ロシア軍 ルハンシク州掌握へ攻勢 ウクライナ側は激しい抵抗

ロシア軍はウクライナ東部ルハンシク州を近く、完全掌握しようと、ウクライナ側の拠点、セベロドネツクなどに対して攻勢を強めています。一方、戦況を分析するイギリス国防省は、親ロシア派の武装勢力に多くの人的被害が出ていると指摘し、ウクライナ側が激しい抵抗を続けていることもうかがえます。

ロシアは、ウクライナ東部ルハンシク州の完全掌握を目指し、ウクライナ側の拠点セベロドネツクなどへの攻撃を続け、ウクライナ側は、ロシア軍が今月26日までにルハンシク州の全域を掌握する目標を設定したという見方を示し、警戒を強めています。

イギリス国防省は、22日に発表した分析で、ロシア軍がセベロドネツクに対して、北側のイジューム方面と南側のポパスナ方面から包囲しようと、激しい砲撃を続けていると指摘しています。

一方でイギリス国防省は、ロシア軍はことし3月25日以降、軍の死傷者数を公表していないものの、東部ドネツク州の親ロシア派の武装勢力は、今月16日の時点で、2128人の兵士が死亡し、8897人がけがをしたことを認めたとしています。

そのうえで「死傷率はおよそ55%に相当し、東部ドンバス地域でロシア軍と親ロシア派の兵員が減少していることを浮き彫りにしている。親ロシア派の武装勢力は、旧式の兵器を装備している可能性が高い」と分析し、ウクライナ側が激しい抵抗を続け、ロシア側に多くの人的被害が出ていることもうかがえます。

東部で、ロシア軍が攻勢を強める一方、南部では、ウクライナ軍が反転攻勢に乗り出そうとしています。

21日、ウクライナ軍は、ロシア軍がことし2月に占拠した黒海の島、ズミイヌイ島について「さまざまな方法で攻撃を加え、甚大な被害を与えた」とSNSに投稿しました。

ズミイヌイ島は、南部オデーサ州の沖合の島で、ロシア軍が攻撃の拠点の1つとしている海上の戦略的要衝です。

イギリス国防省は、ウクライナ軍が、欧米から供与された対艦ミサイル「ハープーン」で、ズミイヌイ島に武器などを運搬していたロシア軍のタグボートへの攻撃に成功したと、21日に指摘していて、ロシア軍とウクライナ軍の激しい攻防は黒海の海上でも続いています。

プーチン大統領 最側近「リトアニア国民に深刻な悪影響与える」

ロシアのプーチン大統領の最側近の1人、パトルシェフ安全保障会議書記は21日、ロシアの飛び地、カリーニングラードで、国家の安全保障問題を話し合う会議を緊急に開きました。

この中でパトルシェフ書記は、リトアニアがEU=ヨーロッパ連合の制裁措置に従って、自国を通過する鉄道貨物輸送の制限を始めたことについて「国際法の原則に反し、カリーニングラードへの大量の物資を封鎖した」と批判しました。

そのうえで「ロシアはこのような敵対的な行為に明確に対応する。適切な措置が検討されており、近く実施されるだろう。その結果は、リトアニアの国民に深刻な悪影響を与えることになる」と述べ、対抗措置をとる構えを示しました。

また、パトルシェフ書記は、北欧のフィンランドとスウェーデンの、NATO=北大西洋条約機構への加盟申請について「新たな脅威が生じており、国境の防衛のために追加措置が必要だ」と述べ、ロシア北西部の国境警備を強化する考えを示しました。

ロシアで最も西に位置するカリーニングラードは、ロシア海軍がバルト艦隊の司令部を置く戦略拠点です。

パトルシェフ書記は治安機関出身で、プーチン政権を支える強硬派の中でも代表格の1人とされていて、カリーニングラードに直接出向き、警告を発することで、このあと首脳会議を控えるEUやNATOに揺さぶりをかけるねらいもあるものとみられます。