福島第一原発の処理水 海洋放出施設の建設了解 福島県など

東京電力福島第一原子力発電所にたまり続ける、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を海に放出する東京電力の計画をめぐって、福島県と地元の大熊町、双葉町は2日、東京電力の小早川社長に対し、放出に使われる施設の建設を了解することを伝えました。

2日夕方、福島県の内堀知事と大熊町の吉田淳町長、それに双葉町の伊澤史朗町長は県庁で東京電力の小早川智明社長と面会しました。

そして、処理水に含まれる放射性物質の測定結果をわかりやすく公表することや、処理水が増える原因となる新たな汚染水の発生を抑える取り組みを進めることなどの要望を付けたうえで、放出に使われる海底トンネルなどの建設を了解するとした文書を手渡しました。

文書を受け取った小早川社長は「政府の基本方針を踏まえて安全を確保した設計や運用、それに放射性物質のモニタリング強化などをしっかりと進める」と述べました。

これに対して内堀知事は「処理水の取り扱いについては、さまざまな意見があり、国民の理解が十分に得られているとはいえない状況だ。関係者に丁寧かつ十分な説明を行い、その思いを真摯(しんし)に受け止め、対話を重ねてほしい」と応じました。

東京電力は去年12月、安全確保のための協定に基づき、3者に対して放出施設の建設について事前の了解を求めていました。

先月には、原子力規制委員会が東京電力の計画を認可していて、地元の了解も得られたことで、東京電力は今後、来年春ごろの完成に向けて本格的な工事に着手することになります。

ただ、処理水の放出をめぐっては漁業者などを中心に風評被害を懸念する声が根強く、政府と東京電力が実効性のある対策を示し、関係者の理解を得られるかが焦点です。

海洋放出めぐる経緯は

処理水は、福島第一原発で発生するいわゆる汚染水から、大半の放射性物質を取り除いた後に残る水です。

汚染水は、事故で溶け落ちた核燃料を冷やすために水を入れたり、建屋に流入する地下水などが流れ込んだりすることで、一日130トンのペースで増えていて、専用の浄化設備にかけられ処理水になりますが、放射性物質のトリチウムは除去できずに残ります。

現在、敷地内にある1000基余りの大型タンクで保管していますが、その量は、先月28日時点で、保管できる容量の96%にあたるおよそ130万トンに達していて東京電力は、来年の夏から秋ごろにはタンクが満杯になる見通しを示しています。

敷地内には空きスペースもありますが、政府や東京電力は、今後、溶け落ちた核燃料や使用済み燃料の一時保管施設などを建設する必要があるためタンクを増やし続けることはできないとしていて、政府は去年4月基準を下回る濃度に薄めるなどして来年春ごろから海に放出する方針を決めました。

政府や東京電力は、放出の前後で海水のモニタリングを強化し、環境に与える影響を確認しながら少量の放出から始めるとしていて、モニタリングで異常な値が出た場合などには、放出を停止するとしています。

「汚染水ゼロ」目指すも達成されず

福島県などが事前了解に合わせて汚染水の発生を抑えるよう求めた背景には、処理水を海に放出したとしても、発生量を大幅に抑制しなければ、敷地内に1000基余りあるタンクの数を大きく減らせないという事情があります。

東京電力は、1回の放出でタンク10基分に当たるおよそ1万トンの処理水を海に流す計画ですが、放射性物質の濃度測定に最長で2か月かかるとしています。

仮に、1日150トンのペースで汚染水が発生した場合、2か月で9000トンの処理水が追加でたまることになり、差し引くと、2か月で減らせるのはタンク1基分に当たる1000トンにとどまり、年間でもタンク6基分しか減らない計算になります。

これについて原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「東京電力は原子炉建屋への地下水や雨水の流入量を減らす努力をするべきだし、放射性物質の分析を効率化して期間を短縮することは放出を適切に進めるうえで重要だ」と指摘しています。

なぜ汚染水が発生し続けるのか。

原発事故の起きた2011年から国と東京電力が示してきた中長期的な廃炉の工程表では、当初、溶け落ちた核燃料がある建屋に地下水や雨水が流入するのを止める対策を「2020年までに完了する」と明記し、2015年の改訂では「汚染水の増加量をほぼゼロに」する目標も掲げていました。

達成に向けて、建屋の周囲の地盤を凍らせて地下水の流入を抑える氷の壁「凍土壁」を建設したり、周辺の地下水を流入する前にくみ上げたりする対策が取られた結果、2014年には1日およそ540トンあった汚染水の発生量は、現在は3分の1以下のおよそ130トンまで減りました。

しかし、建屋が事故によって大きく壊れているうえ、現場の放射線量が高く内部の調査が容易には進まないため、壁を通る配管の周囲などの水が出入りする場所を塞ぐ対策は計画どおりには進んできませんでした。

その結果、2017年に改訂された工程表からは「汚染水ゼロ」の目標はなくなり、処理水も増加し続けて、タンクが敷地をひっ迫させる事態になったのです。

この経緯について、廃炉の責任者を務める、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は先月の会見で「はじめは水を止められれば汚染水の発生も止められるというのがあったがのちに調べていく中でなかなかそれは難しいとわかってきた状況がある。われわれとして反省すべき所は多々あり、結果として福島県民をはじめとする方々にご心配をおかけしているのは間違いなく、本当におわびするしかない」と述べていました。

人や環境への影響は

処理水に含まれるトリチウムという放射性物質は、日本語では「三重水素」と呼ばれる水素の仲間で、水から分離して取り除くのが難しいのが特徴です。

宇宙から飛んでくる宇宙線などによって自然界でも生成されるため、雨水や水道水にも含まれるほか、通常の原子力施設でも発生し、日本を含む世界で各国の基準に基づいて、薄めて海や大気などに放出されています。

現在、処理水の一部にはトリチウム以外の放射性物質の濃度が基準を超えているものもありますが、東京電力は、改めて専用の浄化設備に通し、基準以下になるまで濃度を下げる計画です。

そのうえで海水を混ぜ、トリチウムの濃度を国の基準の40分の1にあたる1500ベクレルを下回る濃度まで薄めて海に放出することにしています。

処理水を海に放出した場合の人や環境への被ばく影響について東京電力は、基準より大幅に薄めることなどから国際的なガイドラインに沿って評価してもいずれも十分に小さいと説明し、原子力規制委員会もこの評価を妥当だとしています。

原釜機船底曳網船主会 高橋会長「反対の意志は変えられない」

放射性物質を含む処理水を海に放出する東京電力の計画をめぐり、福島県などが放出に使う海底トンネルなどの建設を了解したことについて、原釜機船底曳網船主会の高橋通会長は「知事が了解したとしても、反対の意志は変えられない」と強い拒否感を示しました。

そのうえで、「今回は施設の建設工事に対する了解と言うものの、どこから聞いても『放出する』ということと同じようなものだ。トンネルを掘るのかどうかわからないが、われわれには詳しい話はしてこない。処理水の安全性が誰にもわからないため、納得できる説明をしてほしい。みな風評被害を心配しており、なんとか復興の兆しが見えてきたタイミングでこうなってしまい残念だ」と話していました。