ウクライナ東部で攻防続く 穀物輸出できず食糧危機懸念高まる

ウクライナでは東部で一進一退の攻防が続く一方、南部の黒海に面する港では、穀物が輸出できず世界的な食糧危機への懸念が高まっていて、国連のWFP=世界食糧計画は「今すぐ行動をしないと大きな代償を払うことになる」と危機感を強めています。

ウクライナ東部で攻撃を続けるロシア軍は、10日も激戦地となっているルハンシク州のセベロドネツクに地上部隊を送り込みましたが、ウクライナ側の激しい抵抗にあい、一進一退の攻防が続いています。

ウクライナのゼレンスキー大統領は10日、東部の戦況について「ドンバスで非常に激しい戦闘が続いている。ウクライナ軍は占領者の攻勢を阻むためあらゆる手段を講じている」と述べ、欧米各国に軍事支援の継続を訴えました。

一方、ウクライナ軍の報道官は10日、ロシア海軍の動きについて、黒海の北西部でウクライナの船舶の航行を妨害しているなどと説明しました。

ウクライナ南部の港湾都市、オデーサのトゥルハノフ市長は10日、NHKのインタビューで、港がロシア軍に封鎖され、穀物が輸出できない状況だとしたうえで「ロシアの艦船が黒海に展開していることは、オデーサが危険地帯であり、攻撃が行われる可能性があるということだ」と述べ、ロシア軍の攻撃に備えることが最優先だと強調しました。
そのうえで、状況を打開するには、NATO=北大西洋条約機構が艦船を派遣して防衛にあたるか、ロシア側からオデーサの安全について確約を得なければならないとしたうえで「それが早ければ早いほど、ウクライナの穀物輸出の再開も早くなるだろう」と述べ、国際社会に支援を訴えました。
ウクライナからの穀物の輸出をめぐって、国連のWFP=世界食糧計画のビーズリー事務局長は8日、SNSに投稿した動画の中で「ウクライナは世界の重要な穀倉地帯だが、市場から消えたことで国境を越えて影響が広がり、食料不足や価格の高騰などがアフリカや中東などで起きている」と述べ、具体的に小麦や小麦粉の値段は、レバノンで47%、リビアで15%、上昇していると指摘しました。

そのうえで「今すぐ行動をしないと大きな代償を払うことになる」と述べ、黒海の港からの輸出の再開や国際社会による資金支援などが必要だと訴えました。