【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(12日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア軍 東部ドネツク州 ハルキウ州を攻撃

ロシア軍が侵攻するウクライナ東部のドネツク州では、ウクライナ側の拠点、クラマトルシクから30キロほど南東の町で、5階建ての集合住宅がミサイルで攻撃され、ウクライナの非常事態庁は、これまでに31人が死亡したと明らかにしました。

ロシア軍は東部ハルキウ州でも攻撃を続けていて、地元の州知事は11日、「ロシア軍がハルキウ市内のショッピングモールや集合住宅などを攻撃した」と投稿し、地元の検察当局によりますと、これまでに6人が死亡したとしていて市民の犠牲が広がっています。

また、ロシア国防省は11日、東部ドニプロペトロウシク州で巡航ミサイル「カリブル」を発射して、アメリカがウクライナ軍に提供した高機動ロケット砲システム=ハイマースなどを破壊したと発表しました。

一方、イギリス国防省は11日、ロシア軍が兵士に対して休息の計画が欠如し、身体面や精神面での負担を訴えることが相次いでいると分析しています。

攻防激化 市民の犠牲5000人近く

ロシア軍は、ウクライナ東部のドネツク州で支配地域を徐々に広げていると見られますが、これに対してウクライナ側も反撃を強めています。

ロシアのインターファクス通信は、ロシアが掌握したとする南部ヘルソン州の町で、ウクライナ側の攻撃により子どもを含む市民7人が死亡したと伝えました。

国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月3日までに、ウクライナで子ども335人を含む少なくとも4889人の市民が死亡したとしていて、市民の犠牲は今後、さらに増えることが懸念されています。

イギリス国防省「ロシア軍 攻勢に向け再編成か」

こうした中、イギリス国防省は12日、ロシア軍の動きについて「ウクライナ軍に対して軍事的なプレッシャーをかけながら、近い将来のさらなる攻勢に向け、軍を再編成しているものと見られる」という分析を示しました。

一方で、ロシア国防省が民間の軍事会社に人材の採用を頼るなど、これまでになかった方法で兵員の確保を進めていると指摘したうえで「もしこの動きが本当なら、著しい死傷者が出ている兵の補充が困難になっていることを示していると思われる」として、ロシア側が兵員の補充に苦慮している可能性を指摘しました。

ロシア ドイツに天然ガスを送るパイプラインの供給停止

ロシアからドイツに天然ガスを送る主要なパイプライン「ノルドストリーム」は、11日から定期的な点検を理由に供給を停止しました。

ロシア側が経済制裁を科すドイツに揺さぶりをかけるため、点検終了後も供給を再開しないのではないかとの懸念が広がっています。

ノルドストリームはロシアからバルト海の海底を通ってドイツにつながる現在、ヨーロッパ最大規模の天然ガスパイプラインです。

このパイプラインを運営するロシアの国営ガス会社ガスプロムは11日から定期的な点検を理由にロシアからドイツに向けた天然ガスの供給を停止しました。

点検は今月21日までの予定だとしています。
このパイプラインを巡っては、先月ロシアからの供給量がおよそ60%削減されました。

ドイツ政府は暖房需要が増える冬に向けて十分な量を備蓄できないとして、国民や企業にガスの節約を求める異例の事態となっています。

こうしたことから、今回の定期点検についてもロシア側が経済制裁を科すドイツに揺さぶりをかけるため、点検終了後に供給を再開しないのではないかとの懸念がドイツでは広がっています。

ドイツ政府の担当者は、11日の定例の会見でパイプラインの点検について「本来は再開されるものだが、どうなるか予測はできない」と述べるにとどめました。

ドイツはエネルギーの脱ロシアを進めていますが、天然ガスの輸入に占めるロシア産の割合はことし4月時点で依然、35%を占めています。

ドイツ政府 カナダからタービン輸送

ロシアからドイツへの主要な天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」を巡っては整備が行われたタービンの1つについて、制裁の影響でカナダから現地への輸送が出来なくなっていました。

このため、ロシア側は、設備の修理に遅れが生じているとしてドイツへの天然ガスの供給量を40%減らすと発表していました。当初、ドイツ政府は国内のガス供給に問題はないとしていましたが、結局、カナダからタービンは輸送されることになりました。

ゼレンスキー大統領 ロシアへの制裁緩みに懸念

これについてウクライナのゼレンスキー大統領は「テロ国家がこうした制裁の例外を絞り出すことができるのであれば、あすあさってにはどのような例外を求めるだろうか」と述べたうえで、「これはウクライナだけでなく民主主義のすべての国にとって非常に危険な問いだ」と述べてロシアへの制裁に緩みが生じることに強い懸念を示しました。

