【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(30日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア国防省 占拠の島から軍部隊 撤退させたと発表

ロシア国防省のコナシェンコフ報道官は、30日、ロシア軍が占拠してきた黒海の島、ズミイヌイ島について「善意の印として駐屯させていた軍の部隊を撤退させた」と発表しました。

その理由について「ウクライナから農産物を輸出するための『人道回廊』を設置するという国連の努力について、いかなる障害もないことを国際社会に示すものだ」と述べ、穀物の海上輸送を妨害しないことを示すため、あくまで自主的に部隊を撤退させたと主張しています。

一方、ウクライナのイエルマク大統領府長官は30日、自身のツイッターに投稿し「ズミイヌイ島にはもうロシア軍はいない。われわれの軍はすばらしい仕事をした」として、ロシア軍から島を奪還したと強調しました。

ウクライナ南部オデーサ州の沖合30キロ余りに浮かぶズミイヌイ島は、大きさがおよそ400メートル四方で、ことし2月に軍事侵攻が始まった直後、ロシア軍に占拠され、防空ミサイルシステムなどの兵器が持ち込まれました。

5月8日に撮影された衛星写真では、ロシアの軍事侵攻のシンボルとなっている「Z」の文字も確認され、南部の港湾都市オデーサの攻略に向けて、ロシア軍が重要な拠点と位置づけているとみられていました。

ルハンシク州知事 “市内に安全な場所見つけるのは難しい”

ウクライナ東部ルハンシク州のハイダイ知事は30日、自身のSNSに投稿し、ウクライナ側の拠点となっているリシチャンシクについて「ロシア軍はほぼすべての兵力を投入し、掌握を図っている。敵はあらゆる兵器で攻撃を続けていて、市内に安全な場所を見つけるのは難しい」として、激しい攻撃にさらされていることを明らかにしました。

プーチン大統領 “軍事作戦の期限 語る必要はない”

ロシア軍がウクライナで広範囲にわたって攻撃を強めるなか、ロシアのプーチン大統領は30日、訪問先のトルクメニスタンで記者から「軍事作戦はいつ終わるのか」と聞かれたのに対して「期限について語る必要はなく、私は決して言わない」と述べ、今後も計画に沿って作戦を続けていく姿勢を強調しました。

ゼレンスキー大統領 NATO首脳会議でさらなる武器供給求める

NATO首脳会議に参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、29日大統領府のホームページに新たな動画を公開しました。この中でゼレンスキー大統領は「ウクライナへのミサイル防衛システムの供給を加速させ、テロ国家への圧力を大幅に高めるよう求めた」と述べ、NATO首脳会議の中で加盟国に対して、ロシアに対抗するため、さらなる武器の供給を求めたことを明らかにしました。

NATO首脳会議 フィンランド・スウェーデン 加盟手続き開始へ

NATOの首脳会議はスペインのマドリードで29日から始まり、各国が合意した文書「マドリード首脳会議宣言」を発表しました。この中では北欧のフィンランドとスウェーデンの2か国の加盟に向けた手続きを正式に始めるとしています。

NATOのストルテンベルグ事務総長は「加盟国は批准の手続きをできるだけ早く進める用意がある」と述べ、NATOに加盟する30か国すべての承認を経て早期加盟の実現に期待を示しました。

両国の加盟を巡っては難色を示していたトルコのエルドアン大統領が28日、北欧2か国の首脳とNATOのストルテンベルグ事務総長と会談し加盟を支持する姿勢に転じていました。

トルコ 北欧2か国NATO加盟支持 背景に米の協力か

アメリカのバイデン大統領とトルコのエルドアン大統領は29日、NATOの首脳会議が開かれているスペインで会談しました。

会談の冒頭、バイデン大統領は「フィンランドとスウェーデンの状況をまとめてくれたことに感謝したい」と述べ、エルドアン大統領が当初難色を示していた北欧2か国のNATO加盟について、支持に転じたことに直接感謝の意を伝えました。

アメリカとトルコをめぐっては、トルコがロシアから最新鋭の地対空ミサイルシステムを購入したことにアメリカが反発し、最新鋭のステルス戦闘機F35の多国間共同開発計画からトルコを排除したことで関係が冷え込んでいました。

トルコはその後アメリカに対し、F35を提供しない代わりにトルコ軍が所有するF16戦闘機の性能の向上や追加配備に協力するよう求めていましたが、アメリカ政府の高官は29日、記者団に対し「トルコのF16の近代化を完全に支持する」と述べ、前向きな姿勢を示しました。

