価格が変動しにくいバナナも 値上がりの動き 不安の声

価格が変動しにくいとされているバナナ。しかし今、値上がりの動きが出ていて、都内のスーパーやバナナの専門店では不安の声が聞かれました。

東京 足立区にあるスーパーでは現在、フィリピン産のバナナを1袋160円ほどで販売しています。

去年11月の時点では、100円前後で販売していましたが、徐々に仕入れ値が上がり、それに応じた価格に設定せざるをえないということです。

店を訪れた80代の女性は「食べやすくて栄養があるので安ければ安いほどうれしいが、最近値段が高くなっていると感じている。安くなったときにたくさん買いたい」と話していました。

「ベニースーパー佐野店」の青果担当の類家正光さんは「バナナはお手ごろな食べ物として本来はもっと安く提供していたので、心苦しい状況だ。客のニーズに合わせながらできるだけ価格を抑えていきたい」と話していました。

バナナスイーツ専門店では

一方、墨田区にあるバナナを使ったスイーツの専門店では、値上げに対応するため試行錯誤しています。

この店ではバナナをふんだんにつかったケーキやジュースなど30種類の商品を販売しています。

店では1か月で1トンほどのバナナを消費していて、このうち8割ほどがフィリピン産だということです。

今回の動きを受けて、今後商品の値上げも検討せざるをえない状況だといいます。

ただ、値上げをするだけでは客足が離れかねないとして、沖縄県産のバナナを使用した新商品の開発など付加価値をつけることで対応しようと考えているということです。

「バナナファクトリー」の市村健人オーナーは「店を始めてから5年たつが、これまでバナナは値上げがなかったので困惑しています。小麦粉などの値段もあがっていて負担は大きくなってしまうが、おいしいものを提供できるようにしていきたい」と話していました。

卸売会社の担当者 “世界的な情勢の影響で今の価格に”

東京都中央卸売市場によりますと、バナナの卸売価格は去年12月は1キロ当たり平均110円でしたが、ことし4月の時点では5割以上あがって1キロ当たり平均177円になったということです。

果物などの卸売会社の担当者は、海外での新型コロナによる人件費の高騰やロシアによるウクライナ侵攻の影響などを受けた原油高など、さまざまな要因で、生産コストや輸送コストが上昇したこと、それに円安が進んでいることが値上がりの大きな原因だとしています。

担当者によりますと値上がりはバナナだけにとどまらず、海外から輸入しているさまざまな果物が値上がりしているということです。

そのうえで、今後の見通しについては「バナナは手ごろな商品としてスーパーなど小売りの現場で価格が抑えられすぎていた側面があり、今までが安すぎたというのもあると思う。一度上がった値段は下げにくいし世界的な情勢の影響で今の価格になっているため、これがすぐにもとの価格に戻ることはないと思う」と話していました。

フィリピン政府 価格の引き上げを要望

日本で親しまれているフィリピン産のバナナについて、フィリピン政府はウクライナ情勢や新型コロナウイルスの感染拡大の影響で生産コストや輸送費が大幅に上昇し、安定的な供給が難しくなっているとして、日本の小売りの業界団体に対し価格の引き上げを要望しました。

フィリピン政府としてこうした要望を行うのは初めてだということです。

要望は今月8日、全国スーパーマーケット協会と日本小売業協会の2つの団体に対して行われ、バナナの小売価格について適正な水準への引き上げを求めています。

都内のフィリピン大使館によりますと、ウクライナ情勢を背景にした燃料や肥料価格の高騰などで生産コストが増加しているほか、新型コロナウイルスの影響で停止していた経済活動の再開に伴って海上輸送など物流コストも上昇しているということです。

こうした生産や流通のコストの増加がある一方、日本国内の小売価格は横ばいが続いていることから、今回の要望に至ったとしています。

財務省の貿易統計によりますと、去年1年間に海外から輸入されたバナナのうちフィリピン産は84万トン余りと全体のおよそ76%を占め、国別で最も多くなっています。

フィリピン大使館の担当者は「国内で進むインフレにウクライナ情勢と新型コロナが拍車をかけ、生産者を取り巻く環境が厳しくなった」と話していて、今後業界団体だけでなく小売業者などにも要望を行いたいとしています。