吉田拓郎さん“最後のアルバム” アーティスト活動締めくくる

数多くのヒット曲を生み出し、日本の音楽界に大きな足跡を残した吉田拓郎さん(76)が、半世紀以上にわたるみずからのアーティスト活動を締めくくる最後のアルバムが29日、発売されました。

拓郎さん最後のアルバム「ah-面白かった」は、29日から発売され、東京 渋谷区の店舗には、特設コーナーが設けられました。

1970年にデビューした拓郎さんは、「結婚しようよ」や「旅の宿」など数多くのヒット曲を生み出しただけでなく、6万5000人とも言われる観客が熱狂した野外コンサートの成功や、アーティスト自身によるレコード会社の設立、それにジャンルに縛られない楽曲の提供など日本の音楽界に大きな足跡を残しました。

一方で2003年、肺がんの切除手術を受けたほか、2014年には、のどにがんが見つかり、ことし4月に放送されたラジオ番組では「僕の残り時間は多くない」などと述べていました。

今回、発売されたアルバムの制作には、親交のある小田和正さんや、KinKi Kidsなどが参加し、収録された9曲すべての作詞・作曲を拓郎さんが手がけました。
このうち、アルバムと同じタイトルがつけられた9曲目は、妻で俳優の森下愛子さんと、この世から旅立つときには「あぁおもしろかった」と言いたいねと話したというエピソードを基に作られました。

心を通わせ合える存在と、共に生きられたことへの喜びが込められ、半世紀以上にわたる拓郎さんのアーティスト活動を締めくくる作品となっています。

アルバムを購入した59歳の自営業の男性は、「拓郎さんと同じ時代に生きることができ、感謝しかありません。午後は仕事を休みにして、一日中、アルバムを聴くつもりです」と話していました。

拓郎さんは、ことしいっぱいでテレビやラジオへの出演などをすべて終え、一線を退くということです。

「ah-面白かった」最後のレコーディングなど映像に

吉田拓郎さんは最後のアルバムの制作に合わせて、レコーディングの様子などを映像として記録しました。

それによりますと、アルバムの制作が始まったのは去年11月でした。

新型コロナウイルスの影響で当初、拓郎さんは、スタジオにいる音楽プロデューサーたちとスマートフォンで連絡を取り制作を進めていったといいます。

そして、ことし3月、実際にスタジオを訪問して、ボイストレーニングに取りかかります。

拓郎さんが人前で歌うのは3年ぶりでした。

その後、拓郎さんは信頼できる仲間と共にレコーディングを続け、曲の出来栄えを素直に喜ぶ姿も見せました。
アルバムの9曲のうち「雪さよなら」という曲の収録には、拓郎さんが盟友と呼ぶ小田和正さん(74)も参加しました。

収録の際、小田さんは「一緒にやろう」と突然、提案してきました。

映像には拓郎さんが「本気か!」と、苦笑しながらもマイクの前に立ち、共にハーモニーを奏でる様子が収められています。

音楽人生で最後となるレコーディングについて、拓郎さんは「音楽では何もできないと言う人もいるけれど、僕は違うと思います。音楽の力は絶対に捨てがたい。それを最後に表せたことに『ah-面白かった』という感じがします」と述べています。

また今回の映像の中には、1975年に行った野外コンサート“つま恋”の、かつての会場を訪ねた拓郎さんの姿もありました。

その場で、拓郎さんはファンヘのメッセージを収録し、「音楽と共に、音楽を愛しながら、音楽に愛されながら頑張っていこうという気持ちで、気がついたら70歳をすぎていました。音楽がそばにいてくれたから、厳しい状況も全部、乗り越えることができた。音楽が僕の人生のすべてだった」と話しました。

そのうえで、「今は愛いっぱいの、すごくハッピーな人生を送れていると思います。皆さんにも愛がいっぱい空から降ってくることを願っています」と締めくくりました。