2025年の陸上世界選手権は東京で開催

3年後の2025年に行われる陸上の世界選手権について、国際競技団体の世界陸上競技連盟は東京で開催することを決めました。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪に続いて3回目です。

これはアメリカのオレゴン州で14日に開かれた世界陸連の理事会で決まりました。

日本陸上競技連盟は2025年の世界選手権を招致しようと東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとして使われた国立競技場での開催を提案し、去年立候補していました。

ことし5月には世界陸連の評価委員会が視察に訪れ、スポーツ庁の室伏長官や東京都の小池知事などがアピールしていて、オリンピックのレガシーの一環として位置づけていました。

2025年の世界選手権の会場は国立競技場となり、競技日程などの詳細はこれから調整されます。

日本の陸上界は男子100メートルで9秒台の記録を持つサニブラウンアブデル・ハキーム選手のほか、いずれも東京オリンピックで入賞した男子3000メートル障害の三浦龍司選手や女子中長距離の田中希実選手と廣中璃梨佳選手など20代前半の選手がけん引していて、3年後の世界選手権でも活躍が期待されます。

陸上の世界選手権が日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪に続いて3回目となります。

陸連 尾縣会長「誇りに思う」

日本陸上競技連盟の尾縣貢会長は「世界陸連が日本に信頼と信用を示し、2025年の世界選手権を開催できることを大変誇りに思う。国立競技場が満員になり、アスリートやすべての関係者にとって忘れることができない体験となることを約束する」とコメントを発表しました。

スポーツ庁 室伏長官「大会成功に向け力になっていきたい」

男子ハンマー投げで金メダルを獲得した経験のあるスポーツ庁の室伏長官は「去年の東京オリンピック・パラリンピックは無観客だったが、子どもたちを含め多くの人が国立競技場で観戦を楽しむ姿を見られることに今からわくわくしている。大会の成功に向けて力になっていきたい」と述べました。

選手が練習や調整などを行うサブトラックが会場の国立競技場から離れた場所に設置される見通しについては「ゴルフカートや電気自動車で移動する大会もあったので、やりようはいろいろある。選手に負担がない形でいかにできるか相談しながら決めていくことになる」との認識を示しました。

また開催時期や暑さ対策について「多くの人に見てほしい場合は学校が休みの時がいいし、暑さを考えると9月がいいという議論になる。東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策の知見もあるので、観客も安全に参加できるようにしていく必要がある」と述べました。

そのうえで室伏長官自身も高校生の時、1991年に東京で行われた大会を観戦したことに触れ「いつかこういう舞台に立ちたいなと本当に思った。子どもたちが見る機会や、選手と触れあう機会があればいいと思う」と述べ、選手との交流などに力を入れていきたいという考えを示しました。

東京都 小池知事「東京の多彩な魅力を発信していきたい」

東京都の小池知事は15日の記者会見で「東京オリンピック・パラリンピックをはじめとしてこれまで培ってきた国際スポーツ大会の運営のノウハウを生かして、大会の成功に向けて関係者の皆さんとともに積極的に取り組んでいきたい」と述べました。そのうえで「世界的なアスリートを東京でもてなすことができればと思っている。世界の注目が集まる中で東京の多彩な魅力を発信していきたい」と述べました。

過去の日本開催は名シーンも

陸上の世界選手権の日本での開催は、これまで1991年の東京と2007年の大阪の2回で、名シーンもありました。

このうち改築前の国立競技場で行われた1991年の東京大会は、世界のスーパースター、アメリカのカール・ルイス選手に注目が集まりました。

ルイス選手は男子100メートル決勝で、史上初の9秒8台となる9秒86という驚異の世界新記録を出して優勝すると、走り幅跳びにも出場し、同じアメリカのマイク・パウエル選手と激しい争いをしました。

この走り幅跳びでは、30年以上たった今も世界記録として残っている8メートル95センチをマークしたパウエル選手が金メダルを獲得しましたが、ルイス選手も生涯のベスト記録となる8メートル87センチをマークし会場を沸かせました。
また、長嶋茂雄さんがスタンドからルイス選手に「ヘイ、カール」と呼びかけたシーンも記憶に残るものとなっています。

