【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(21日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる21日(日本時間)の動きをお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシアの独立系新聞「避難民の支援 国民の一致した思い」

ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」のムラートフ編集長が軍事侵攻で避難を余儀なくされたウクライナの人々の支援に充てたいとして、ノーベル平和賞のメダルを競売にかけたことについてロシア大統領府のペスコフ報道官は21日、「こうした支援、とりわけ子どもたちのための貢献は歓迎されるべきものだ」と述べました。

ただ、「ウクライナからロシアに避難してきた人たちを多くの人が支援している。こうした貢献は、国民の一致した強い思いだ」とも述べ、避難民の支援はほかのロシア人も行っていて、ムラートフ氏の行動は特段の評価にはあたらないと強調しました。

プーチン大統領「優先すべきは新兵器の配備」

ロシアのプーチン大統領は21日、クレムリンで開かれた国防省や連邦保安庁などの高等教育機関の修了式で演説し「われわれは潜在的な軍事的脅威とリスクを考慮しながら軍隊を強化し続け、現代の武力紛争の教訓を生かして、その兵力の構成をより完全なものにしていく」と述べました。

そのうえで「優先すべきは新しい兵器の配備だ」と述べ、新型の▽地対空ミサイルシステム「S500」や▽大陸間弾道ミサイル「サルマト」を年内に実戦配備する考えを明らかにしました。

また、卒業生たちに向かって「学んだ理論や知識は実務経験を積んでこそ生かせることを忘れてはならない」と述べ、軍事侵攻を続けるウクライナに派遣される可能性にも言及しました。

ウクライナ副首相「ロシア側に連行120万人」

ウクライナのベレシチュク副首相は20日に開いた記者会見でロシアによる軍事侵攻以降、これまでにロシア側に連行されたウクライナの市民は、120万人に上ると主張しました。

ウクライナの情報機関が独自に集計したということで、このうち24万人が2000人の孤児を含む子どもだとしています。

ベレシチュク副首相は強制的に連行された市民が帰国できるよう力を尽くす考えを強調しました。

ロシア軍のミサイル攻撃 オデーサの食料倉庫で1人死亡

ウクライナ軍の報道官は20日、黒海に面した港湾都市があるウクライナ南部のオデーサ州や、ミコライウ州がロシア軍のミサイル攻撃を受けたと発表しました。

ミサイルは合わせて14発、発射され、このうち、オデーサ州では、食料倉庫が被害を受け、倉庫の警備にあたっていた市民1人が死亡したということです。

また、ミコライウ州では、住宅やインフラ施設などに被害があったということですが、けが人は確認されていないとしています。

現場を撮影した写真では、食料倉庫の一部が骨組みとなって燃え続けるなか、消火活動が進められている様子が確認できます。

ウクライナから日本に避難 1342人(19日時点)

出入国在留管理庁によりますと、ウクライナから日本に避難した人たちは19日時点で1342人となっています。

内訳は▽ことし4月に政府専用機で避難してきた人が20人、▽政府が座席を借り上げた民間の航空機で避難してきた人が合わせて133人、▽そのほかの手段で避難してきた人が1189人です。

性別は▽男性が332人、▽女性が1010人となっています。

年代別では▽18歳未満が306人、▽18歳以上で60歳以下が851人、▽61歳以上が185人です。

入国日を月別にみると、▽3月が351人、▽4月が471人、▽5月が332人、▽6月は19日までに188人です。

このうち少なくとも22人はすでに日本から出国しているということです。

政府は避難してきた人たちに90日間の短期滞在を認める在留資格を付与し、本人が希望すれば、就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更することができます。

この在留資格に変更すると、住民登録をして国民健康保険に加入したり、銀行口座を開設したりすることができ、出入国在留管理庁は今月19日時点で1064人の変更を認めています。

また、これまでに3人が難民申請を行ったということです。

政府はウクライナから避難した人たちのうち、日本に親族などの受け入れ先がない人については、一時的な滞在先としてホテルを確保し、受け入れ先となる自治体や企業などを探していて、これまでに19世帯40人の受け入れ先が決まっています。