そして「ロシアがヨーロッパへのガスの供給を可能なかぎり制限するだけでなく、最も深刻な時期に完全に停止することは疑いようがない。これこそ今準備すべきことだ」などと述べて、譲歩ではなくきぜんとした対応が必要だと訴えました。

日米財務相会談始まる ロシアへの制裁強化など協議

日本を訪れているアメリカのイエレン財務長官と鈴木財務大臣との会談が12日午後から行われていてイエレン財務長官はウクライナ侵攻を続けるロシアへの制裁について協議したいと述べました。

会談の冒頭、鈴木財務大臣は「日本とアメリカが連携を密にし、困難な課題の解決のために中心的な役割を果たすことが重要だ」と述べました。

これに対し、イエレン財務長官は「両国政府は、世界が直面する課題に関して、共通の見解や利害を共有しており、共同で連携することで実効性がさらに高まる」と述べました。

そのうえで、先月下旬に日米の首脳間で一致した、G7で連携してロシア産の石油の取り引き価格に上限を設ける方針について、「ロシアの軍事資金を減らすとともにエネルギー価格の高騰という課題にも対応できる策だと考えている」と述べ、ロシアへの制裁強化の具体的な対応について議論したいという考えを示しました。

“イランがロシアに数百機の無人航空機 供与の準備か” 米高官

アメリカ・ホワイトハウスの高官は、中東のイランがウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対し、数百機の無人航空機を供与する準備をしているという見方を示しました。

アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は、11日の記者会見で「われわれが得た情報では、イラン政府がロシアに対し、武器を搭載できるものを含めた数百機の無人航空機を供与する準備をしていることを示唆している」と述べました。

サリバン補佐官は、これらの無人航空機について、すでにロシア側に提供されているかどうかは確認できていないとしていますが、イランがロシア軍に対して、今月中にも使用方法の訓練を始めるという見方も示しました。
サリバン補佐官は、ロシアがイランに軍事支援を頼る状況について、ロシアがウクライナでの戦闘で武器を失っていることを示すものだとして、引き続きアメリカとしてウクライナへの支援を続けていく考えを示しました。

ロシア プーチン大統領とトルコ エルドアン大統領 電話で会談

ロシア大統領府は11日、プーチン大統領がトルコのエルドアン大統領と電話で会談したと発表しました。

それによりますと、両首脳は、トルコが、国連とともに仲介役として、調整しているウクライナ産の穀物の黒海での海上輸送について、協議したということです。

農業大国ウクライナの南部の黒海に面する港ではロシア軍による封鎖によって穀物の輸出ができない状況が続いています。

これに対し、トルコ大統領府も、エルドアン大統領が「今こそ黒海での穀物輸出の計画に向けて行動を起こすときだ」と強調したとしています。

一方、ロシア大統領府は、今回の電話会談の中で「両首脳は、近い将来の首脳会談を前に課題について協議した」として、首脳会談への調整が進んでいることを明らかにし、プーチン大統領が、ウクライナ情勢の仲介役のエルドアン大統領と直接、会談に臨むかどうかも注目されます。

エルドアン大統領はこの日、ウクライナのゼレンスキー大統領とも穀物の輸出などをめぐり、電話で会談したとしていて、ロシアとウクライナの停戦交渉に、積極的に関与する姿勢を改めて強調しています。

ウクライナから日本に避難した人 1500人超

出入国在留管理庁によりますと、ウクライナから日本に避難した人は10日時点で1505人となっています。

内訳はことし4月に政府専用機で避難してきた人が20人、政府が座席を借り上げた民間の航空機で避難してきた人が合わせて146人、そのほかの手段で避難してきた人が1339です。

性別は男性が375人、女性が1130人となっています。

年代別では18歳未満が344人、18歳以上で60歳以下が956人、61歳以上が205人です。

入国日を月別にみると、3月が351人、4月が471人、5月が332人、6月は282人、7月はおととい(10日)までに69人です。

このうち少なくとも44人はすでに日本から出国しているということです。

政府は、ウクライナから避難した人たちのうち、日本に親族などの受け入れ先がない人については、一時的な滞在先としてホテルを確保し、受け入れ先となる自治体や企業などを探していて、今月8日までに32世帯63人の受け入れ先が決まっています。