トルコが北欧2か国の加盟支持に転じた背景には、アメリカがトルコが求める安全保障上の協力を推進する姿勢を示したためではないかとの見方が出ています。

NATO ロシアを「直接的な脅威」と位置づけ

NATOは今後およそ10年の活動指針などをまとめた「戦略概念」を採択しました。この中ではロシアについてこれまでの「戦略的パートナー」から「もっとも重大で直接的な脅威」と位置づけ、加盟国の防衛態勢を大幅に強化するとしています。

G20議長国 インドネシア大統領 ゼレンスキー大統領と会談

G20=主要20か国の議長国を務めるインドネシアのジョコ大統領は29日、ウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談しました。G20首脳会議への招待を受けたゼレンスキー大統領は、どう対応するかはほかの出席者によるとしてロシアのプーチン大統領が出席するとしていることに反発しました。

インドネシアのジョコ大統領は29日、ロシアによる軍事侵攻後アジアの首脳としては初めてウクライナの首都キーウに入り、ゼレンスキー大統領と会談しました。

会談後の共同会見でジョコ大統領は平和的解決が重要だとしたうえで、ことし11月にインドネシアで開かれる予定のG20の首脳会議にゼレンスキー大統領を改めて招待したことを明らかにしました。

これに対してゼレンスキー大統領は「平和の回復にはG20との連携が極めて重要だ」とする一方で、どう対応するかはほかの出席者によるとしてロシアのプーチン大統領が出席するとしていることに反発しました。

シリア 親ロシア派支配地域 独立国家として承認

ウクライナ東部にあるドネツク州とルハンシク州で親ロシア派の武装勢力が事実上支配している一部の地域について、中東のシリアは29日、独立国家として一方的に承認したことを国営通信を通じて発表しました。これらの地域をめぐってはことし2月にロシアも一方的に承認していて、それ以外の国で承認したのは初めてだということです。
シリアのアサド政権にとってロシアは10年以上にわたって続く内戦で軍事支援を受けるなど「後ろ盾」として頼りにしてきた存在で、今も緊密な関係にあります。今回のシリアによる国家承認を受けてウクライナのゼレンスキー大統領は29日に投稿した動画で「ウクライナとシリアの関係はなくなり、シリアに対する圧力はさらに大きくなる」と強く反発しました。

ウクライナ南部 集合住宅にミサイル攻撃 4人死亡 2人けが

ウクライナの非常事態庁によりますと、南部のミコライウ市で29日朝、5階建ての集合住宅にミサイル攻撃がありこれまでに4人が死亡し、2人がけがをしたということです。非常事態庁がSNSで公開した映像では、建物の半分ほどが完全に壊れて周囲にがれきが散乱している様子や、救急隊員がクレーンを使うなどして建物から人を運び出す姿が確認できます。

ウクライナ兵士など144人が解放

ウクライナ国防省の情報総局は29日、ロシアと捕虜の交換を行い拘束されていたウクライナ側の兵士など144人が解放されたことをSNSで明らかにしました。解放された人数はロシアが軍事侵攻を始めて以降、最も多いということで、144人のうち95人がウクライナ東部のマリウポリで最後の激戦地となった「アゾフスターリ製鉄所」でロシア軍と戦っていた兵士などだということです。
また多くの兵士などは銃弾や爆発によるやけど、そして手足の切断などの大けがをしているため緊急治療と心理的なケアを受けているということです。

ウクライナ政府 軍事侵攻からの復興計画示す方針

ウクライナ政府の高官は、ロシアの軍事侵攻からの復興に向けた具体的な計画について、来月4日からスイスで開かれる国際会議で示す方針を明らかにするとともに日本の支援に期待を示しました。

ロシアによる軍事侵攻後、がれきの処理が課題となっているウクライナで日本の震災からの復興の経験を役立ててもらおうというオンラインセミナーが29日、JICA=国際協力機構の主催で開かれました。セミナーにはウクライナ政府や地方自治体の関係者のほか、日本側からは震災からの復興に関わった企業や自治体の担当者など合わせておよそ100人が参加しました。

この中では宮城県東松島市の担当者が例年の110年分にあたるがれきの処理を進めたうえで、災害公営住宅の整備までにおよそ8年がかかったことなどを紹介しました。またがれきの全体量を把握する方法について、日本企業の担当者がドローンや衛星写真を使う方法などを紹介していました。
これに対してウクライナの環境保護・天然資源省のフェドレンコ次官は「貴重な経験を共有してもらい感謝している」と謝意を示したうえで「ウクライナでも復興にむけた動きを始めようとしていて、来週はじめに復興計画も発表する予定だ」と述べ、来月4日からスイスで開かれる国際会議で具体的な復興計画を示す方針を明らかにするとともに日本の支援に期待を示しました。
ウクライナとスイスの政府が主催するこの国際会議は欧米各国なども参加する見通しで、復興に向けた国際社会の支援が本格的に始まるきっかけになると期待されています。