中国 4-6月期GDP +0.4% 2020年の武漢封鎖以来の低い水準

中国のことし4月から先月までのGDP=国内総生産の伸び率は、新型コロナ対策として上海で厳しい外出制限がとられた影響などを受けて去年の同じ時期と比べてプラス0.4%でした。感染拡大を受けて武漢で都市封鎖が行われた、おととし1月から3月以来の低い水準で経済成長が大幅に減速しました。

中国の国家統計局が15日発表したことし4月から先月までのGDPの伸び率は、物価の変動を除いた実質で、去年の同じ時期と比べてプラス0.4%でした。

この伸び率は新型コロナの感染拡大を受けて、武漢で都市封鎖が行われたおととし1月から3月以来の低さで、四半期ごとの統計が公表されている1992年以降で2番目に低い結果となりました。

前の3か月のGDPと比べても2.6%低下し、経済成長が大幅に減速しました。

その要因としては感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策のもとで最大の経済都市上海で厳しい外出制限がとられたことがあげられます。

外出制限は2か月余りにわたって続き、工場の操業停止が相次ぎ物流も混乱しました。

また、飲食店の営業が規制されるなど、各地で感染対策が強化されたことで個人消費が冷え込んだほか、不動産業の市況も悪化しました。

先月上海での外出制限は解除され、生産や輸出は回復傾向にあるものの一部の都市では再び感染が広がり始めており、今後の経済動向を懸念する声もあがっています。

中国国家統計局 報道官「各種政策の効果で景気回復は加速」

これについて、中国国家統計局の付凌暉報道官は会見で「国内で感染拡大が多発したことなど、予想を超える突発的な要素がもたらした深刻な打撃で経済に対する下押しの圧力が明らかに増大した」と述べました。

今後の見通しについては、「一部の地区は感染拡大で一時的に困難に直面したが各種の経済政策の効果で景気回復は加速している」と強調しました。

そのうえで新型コロナの感染対策について「感染の抑え込みと経済社会の発展のバランスを図っていく」と述べて経済活動の活性化と両立を図る考えを示しました。

「ゼロコロナ政策」個人消費にも暗い影

北京中心部に古くからある地区の伝統的な住宅を改修した宿泊施設では、4月から5月にかけて2か月間、宿泊客がゼロになりました。

この施設は出張や留学などで長期で滞在する人を主な顧客層としていますが新型コロナの感染が拡大し、当局が不要不急の場合は北京を訪れないよう移動を規制したため、打撃を受けました。その影響は今も続いています。

例年であれば宿泊客のピークを迎える夏になってもことしはいまだに予約が入っていないということです。

北京では感染拡大はいったん収まってはいますが、いつまた感染が広がって対策が強化されるか不透明な中で客足は戻らず、家賃や人件費などで月々200万円近くの維持費がかかるため、このままでは経営が成り立たなくなるのではないかとの危機感を強めています。

経営者の董雪さんは「毎日売り上げがなくお金が出ていくだけなので経営は厳しさを増していて、新型コロナが続くうちは今後の見通しが立たない状況です」と話していました。

上海の外出制限 他地域の製造業にも影響広がる

上海で2か月余り続いた外出制限の影響は、ほかの地域の製造業にも広がり先行きの不透明感も広がっています。

製造業が集積する南部の広東省広州にある日系の部品メーカーです。

自動車のエンジンに使われるバネなどを生産していますが、直接の取引先が部品などを仕入れているメーカーの多くが上海地区にあり、外出制限の影響を受けて操業を停止したため、このメーカーも生産を大幅に減らさざるを得ませんでした。

その結果、売り上げは当初、見込んでいたより4月は43%減少、5月は65%減少し、経営の痛手になりました。

外出制限が解除された6月以降も生産は完全には戻っていない上、会社はコストの増加にも頭を悩ませています。

このメーカーでは、原材料の輸入に主に海運を利用していますが、新型コロナからの世界的な生産の回復で物流需要が急増したため予定通りに届かないことがあるということです。

上海の外出制限が解除されたことで一部の取引先が生産を急速に回復させていることから、製品の納期に間に合わせるため原材料の輸入を割高な空輸に切り替えるケースがありコスト高につながっています。

さらに、ウクライナ情勢の影響で鉄などの原材料の価格が高騰しているもあってコストは膨らむ一方です。

このメーカーでは去年、中国で進む自動車の電動化に対応しようと、数十億円をかけて工場を新設し、モーターの中核となる部品の量産を始めました。

しかし、厳しい感染対策や、自動車業界で続く世界的な半導体不足の影響などで先行きの不透明感が強く、計画していた5つの生産ラインのうち設置は1つにとどまっていて、追加の設備投資にも慎重になっています。

「広州日弘機電」の藤野修社長は「上海のロックダウンで顧客の売り上げが落ちてしまい、非常に苦労している。モーターの部品の事業は大きな投資が必要となるが、将来的には有益なので、今は我慢のしどころだと思う」と話していました。

感染再拡大か 先行きの不透明感が強まる

先月1日に外出制限が解除された上海では経済の正常化が進んでいます。

しかし、今月に入って無許可で営業していたカラオケ店でクラスターが発生するなど、このところ感染者数が1日におよそ50人に上る日が続いています。

「ゼロコロナ」政策による厳しい外出制限を経験した市民の間ではまた外出制限がかけられるのではないかとの不安も残っていて「以前の日常に戻った気もするがまだ安心ができない」といった声や「お金があったとしても消費しようと思えない。気持ちに余裕がない」といった声が聞かれました。

中国国内では、14日の感染者数が400人以上と上海以外でも感染が広がり始めていることから先行きの不透明感が強まっています。

中央銀行である中国人民銀行がことし4月から先月にかけて行ったアンケート調査では、お金の使い方として58.3%の人が「貯蓄を増やす」と回答し、統計が確認できる2013年以降で最も高い水準となりました。

消費者の節約志向が強まっていることがうかがえ、今後の景気回復が遅れることも懸念されています。