外国人観光客の入国 来月10日から再開へ 当面添乗員付きに限定

政府は新型コロナの水際対策で止めていた外国人観光客の入国を来月10日から再開することを決めました。
98の国と地域を対象とし、感染対策を徹底するため、まずは、添乗員付きのツアー客に限定することにしています。

岸田総理大臣は、26日夜、都内で講演し外国人観光客の受け入れを来月10日から再開する考えを表明しました。

新型コロナウイルスの水際対策をめぐっては、政府は、来月1日から一日当たりの入国者数の上限を、今の1万人から2万人に引き上げることにしていて、観光目的の入国もこの枠の中に含まれます。

入国の対象は新型コロナの陽性率による区分けで最もリスクの低いとされるアメリカや韓国、中国など98の国と地域が対象になるということです。

さらに、感染拡大を防ぐため当面、添乗員付きのツアー客に限定することにしています。

外国人観光客の受け入れ再開は、新型コロナで大きな打撃を受けた観光業や地域経済の回復につながることも期待されますが、年間3000万人を超えていたコロナ前に戻るには時間がかかるとの指摘もあります。

今後、感染対策を徹底しながら入国枠を拡大できるかどうかが課題となります。

全日空 井上社長「緩和や撤廃 さらに進むことを切望」

外国人観光客の入国が来月10日から再開されることについて、航空大手・全日空の井上慎一社長は「再開は朗報だ。円安も重なり訪日需要はますます高まっている。地域経済活性化のためスピード感を持ってG7各国並みに水際対策の緩和や撤廃がさらに進むことを切望する」とコメントしています。

98の国・地域からの入国 ワクチン接種なくても検査など免除

新型コロナウイルスの水際対策が来月1日から緩和されるのを前に、国は入国時の検査や待機措置を免除する国や地域のリストを公表しました。

アメリカや韓国など98の国と地域から入国する場合はワクチンを接種していなくても検査などを免除するとしています。

来月1日からは一日当たりの入国者の上限が2万人に引き上げられ、現地の感染状況などに応じて水際対策も緩和されます。

厚生労働省によりますと、アメリカや韓国、イギリスなどリスクが低いと判断した合わせて98の国と地域は、ワクチン接種を受けていなくても入国時の検査や自宅などでの待機措置を免除するとしています。

入国者のおよそ8割に相当するということです。

ただし、入国時のサーモグラフィーによる検温で発熱が確認された場合などは検査や宿泊施設での待機を求めることもあるということです。

▼また、インドやベトナムなど合わせて99の国や地域については3回のワクチン接種を受けていれば検査や待機措置を免除するとしています。

3回接種していない場合は検査を行ったうえで最短でも3日間の自宅などでの待機を求める方針です。

▼パキスタン、フィジー、アルバニア、シエラレオネの4か国についてはこれまでどおり検査を継続し、▽3回の接種を受けている場合は自宅で、▽受けていない場合は国が指定する宿泊施設で最短でも3日間の待機を求めるとしています。

厚生労働省はリスクの評価の方法について「それぞれの国や地域の感染状況や、出国前の検査が機能しているかなどを総合的に判断した。今後、状況を見て評価を変更することもある」としています。

松野官房長官「段階的に平時同様の受け入れ目指す」

新型コロナの水際対策をめぐり、外国人観光客の受け入れを来月10日から再開することについて、松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「観光庁で実施している実証事業が順調に進み、旅行会社や宿泊事業者が留意すべき点をまとめたガイドラインを速やかに公表できるめどがたったことを受けて、添乗員付きのパッケージツアーで観光客の受け入れを再開する」と説明しました。

そのうえで、今後の水際対策の在り方について「段階的に平時と同様の受け入れを目指していく。入国者総数の管理を含め、検疫体制や防疫措置の実施状況を勘案し、新型コロナの国内外の感染状況や主要国の水際対策の状況などを踏まえながら適切に判断していく」と述べました。

