サッカーW杯 ウクライナ 本大会出場ならず 欧州予選プレーオフ

ことし11月に開幕するサッカーのワールドカップ、カタール大会への出場をかけたヨーロッパ予選のプレーオフが5日に行われ、ウクライナはウェールズに0対1で敗れて4大会ぶりの本大会出場はなりませんでした。

サッカーワールドカップカタール大会のヨーロッパ予選のプレーオフはことし3月下旬に行われる予定でしたが、ロシアからの軍事侵攻を受けているウクライナ側からの要望を受けて延期されました。

5日にウェールズで行われた試合でウクライナはワールドカップへの出場をかけてウェールズと対戦しました。

1日のスコットランド戦と同様に国旗を肩にかけて入場した選手たちは、スタジアムにつめかけた多くのファンに迎えられました。

試合は、前半からウクライナがボールを支配する展開が続き、チャンスを作ったものの相手のゴールキーパーにシュートを防がれて得点を奪えませんでした。

34分にはウェールズのベイル選手のフリーキックをヤルモレンコ選手がヘディングでクリアしようとしましたが、これがオウンゴールとなり先制点を奪われました。

1点を追うことになったウクライナは後半、ペナルティーエリア内でのパス交換からヤルモレンコ選手がシュートをねらったり、左サイドからのクロスボールを途中出場の選手がヘディングでねらうなど多彩な攻撃で何度も相手のゴールに迫りました。

しかし、最後までウェールズの堅い守りを崩すことはできず0対1で敗れて4大会ぶり2回目の本大会への出場はなりませんでした。
一方、ウェールズは64年ぶり2回目となるワールドカップ出場を決め、イングランド、アメリカ、イランと同じグループBに入ることになりました。

ウクライナ代表 軍事侵攻開始以降は国外で練習

ウクライナは、世界ランキング27位。
4大会ぶり2回目のワールドカップ出場をめざしていました。
初めて出場した2006年のドイツ大会では、当時の絶対的エース、シェフチェンコさんを軸にベスト8入りを果たしています。
ロシアによる軍事侵攻が始まって以降、ウクライナの選手は国内のリーグが中止されるなど、サッカーから離れる生活を余儀なくされました。

代表チームはスロベニア国内に合宿用の会場を提供してもらって5月に母国を離れ、練習を続けてきました。
スロベニアに移動してからも、選手たちは母国に残した家族の身を案じる日々が続いていて、恵まれた環境で練習に取り組むことに葛藤を感じ続けた選手もいます。

10年以上、代表として活躍するタラス・ステパネンコ選手は「戦争が起きていて、健康な私は何かの役に立てたかもしれない。自分がサッカーをしている間も亡くなっている人がいる。そう考えると、暗い気持ちになる」と複雑な心境をのぞかせていました。
それでも、ウクライナの選手たちは「つらい状況にいる人たちにポジティブな気持ちを届け、幸せにしたい」という強い思いで自分たちを奮い立たせ、1日に行われたスコットランドとの試合ではアウェーながら3対1で快勝してワールドカップへの切符をかけウェールズとの試合に臨みました。

試合後のサポーター「いちばん大切なのは戦争がなくなること」

試合が終わりスタジアムから出てきたウクライナのサポーターたちは、落胆の表情を浮かべ、「残念だが、これはサッカーの試合だからしかたがない。チームはよくやった」などと健闘をたたえていました。
また国歌を歌いながら旗をかかげたり、「ウクライナに栄光を」と声を合わせたりしていました。

1か月ほど前に、ウクライナからイギリスに避難してきたという女性は「負けたことについては少しがっかりしたけれど、ここに来て、チームを応援できたことはとてもうれしい。次のチャンスがあると思う」とした上で、「私たちにとって、いちばんの戦いは、ウクライナにおけるロシアとの戦いだ。その戦いに勝つことが重要だ」と話していました。

別の男性は「残念だが、選手たちはベストを尽くした。私たちがここにいるのは、サッカーだけでなく、ウクライナという国を支援するためだ。いちばん大切なのは、ウクライナでの戦争がなくなることだ」と強調していました。

一方、64年ぶりのワールドカップ出場を決めたウェールズのサポーターの男性は「自分の人生で初めての経験だ。ただ、ウクライナもすばらしいチームだった」と話し、ウクライナのサポーターと握手をして、健闘をたたえあっていました。

キーウのパブでも健闘たたえる

キーウ市内のパブでウクライナ代表を応援した人たちは、前線の選手がウェールズのゴール前に攻め込むたびに身を乗り出して声援を送っていました。

ウェールズ代表に先制されると、店内には大きな落胆の声が響き、リードされたまま試合終了が近づくと人々は「ウクライナに栄光あれ」と声を合わせ同点ゴールを期待して祈るような表情でプレーを見つめていました。

ワールドカップの出場を逃したことを告げる笛が鳴ると店内は静まり返り、人々は大きなため息をついたり頭を抱えたりしていましたが、しばらくすると代表チームの健闘をたたえる拍手が沸き起こりました。
「ウクライナに栄光あれ」と声を張り上げて応援していた男性は「戦時下で選手たちは精神的にもつらい状況だったと思います。私たちはウクライナを愛し、団結しています。この戦争ですぐに勝利できることを期待しています」と話していました。

また、家族や友人とともに観戦していた男性は「2か月の準備期間は、ウェールズと戦うには短すぎました」と選手たちをねぎらったうえで「国民全体が代表チームの勝利を願っていたように、ウクライナの勝利も願っています」と話していました。