日本選手では、翌年(1992年)のバルセロナオリンピックの「こけちゃいました」で話題を呼んだ男子マラソンの谷口浩美選手が、世界選手権で日本選手初の金メダルを獲得したほか、女子マラソンの山下佐知子選手が銀メダルを獲得しました。

ここから女子マラソンは黄金期に入りました。

一方、2007年の大阪大会は長居スタジアムで行われ、アメリカのタイソン・ゲイ選手が男子100メートルと200メートル、それに400メートルリレーで3冠を達成したほか、ブレイクする直前のジャマイカのウサイン・ボルト選手が男子200メートルなどで銀メダルを獲得しました。
日本選手では女子マラソンの土佐礼子選手が厳しい暑さの中、終盤で驚異的な粘りを見せ、この大会で日本選手唯一のメダルとなる銅メダルを獲得しました。

国立競技場の今後の利用に関係

陸上の世界選手権開催は、今後の国立競技場の利用に密接に関わってきます。

国立競技場は、去年の東京オリンピック・パラリンピックが終了したあと、球技専用のスタジアムとする改修方針がいったんは決まりましたが、その後、費用や芝の管理などが問題となり、陸上のトラックを残すことを含めて検討が進められてきました。
おととし、日本を訪れた世界陸連のセバスチャン・コー会長も、東京大会のレガシーとして活用することを提案し、呼び水を与えていました。

こうした流れを受けて、政府もことし5月、東京への招致が決まった場合は、大会開催に支障が生じないよう国立競技場の陸上トラックを残し、球技専用のスタジアムに改修するという基本的な考え方の見直しを図る方針を示しました。
オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムが陸上の世界選手権の会場として活用されたケースは、近年では2015年の北京と2017年のロンドンがあり、3年後の2025年の東京での開催もそれに続く形となります。

世界陸連会長「東京は重要分野の評価において最高スコア」

世界陸連のセバスチャン・コー会長は「東京で開催が決まり、日本の陸上競技連盟と一緒に世界選手権を祝うことができてとてもうれしく思う」と心境を話しました。

東京を選んだ理由については「東京は、招致でのいくつかの重要な分野の評価において、4つの候補都市の中で最も高いスコアを獲得した。シンガポールと激しく競っていたが、東京は競技場や大会運営、運営に必要な人材、そして日本でのスポーツの歴史の面で強かった。特に、商業的なパートナーシップについては、われわれの競技のために強力な市場を開拓し、強化することができるという必須条件が、明確に戦略的に盛り込まれていた」と説明していました。

経費・サブトラック・暑さ… 開催決まるも数々の課題が

東京開催が決まった世界選手権に向けた課題は、多額が見込まれる経費と国際大会の実施に必要なサブトラックの設置、それに開催の時期です。

まず経費について、2007年に大阪で行われた大会のケースでは招致に力を入れた地元、大阪市が選手の宿泊代や食事代、広報や警備の費用などとして、大会の運営費の半分近くにあたる40億円を負担しました。
今回の招致の主体は日本陸上競技連盟で、開催費用についての見通しは明らかになっていませんが、スポンサー集めなども含めて、多額が見込まれる経費をどう賄うかが注目されます。

2つ目のサブトラックについて日本陸連は、会場となる国立競技場から2キロほど離れた代々木公園陸上競技場、通称「織田フィールド」や東京体育館の陸上競技場などの活用を世界陸連に説明しています。
輸送手段の確保だけでなく、選手が万全の準備をすることが出来る環境作りの検討が、今後、進められるものとみられます。

そして3つ目の開催時期については暑さ対策と関わってきます。
競技日程などの詳細はこれから調整されますが、8月から9月を予定しています。

厳しい暑さの時期と重なり、前回、2019年に開催された中東カタールのドーハでの大会では、初めて9月下旬から10月上旬の時期に行われたものの、マラソンや競歩で途中棄権する選手が相次ぎ、東京オリンピックのマラソンの会場が札幌に変更されるきっかけにもなりました。

2025年の大会も暑さ対策は必須で、大会運営に影響を与えそうです。