北海道 斜里町 観光船事故後の寄付 捜索に活用 基金条例案可決

知床半島沖で観光船が沈没した事故を受け、地元の斜里町は、事故後、寄付が相次いだふるさと納税を財源に、行方不明者の捜索などに活用する基金の条例案を町議会に提案し、可決されました。

ことし4月に観光船の沈没事故が起きた後、斜里町には全国各地から「事故対応の費用として寄付をしたい」といった問い合わせが相次ぎ、町はふるさと納税を通じて寄付を受け付けていました。

町は集まった寄付を財源に、行方不明者の捜索活動や、事故の再発防止に向けた安全対策、慰霊事業などに充てるため、新たに基金を設置することを決め、その条例案を23日の町議会に提案し、可決されました。

斜里町は「全国から多くの人に支援してもらったので、期待や意図を裏切らないよう活用したい」としています。

斜里町役場の献花台を訪れる人の姿

事故から2か月となる23日も、斜里町役場にある献花台を訪れる人の姿がありました。

斜里町役場に設置された献花台には、今も一日当たり10束ほどの献花が寄せられています。
「早くすべての人が見つかることを願います」とか「ご冥福をお祈り申し上げます」といったメッセージと一緒に、花や食べ物、飲み物などが供えられています。

また「知床から帰ったらキャベツ食べるからって言ったじゃん!!帰るの遅いから約束のキャベツもってきたよ!」と書かれたメッセージとともにキャベツが供えられていました。

町によりますと、22日までにおよそ1250束の献花が寄せられたということで、町は一日に2回、職員が供えられた花を整えたり、枯れてしまった花を片づけたりして管理しています。

札幌から訪れた70代の男性は「ずっとニュースで気になっていたので来ました。事故は残念ですし、行方不明者が早く見つかることを願います」と話していました。

小型観光船の乗客「安全対策を最優先に」

斜里町ウトロで小型観光船を運航する事業者でつくる「知床小型観光船協議会」は、ことし4月の観光船の沈没事故を受けて運航を自粛していましたが、運航判断を複数の事業者で協議し、原則、単独運航をしないといった自主ルールをまとめ、1週間前から今シーズンの運航を再開しています。

23日午前中には2隻の観光船が合わせて30人余りを乗せて出港しましたが、船長どうしが業務無線で協議した結果、目的地のルシャ湾周辺の風が強くなると判断して、その3キロほど手前で引き返し、港に戻ったということです。

京都市から訪れた女性は「事故が起きて悩みましたが、思い切って乗船しました。船からヒグマの親子を見られてとてもよかったです。目的地の手前で引き返した時には、丁寧に説明してもらいました。安全対策を最優先にして今後も運航を続けてもらいたい」と話していました。

福井市から訪れた70代の男性は「クマを数頭見られましたが、船から少し遠かったです。事故を受けて船長が岸に近づかないよう用心したのだと思います。安全を重視するスタッフの気持ちが伝わってきました」と話していました。

群馬県伊勢崎市の60代の女性は「船長が『ここで揺れますよ』とか『止まりますよ』などと言ってくれたので、安心して乗ることができました。みんなで協力して安全運航をしてもらいたい」と話していました。

「知床小型観光船協議会」は「自主ルールを徹底し安全運航に努めていく」としています。

釣り船の船長「地道に安全運航を心がける」

観光船が沈没したあと、行方不明者の捜索にも参加した、斜里町ウトロの釣り船の船長の瀬川康彦さん(64)は、事故から2か月がたった今も12人の行方がわからないことについて「釣り客に『何か見えたら声をかけて』と言っている。全員が見つかってほしいが、もどかしい思いでいっぱいです」と話していました。

また、ウトロの小型観光船事業者でつくる協議会が、自主ルールで地元の釣り船や漁船と情報を共有し、複数社で出航判断をするとした点については「釣り船のほうが観光船よりも早い時間帯に海に出るので、霧や波の状況をいくらでも伝えることができる」と話し、協力を惜しまない考えを示しました。

瀬川さんの釣り船では事故後、予約の7割から8割ほどがキャンセルされたということで「事故で『知床は怖い』というイメージがついたと思う。それを1、2年でぬぐい去るのは難しいが、地道に安全運航を心がけて釣り客に示していくしかない」と話していました。

遊覧船 欠航や安全面の情報伝える取り組みも

北海道七飯町で遊覧船を運航している会社では、乗船する際の参考にしてもらおうと、船の欠航の基準や安全面の情報を伝える取り組みを始めています。

七飯町の大沼国定公園の湖で遊覧船を運航している会社では、安全管理規程にのっとり、常に事務所と連絡が取れるように業務用無線を使用しているほか、運航している船にトラブルが起きた際には、所有するほかの10隻の船が救助に向かうことができる体制を整えるなどしていて、先月、北海道運輸局が実施した検査でも安全面の不備は指摘されなかったということです。

しかし、知床の観光船の沈没事故から2か月がたっても、乗客は減少したままで、会社では観光客に乗船する際の参考にしてもらおうと、先月から、欠航する基準や安全面の取り組みについて、SNSで発信したり乗り場の受け付けに掲示したりして、情報発信を始めています。

具体的には、会社が遊覧船乗り場に設置している風速計で秒速15メートル以上が観測された場合や、船からの視程が300メートル以上確保できない場合は、運航を取りやめるなど、欠航の基準を明確にしているほか、毎朝、運航前に航路の状況を目視で点検していることなど、安全面での取り組みについて伝えています。

22日も運航前に航路を点検した際、霧が出ていて視程が確保されていなかったため、事務所の担当者が船と無線で交信を行い、初便の運航を取りやめることを決めていました。

「大沼合同遊船」の川村晃也社長は「安全の基準をもとに運航しているので、訪れる人には理解してほしいです。今後、船の安全について意思疎通を図りながら乗客をお迎えしたい」と話していました。