NATO首脳会議 フィンランド・スウェーデン 加盟手続き開始へ

NATO=北大西洋条約機構は29日、スペインで始まった首脳会議で北欧のフィンランドとスウェーデンの2か国の加盟に向けた手続きを正式に開始することを決めるとともに、ロシアについて「直接的な脅威」と位置づけ加盟国の防衛態勢を大幅に強化することを決定しました。

NATOの首脳会議はスペインのマドリードで29日から始まり、各国が合意した文書「マドリード首脳会議宣言」を発表しました。

この中では北欧のフィンランドとスウェーデンの2か国の加盟に向けた手続きを正式に始めるとしています。

NATOのストルテンベルグ事務総長は「加盟国は批准の手続きをできるだけ早く進める用意がある」と述べ、NATOに加盟する30か国すべての承認を経て早期加盟の実現に期待を示しました。

両国の加盟を巡っては難色を示していたトルコのエルドアン大統領が28日、北欧2か国の首脳とNATOのストルテンベルグ事務総長と会談し加盟を支持する姿勢に転じていました。

ロシアは「直接的な脅威」 防衛態勢大幅強化へ

一方、NATOは今後およそ10年の活動指針などをまとめた「戦略概念」を採択しました。

この中ではロシアについてこれまでの「戦略的パートナー」から「もっとも重大で直接的な脅威」と位置づけ、加盟国の防衛態勢を大幅に強化するとしています。

また「戦略概念」では中国についてNATOの安全保障や利益、価値観に課題をもたらす存在として初めて言及しました。

NATOは29日、岸田総理大臣を含むアジア太平洋の4か国の首脳も交え、世界が直面する課題について意見を交わしました。

NATOのストルテンベルグ事務総長は記者会見で中国について「核兵器を含む軍備を大幅に増強し周辺国に強くあたり、台湾を脅迫している。ルールに基づく国際秩序を守るためパートナーと結束しなければならない」と述べ、海洋の安全保障やサイバー攻撃への対策を巡り日本などとの協力を強化する考えを示しました。

今後の手続きは

NATOの新規加盟に向けた手続きは北大西洋条約の第10条に基づいて進められます。

今回フィンランドとスウェーデンの2か国について、各国は「加盟議定書」に署名することで合意しました。今後、各国がこの「加盟議定書」に署名しそれぞれの国内で批准すると、両国を北大西洋条約の当事国として認めたことになります。

すべての国が批准すると、NATOの事務総長がフィンランドとスウェーデンに加盟を呼びかけます。

そして両国が国内の手続きを経て、アメリカの国務省に加盟文書を提出すると正式にNATOの加盟国となります。

ウクライナ ゼレンスキー大統領 NATOに支援要請

ウクライナのゼレンスキー大統領は29日に開かれたNATO=北大西洋条約機構の首脳会議にオンラインで参加し、さらなる軍事支援と資金援助が必要だと訴えました。

ゼレンスキー大統領は「これはロシアがウクライナだけに行っている戦争ではない。将来の世界秩序がどうなるかを決める戦争だ」と訴えました。

そして「ウクライナはあなたたちが持っている最新のミサイルと防空システムが必要だ。それらを提供することでウクライナの市民を恐怖に陥れようとするロシアの戦術を完全に断ち切ることができる」と述べさらなる軍事支援を求めました。

また資金援助についても月50億ドル、日本円にしておよそ6800億円という具体的な金額を提示して必要性を訴えました。

さらにゼレンスキー大統領はフィンランドとスウェーデンのNATO加盟をめぐる動きを歓迎する一方で「ヨーロッパの防衛などに対する私たちの貢献はまだ不十分なのか。あと何が必要なのだろうか。ウクライナのための安全が保障される空間を見いだしてほしい」と述べ、ウクライナのNATO加盟に向けた議論を始めてほしいと訴えました。