ノーベル平和賞のメダル 約140億円で落札 ウクライナ支援に

アメリカのオークション会社、「ヘリテージ・オークションズ」によりますとロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ドミトリー・ムラートフ氏が去年、受賞したノーベル平和賞のメダルが20日、ニューヨークで競売にかけられました。

競売の結果、メダルは1億350万ドル、日本円でおよそ140億円で落札されたということです。

ムラートフ氏はことし3月、ロシアによる軍事侵攻で避難を余儀なくされたウクライナの人々の支援にあてたいとしてメダルを競売にかける考えを明らかにしていました。

落札者は明らかにされていませんが、会社によりますと、売上金の全額がUNICEF=国連児童基金の人道支援活動に寄付されるということです。

ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」は、ウクライナ侵攻を批判していましたが、ロシア当局のメディア規制の強化を受け、3月に活動を一時停止しています。

ロシアの攻撃続く ウクライナ側“厳しい状況”

ロシア国防省は20日、東部ルハンシク州とドネツク州でウクライナ軍の部隊や兵器などを攻撃したほか、南部オデーサ州では飛行場をミサイルで攻撃し、無人機を破壊したなどと発表しました。

ロシアが完全掌握を目指して攻撃を続けるルハンシク州セベロドネツクの状況について、ハイダイ知事は20日、SNSに投稿し、ロシア軍の攻撃により、ウクライナ軍が支配下に置いているのは「アゾト化学工場」がある区域に限られているとして、厳しい状況を伝えています。

またウクライナ軍の参謀本部は20日、東部ハルキウ州でも砲撃の回数が増えていると指摘しています。

こうした中、ロシアが8年前に一方的に併合したウクライナ南部クリミアの親ロシア派勢力は20日、黒海の沖合にある石油ガス会社の採掘施設がウクライナ軍の攻撃を受けたと主張しました。

この攻撃で3人がけがをしたほか、7人の行方がわからなくなっているとしています。

これについてウクライナ側から反応は出ていませんが、ロシア側は爆発の危険もあったなどと反発していて、今後、報復として一層攻勢を強める可能性も懸念されます。

ウクライナ副首相 “ヘルソン州の住民はクリミア経由し避難を”

ウクライナのベレシチュク副首相は、20日、首都キーウで記者会見しました。

この中で副首相は、ロシア軍が攻勢を強める東部ルハンシク州のセベロドネツクにある「アゾト化学工場」には今も数百人の市民が取り残されているとしたうえで「地下道や地下シェルターがないため、人々は非常に危険な状況だ」と述べ、強い危機感を示しました。

そのうえで、人道回廊の設置を目指したものの、ロシア側に橋を破壊され、避難が難しくなっていると指摘し、赤十字国際委員会や国連と協力して、取り残された人々の意向を尊重しながら、避難の道を探る考えを強調しました。

一方、ロシア軍が掌握したとする南部ヘルソン州について「欧米からの兵器の供与が進むことで、ウクライナ軍が反撃に出て、支配された地域を解放する」と述べ、奪還に強い意欲を示しました。

ただ、ロシア軍がウクライナ軍の反撃を防ぐため、住民を盾にして、避難を妨げるおそれがあると指摘しました。

そのうえで「とりわけ子どもがいる住民は、機会を見つけてクリミアを経由して避難してほしい」と述べ、8年前にロシアが一方的に併合したクリミア半島にまずは避難して、戦闘の巻き添えにならないよう呼びかけました。

ヘルソン州知事「強制的にロシアに協力させられている」

ロシアは8年前、一方的に併合したクリミア半島に隣接する、ウクライナ南部ヘルソン州について、3月中旬に全域を掌握したと発表したあと、支配の既成事実化を進めています。

ロシア側が解任したとするラフタ知事は20日、避難先からオンラインの会見を開き「状況は深刻だ。ロシアは戦争が始まってから一度も人道回廊を設置していない。クリミアに向かうことはできるが、そのほかのウクライナ側への移動は完全にブロックされている」と述べ、人々は避難もできず、医薬品などの不足も深刻だと訴えました。

