ロシアのパスポート発行 ウクライナ政府「重大な主権侵害だ」

ロシアが軍事侵攻を続けるウクライナで、新たに南部などの2つの州で、住民にロシアのパスポートが発行されました。支配の既成事実化を加速させるねらいがあるとみられ、ウクライナ政府は「重大な主権侵害だ」と反発しています。

ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部の戦況について、ウクライナの公共放送は11日、ルハンシク州のハイダイ知事の話として、ロシア軍は激戦地となっているセベロドネツクとそのほか9つの地域へ攻撃を加えたとしたうえで「セベロドネツクを攻撃するための拠点の足固めを進めている」と伝えています。

また、ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、新たに公開した動画でセベロドネツクについて「激しい市街戦が続いている。敵の進軍をすでに何週間も阻止し、強固な守りを維持しているすべての防衛者を誇りに思う」と述べ、必死に抵抗を続けていることを明らかにしました。
一方、ロシア軍が事実上支配しているウクライナ南部へルソン州の中心都市へルソンと、南東部ザポリージャ州の都市メリトポリでは住民にロシアのパスポートが発行され、ウクライナ政府は「重大な主権侵害だ」と反発しています。

ロシア通信によりますと、このうちへルソンでは市民23人がパスポートを受け取ったということです。

プーチン政権はこれまでも、東部のドネツク州やルハンシク州で支配地域の住民にパスポートを発行し、ロシア国籍を与える政策を進めてきましたが、今回、新たに2つの州で同様の措置が始まったことで、ウクライナ側はロシアによる支配の既成事実化が加速するのではないかと警戒を強めています。