国内初のコロナ飲み薬 承認判断行わず継続審議に 厚労省審議会

国内の製薬会社が開発した初めての新型コロナウイルスの飲み薬について、20日夜、厚生労働省の審議会が開かれ「有効性が推定されるという判断はできない」などとして、現時点で承認の判断を行わず、継続審議とすることを決めました。

継続審議となったのは大阪に本社がある塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」です。

ことし5月に創設された緊急承認の制度を使って申請が行われ、厚生労働省の審議会は20日夜、有効性や安全性について審査しました。

委員からは「ウイルス量を減少させ、重症化予防の効果は推定できる」という意見が出た一方で「胎児に影響が出るおそれがあり妊娠の可能性のある女性や慢性疾患のある高齢者は服用できない」といった意見や「オミクロン株の症状に本当に効果があるのか」などと効果を疑問視する指摘が相次ぎました。

この結果、「有効性が推定されるという判断はできない」などとして、現時点で承認するかどうか判断せず、継続審議とすることが決まりました。

新型コロナの飲み薬は海外の2つの薬がすでに使用されていますが、この薬が承認されれば国内の製薬会社が開発した薬としては初めてとなります。

会社によりますとこの薬は軽症の段階で服用でき、偽の薬を服用したグループと比較する治験を行った結果、ウイルスが検出された人の割合が90%減少したということです。

この飲み薬はことし11月以降に示される新たな治験の結果などを踏まえて改めて審査が行われる見通しで、承認の判断は次回以降の審議会に持ち越されることになりました。

新型コロナウイルスの薬「ゾコーバ」とは

「塩野義製薬」の新型コロナウイルスの薬「ゾコーバ」は、国内の製薬会社が開発した軽症の段階で使える初めての飲み薬です。

新型コロナウイルスは感染すると細胞内に侵入し、ウイルスそのもののRNAをコピーして増えていきますが、新たな薬ではコピーの準備段階で働く酵素を機能しなくすることでウイルスの増殖を抑えます。

アメリカの製薬大手、ファイザーが開発した飲み薬「パキロビッドパック」と同様の仕組みで、塩野義製薬はことし2月、この薬の承認を厚生労働省に申請しました。

ことし4月に感染症の国際学会で発表された治験の結果によりますと、オミクロン株の感染が拡大したことし1月から2月までに、12歳から70歳未満の軽症から中等症の新型コロナ患者428人を対象に調べたところ、薬の投与を1日1回、3回受けたあとでは、せきや喉の痛み鼻水・鼻づまり息切れ、熱っぽさがあることの5つの症状が、偽の薬を服用したグループと比べ改善したとしています。

一方で、当初の評価項目としていた下痢や吐き気などを加えた12の症状を合わせて比較すると、偽の薬グループと比べて明確な差は出なかったとしています。

感染性のあるウイルスが検出された人の割合は、偽の薬を服用したグループと比べて90%減少し、ウイルスが陰性になるまでの時間は1日から2日、短くなったということです。
塩野義製薬によりますと、安全性について重大な有害事象はなかったとしていて、最終段階の治験も並行して進めているということです。

また、今月14日には、実験ではオミクロン株の一種でより感染力が強いとされる「BA.4」や「BA.5」に対しても、「高い抗ウイルス活性を有することを確認した」としています。