山際新型コロナ対策相「経済活性化のため正常化に向けた一歩」

山際新型コロナ対策担当大臣は、閣議のあと記者団に対し「水際対策を少し緩和するのは日本の経済を活性化させるためにやることなので、正常化に向けて確実に一歩を踏み出すということだ。今まで感染状況などをきちんと見ながら段階的に水際措置を緩和してきたので、これからもその姿勢で臨みたい」と述べました。

後藤厚生労働相 “上限引き上げは感染状況も含め考える”

後藤厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し「検疫の現場では、少なくとも機材や人員を増強するなどの対応もしている。少なくとも2万人への引き上げについては万全の体制で臨める」と述べました。

そのうえで、さらなる上限の引き上げについて「段階的に日常を取り戻していくということで、拡大できると判断したときにはそういう方向で動きたい。感染状況も含めてこれから考えていく」と述べました。

斉藤国土交通相 “感染対策の徹底を”

斉藤国土交通大臣は、27日の閣議のあとの記者会見で、「再開にあたっては、受け入れ地域の理解と安心感を醸成することが必要だ」と述べ会話の際のマスク着用など、入国した人に対して新型コロナウイルスの感染対策の徹底を求める考えを示しました。

一方、政府は、外国人観光客の受け入れを当面、添乗員付きのツアー客に限る方針です。今後、個人旅行の外国人観光客にも対象を広げるかどうかについて、斉藤大臣は、「国内外の感染状況などを踏まえ、政府全体で検討したい」と述べました。

立民 泉代表「わかりやすいルールの説明を」

立憲民主党の泉代表は、記者会見で「今の感染状況などからすれば、外国人観光客にもマスクのルールを共有することを前提にして、今後も入国制限を緩和することはあり得る。政府には、わかりやすいルールの説明を行うとともに、世界の変異株に関する情報収集をより活発に行い、科学的根拠に基づいた水際対策をしっかり考えてほしい」と述べました。

公明 石井幹事長「経済活動との両立を図る局面 試みを評価」

公明党の石井幹事長は記者会見で「新型コロナウイルスを完全に克服したわけではないが社会経済活動との両立を徐々に図る局面に至っているので、その一環として、入国制限を緩和する試みを評価したい」と述べました。

一方「GoToトラベル」の再開については「観光業者や旅行業者はなるべく早く再開してほしいと思っているが観光地には全国から観光客を受け入れて本当に大丈夫かという不安もある。その兼ね合いや、感染状況を見ながら判断すべきだ」と述べました。

東京都 小池知事 “本格的な受け入れ再開に向け対応策を検討”

政府が新型コロナの水際対策で止めていた外国人観光客の入国を来月10日から再開することを決めたことについて、東京都の小池知事は27日の記者会見で、感染の再拡大を防ぐため水際での検査を徹底すべきだとしたうえで、外国人観光客も都民と同様に、マスクの着用や食事は認証を受けた店を利用するといった対応を取るよう求める考えを示しました。

そのうえで、対象となる外国人観光客が限定されていることを踏まえ「今回はトライアルと聞いているので、そこから出てくる課題を参考にしながら、都としての対応策を進めたい」と述べ、本格的な受け入れ再開に向けて都としての対応策を検討していく考えを示しました。

JTB山北社長「インバウンド熱は高い」

政府が外国人観光客の入国を再開することについて、旅行最大手のJTBの山北栄二郎社長は、27日の決算発表の記者会見で「非常に歓迎すべき話だ。海外からの問い合わせが殺到している状況で、円安の影響もあってインバウンド熱は高いと感じる」と述べ、期待を示しました。

一方、山北社長は、外国人観光客の受け入れが当面、添乗員付きのツアー客に限られるため、業績への効果は大きくないとして、政府に対し、今後の感染状況を踏まえた柔軟な対応を求めたいという考えを示しました。