米中の国防相会談 バイデン政権発足後 対面では初

アメリカのオースティン国防長官と中国の魏鳳和国防相が10日に訪問先のシンガポールで初めて対面で会談し、偶発的な衝突を回避するため、対話を継続する重要性を確認しました。
一方、台湾をめぐっては、アメリカ側が不安定化を招く行動を慎むように求めたのに対し、中国側は、アメリカによる台湾への武器売却を強く非難するなど、双方の立場の違いが改めて浮き彫りになりました。

アメリカのオースティン国防長官と中国の魏鳳和国防相は各国の防衛担当の閣僚らが集まる「アジア安全保障会議」に出席するためシンガポールを訪れていて、10日にバイデン政権が発足した去年1月以降初めてとなる対面での会談を行いました。

会談はおよそ1時間にわたり、米中両政府の発表によりますと、双方は偶発的な衝突を回避するため、対話を継続する重要性を確認したということです。

ただ、台湾をめぐっては、アメリカ国防総省によりますと、オースティン長官は台湾海峡の平和と安定の重要性と一方的な現状変更への反対を強調したうえで中国側に対し、さらなる不安定化を招く行動を慎むように求めました。

一方、中国国防省の報道官は記者会見し、魏国防相はアメリカによる台湾への武器売却に断固反対し、強く非難したと明らかにしました。

その上で、魏国防相は「もし誰かが台湾を分裂させようとするならば中国軍は必ず、戦うことや代価を惜しまず、台湾独立のたくらみを粉砕し、 国家の主権と領土の一体性を断固として守る」と述べたということで、台湾をめぐる米中両国の立場の違いが改めて浮き彫りになりました。

一方、アメリカ側が中国に対し、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの軍備面での支援を行わないよう強く求めていることについて、中国国防省の報道官は「いかなる軍事支援をしたこともない」と述べました。

中韓国防相も対面で会談 北朝鮮について意見交換

「アジア安全保障会議」では、北朝鮮についても議論される見通しで、10日午後には、韓国のイ・ジョンソプ(李鐘燮)国防相と中国の魏鳳和国防相が会談しました。

このなかでは弾道ミサイルの発射を繰り返し、7回目の核実験の懸念も指摘されている北朝鮮について意見が交わされ、韓国側の発表によりますと、イ国防相は北朝鮮の非核化に向けて両国が協力する必要性を述べたうえで「中国が建設的な役割を果たすことができる」と強調したということです。

これに対して魏国防相は「中国は朝鮮半島の非核化という目標を一貫して維持してきた」と述べたということです。

中韓両国の国防相が対面で会談するのは、韓国で先月、ユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が発足して以降、初めてです。

また会議にあわせて、日米韓3か国の防衛相会談も行われ、北朝鮮に対する連携を確認する見通しです。