そのうえで「人々は家を突き止められ、脅され、契約を強いられるなどして、強制的にロシアに協力させられている」と指摘し、支配を強めるロシアを強く非難しました。

具体的には、医師や教員などが強制的に働かされたり、雇用契約を結ばされたりしているほか、ロシアに批判的な人物などこれまでに600人以上が拘束されたとしています。

一方で、南部での戦況については「この2週間のうちに、ウクライナ軍はヘルソン州と隣のミコライウ州の境界などで戦術的な成功をおさめた。反転攻勢によってヘルソン州が解放されることを確信している」と述べ、ウクライナ軍の反撃に強い期待を示しました。

ロシア軍支配下の町の住民「ウクライナ側に行けない」

ウクライナ東部ハルキウ州で、ロシア軍の支配下に置かれている町に住む男性が、NHKの電話インタビューに応じました。

応じたのは州都ハルキウの南東の町、チカロフスケに住む60歳の男性で、いまも周辺では戦闘が続いているということです。

男性は「4月の中旬から電気が通じなくなり、ガスも配管が破壊されて止まったままになっている。銀行から現金を引き出すこともできず、お金を借りるには高い利子を払わなければならない」と厳しい生活状況を明らかにしました。

そのうえで「ロシアは通りの先にある住宅に事務所を構え、家の所有者を外に連れ出し、目隠しをしてどこかへ連れ去った。彼らは町の保安の責任者を任命し、人道支援物資を配るためだとして、住民のパスポート番号や住所などの個人情報を集めている」と指摘しました。

そして、ロシア軍の侵攻後、およそ4000人の町の住民のうち3分の1ほどが避難したものの「いまではロシア側にしか向かうことができず、ウクライナ側には行くことができない。閉鎖されたような状況だ」と述べ、ロシアの監視下に置かれている状況を明らかにしました。

ロシア “天然ガス供給量の大幅減は制裁影響”

ロシア大統領府のペスコフ報道官は、ロシア最大の政府系ガス会社がドイツ向けのパイプラインを通じた天然ガスの供給量を大幅に減らすと発表したことをめぐり、ロシアに科されている制裁によってパイプラインの部品がそろわないことなどが影響していると主張しました。

ロシア最大の政府系ガス会社ガスプロムは、ドイツ向けの主要なパイプライン「ノルドストリーム」を通して供給する天然ガスの量を大幅に減らすと発表し、ドイツや、ドイツ経由でガスの供給を受けるフランスなどで警戒感が高まっています。

ペスコフ報道官は20日に発表したコメントで、ロシア側はガスを供給する用意はあるものの、ドイツの会社が手がけるパイプラインの修理が遅れていることや、修理に出したタービンが制裁によって返却されないことが影響していると強調したうえで「これは人為的な危機で、EU=ヨーロッパ連合の手によって作り出されたものだ」として、EU側がみずから招いた事態だという主張を一方的に展開しました。

“ウクライナの穀物輸出妨げはロシアの戦争犯罪” EU上級代表

EUは20日、ルクセンブルクで外相会議を開き、世界中で懸念が高まっている食料危機などについて意見を交わしました。

EUの外相にあたるボレル上級代表は会議の前、記者団に対し「世界の人々が飢えで苦しんでいるときに、ウクライナで何百万トンもの小麦が輸出を妨げられているのは、信じられないことだ。これは真の戦争犯罪だ」と述べました。

また、会議のあとの記者会見でも「ロシアがウクライナの輸出を妨げている。ロシアだ。われわれではない。ロシアだ」などと、何度もロシアを名指しして非難しました。

ロシアは食料安全保障が脅かされている責任は欧米の制裁にあるとする主張を繰り返していて、アフリカの一部の国からもロシアへの制裁が穀物の供給に悪影響を与えているという声が上がっています。

ボレル上級代表はアフリカのすべての国の外相に書簡を送り、EUの制裁はアフリカでの食料危機につながるものではないなどと説明したことを明らかにしました。

ボレル上級代表はロシアとの間で情報戦が行われているという認識を示し、加盟国の外相にもEUの立場について積極的な情報発信を求めたとしています。