日本が国連安保理の非常任理事国に当選 加盟国中最多の12回目

国連安全保障理事会の来年から2年間の非常任理事国を決める選挙が国連総会で行われ、日本が加盟国の中で最も多い12回目の当選を果たしました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や北朝鮮の核・ミサイル開発などをめぐって、安保理が機能不全に陥っているという批判が高まる中、日本が非常任理事国としてどのような役割を果たしていけるのかが焦点です。

国連の安全保障理事会は、
▼アメリカや中国など5つの常任理事国と、
▼任期が2年で地域別に割り当てられた10の非常任理事国で構成され、
このうち非常任理事国は毎年5か国ずつ改選されます。

国連総会では9日、来年1月から2年間の非常任理事国を決める選挙が行われ、それぞれの地域から立候補した、日本、スイス、マルタ、エクアドル、モザンビークが、いずれも当選に必要な3分の2以上の票を得て選出されました。

日本が非常任理事国になるのは2016年から17年までの2年間以来、12回目で、国連加盟国の中で最も多くなります。

安保理では、ことし2月、ロシアに対してウクライナからの軍の即時撤退などを求めた決議案がロシア自身の拒否権によって否決されたほか、先月には弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対して制裁を強化する決議案が中国とロシアの拒否権によって否決されるなど、安保理が機能不全に陥っているという批判が高まっています。

非常任理事国として最も多くの経験を持つ日本が、世界各地の紛争などへの対応に加え、安保理の権威や信頼の回復に向けどのような役割を果たしていけるのか注目されます。

国連総会に出席した小田原外務副大臣は記者団に対し「引き続き多くの国が国連と安保理に期待をしているのも事実だ。わが国は各国との緊密な意思疎通や丁寧な対話を通じて、安保理が期待されている役割を果たすよう協力していく」と述べました。

林外相「議論をリードし 国連全体の機能強化に努めていく」

日本の選出を受けて、林外務大臣は「国連安保理は、常任理事国であるロシアのウクライナ侵略や、北朝鮮の核・ミサイル活動に対し、有効に機能できていない現状にあり、試練の時とも言える。日本は安保理が所期の役割を果たすよう協力し、法の支配に基づく国際秩序の維持、強化を目指していく。安保理改革にも引き続き積極的に取り組み、国連での議論をリードしていくとともに総会を含む国連全体の機能強化に努めていく」とする談話を発表しました。

松野官房長官「法の支配に基づく国際秩序の維持 強化を」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「常任理事国であるロシアのウクライナ侵略や北朝鮮の核・ミサイル活動に対して安保理は有効に機能できていない現状にあり、今まさに試練の時だ。その一方で、引き続き多くの国が安保理を含む国連による事態の打開を期待しているのも事実だ」と述べました。

その上で「各国との緊密な意思疎通と丁寧な対話を通じ、安保理が所期の役割を果たすよう協力していく考えだ。その中で、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化を目指していく」と述べました。

また、日本が加盟国の中で最も多い12回目の当選を果たしたことについて「これまでの日本の貢献に対する各国の信認の一端を示すものだ。日本が国際社会の平和と安全の維持に貢献する能力と意思を持つことを示し、日本の常任理事国入りを含む安保理改革に弾みをつけたい。同様に、安保理のみならず総会を含む国連全体の機能強化にも努めていく」と述べました。

石兼国連大使 “日本の活動 加盟国から見つめられている”

日本の石兼国連大使は、NHKとのインタビューで、日本が来年1月から非常任理事国を務めることが決まったことについて「日本に対する国際社会の多くの信頼と支持を反映しているということだと思う。私たちはそれに応えて、国際社会の平和と安全、発展のために全力を傾けていかなければならない」と意欲を示しました。

また、加盟国の中で最多の12回目の非常任理事国を務めることについて「各国からは『日本は当選すればどう活動するのか』という質問を受けることがある。まさに安保理の中で日本がどう活動するのかを多くの加盟国から見つめられていると感じている」と述べました。

そのうえで、安保理の機能不全が批判されている状況について「安保理が本来期待されている機能を果たしえていない。非常に厳しい状況の中で安保理のメンバーとして活動していかなければならない。国連のシステム全体が挑戦を受けている中で、多くの国と一緒になってこの挑戦に対じしていかなければならず、大変大きな課題を背負って非常任理事国になることになる」と指摘し、加盟国の中で最も多く非常任理事国を務めてきた立場の責任も感じているとしました。

石兼大使は、実際に日本がどのような活動を目指すのかについて「ウクライナ情勢を受け、確かに安保理は期待された機能を果たしていないが、その中でも多くの理事国がなんとか一致点を見いだそうという努力をしている。われわれはそうした努力の一端を担いたい。また、大きな紛争への関わりに焦点があてられるが、紛争の予防や再発防止にも、もう少し光をあてて取り組むべきだと考えている」と述べました。

また、北朝鮮問題について「日本と日本国民、地域と国際社会に対する大きな挑戦であり、完全かつ不可逆的な北朝鮮の非核化を目指し、安保理の中でしっかりとした役割を果たしていきたい」と強調しました。

さらに、日本が目指してきた安保理改革については「ウクライナ危機を契機とした安保理の機能不全に対するフラストレーションを多くの国が抱え、その裏返しとして安保理改革への期待が高まっているのも事実だが、残念ながら改革の方向性が明確になってきたという状況ではない。難しい道のりだが、諦めてしまえば改革が必要だと思う国の期待を裏切ることになるので、われわれとしてはどんなに難しくてもしっかりやっていかなければならないと思っている」と述べ、粘り強く改革に取り組んでいく姿勢を示しました。

現在の非常任理事国と新たに選出された非常任理事国

現在、非常任理事国を務めているのは、
▼インド、
▼アイルランド、
▼ノルウェー、
▼ケニア、
▼メキシコ、
▼アルバニア、
▼UAE=アラブ首長国連邦、
▼ガボン、
▼ガーナ、
▼ブラジルの10か国です。

このうち、インド、アイルランド、ノルウェー、ケニア、メキシコがことしいっぱいで任期を終了し、
新たに選出された、
▼日本、
▼スイス、
▼マルタ、
▼モザンビーク、
▼エクアドルが、
来年1月から2年間、非常任理事国を務めます。