産油国サウジアラビアを中心に、さらなる増産を求めています。

特にアメリカのバイデン大統領はガソリン価格の高止まりが続くなか、先月(7月)、サウジアラビアを訪問し、イラクやUAE=アラブ首長国連邦など、中東の主な産油国に原油の増産を求めました。

ロシアと緊密なサウジ

一方、サウジアラビアとロシアはOPECプラスを通じて緊密な関係を維持しているといわれています。

消費国は生産量増加望む

主な石油消費国でつくるIEA=国際エネルギー機関のトップ、ファティ・ビロル事務局長は今回のOPECプラスの会合について、次のように話しています。
「サウジアラビアやUAEのような国は、世界の石油市場に積極的に貢献することができると考えている。また、アフリカのいくつかの国、例えばナイジェリアやアンゴラは、増産が計画どおり進んでいないが適切な管理を行えば、生産量を増やすことが可能だ。強い潜在力を持つこれらの国々が生産量を増加させることを望んでいる」

そのうえでビロル事務局長は「今回の会合で、責任ある生産者として、世界の不況を避けるために『追加の増産に踏み切る』と言うだろう」と予測しました。

産油国は慎重との見方

一方、長年OPECを取材し、中東・産油国の内情に詳しいUAE=アラブ首長国連邦在住のアメナ・バクル記者は、産油国は大幅な増産に慎重な立場を崩していないと見ています。
「OPECプラスは、一部の国が割り当てられた生産量を達成できていないことを認識している。それに、増産できる量が限られてきているのもわかっている。こうした場合、市場への影響を考えて限界まで生産するとは考えにくく、慎重になると思われる」

需要予測も難しい

また、バクル氏は「来年の原油需要は予測が難しい部分もあり、少しでも長く状況を見極めたいという考えもあると思う」と話しています。

サウジ=ロシア深い関係

さらにOPECプラスを主導するサウジアラビアとロシアとの関係について、バクル氏は次のように話しました。
「サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相とロシアのノバク副首相は個人的にも深い関係を築いていて、アメリカが増産を求めたとしてもサウジアラビアが、ロシアとの強固な関係を犠牲にするとは思えない」

わずかな増産はありうるか

一方で「原油価格を少しでも高値で維持したいロシアにとってはわずかな増産であれば、それほど問題だと思わないだろう。わずかな増産であれば、アメリカの要望に応える余地はある」と述べ、サウジアラビアがアメリカに一定の配慮を示す可能性は残っているという見方を示しました。

OPECプラスの会合の結果は日本時間3日夜にも発表される予定です。