【詳しく】北朝鮮 コロナ禍でも発射続ける いったいなぜ?

北朝鮮で新型コロナウイルスによるとみられる発熱者が相次ぐ中、国営メディアは24日までの発熱者は国内で306万人を超えたと発表し、専門家は感染が深刻な状況だと指摘しています。そんな中、北朝鮮は25日朝、ICBM=大陸間弾道ミサイルと推定されるミサイルなど3発を相次いで発射しました。なぜコロナ禍でも北朝鮮はミサイルの発射を続けるのか、詳しく解説します。(国際部・近藤由香利)

北朝鮮で発熱者300万人超え

北朝鮮は24日、午後6時までの1日で、新たに11万5000人余りに発熱の症状が確認されたと発表し、先月下旬以降の発熱者の累計は、306万4000人余りに上り、国民の9人に1人の割合となっています。

今月12日の朝鮮労働党政治局会議では「最大非常防疫態勢」に移行することを決め、都市封鎖や人海戦術で感染の封じ込めを図ろうとしています。
北朝鮮情勢に詳しい慶應義塾大学の礒※ザキ敦仁 教授は、北朝鮮の新型コロナの現状について、「4月25日に首都ピョンヤンで行われた軍事パレードの際には、地方からも軍部隊が入っていてノーマスクで行われた。この時点では北朝鮮当局はコロナを抑え込んでいるという自信があったと思うが、5月に入ってから、実際にピョンヤンで感染者が出てしまった。そして調べてみると、発熱者は大量にいる。こういったことを深刻に捉えて、北朝鮮自身が国内に対して警戒感を強めようということを言っている」と指摘します。

ワクチンの提供を受けていない理由は?

その一方で、北朝鮮は新型コロナのワクチンの提供をこれまで受けていません。

その理由について、「コールドチェーン」と呼ばれる低温での輸送網整備が整っていないことやモニタリングのために国外から人が入ってくることを嫌がっているためだとみています。

「コールドチェーンを整えるための電力が不足していたり、もしワクチンを入れるとなれば、技術的な側面、そしてモニタリングの側面で国外から人が入ってきたりする。何しろ非常に慎重に物事を決めていく体制であるので、国外から人を入れることを極度に嫌がってきた。ただ、ここまで感染者が出ていることがはっきりしたのであれば、今後、北朝鮮の対応は変わるかもしれない」

コロナ禍でもミサイルを発射

こうしたなかでも北朝鮮は25日朝、ICBM=大陸間弾道ミサイルと推定されるミサイルや短距離弾頭ミサイルあわせて3発を発射しました(韓国軍発表)。

韓国大統領府の高官は、新型のICBM「火星17型」だとみて分析を進めているとしています。

キム・ジョンウン総書記はコロナ禍を「建国以来の大動乱と言える」として強い危機感を示しています。

そんななか、なぜ北朝鮮は発射を続けるのか。

これについて礒ザキ教授は、「5月12日に初めてコロナ感染者が出たと発表したその日にも3発のミサイル発射実験 をしている。新型コロナの感染が非常に深刻な状況にあったとしても、兵器開発は優先事項として続けていくという意思が明確に示された」と述べて、北朝鮮が去年1月に発表した国防5か年計画に沿って核・ミサイル開発を推し進めていると分析しています。

射程異なるミサイルを相次いで発射

また今回の発射の特徴は、飛行距離はおよそ360キロ、高度はおよそ540キロのICBM=大陸間弾道ミサイルと推定される弾道ミサイルと、およそ60キロの高度で760キロ飛行したとみられる短距離弾道ミサイルを相次いで発射したことです(韓国軍発表)。

これについて礒ザキ教授は、「同じ時間帯に異なるミサイルを3発発射したというのは珍しいことだ。当然、今後有事の可能性を考えるうえで、北朝鮮としては同じものを発射するだけではなく新型のミサイルを開発、量産し、実戦配備して、訓練するということを考えていかなくてはならない。そういった意味で兵器の多様化を見せつけてきたことになる」と指摘しました。

ウクライナ情勢が北朝鮮を後押し?

ことし2月からロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まった直後にプーチン大統領は「現代のロシアは、ソビエトが崩壊した後も、最強の核保有国の1つだ」と述べ、核大国であることを誇示しています。

ロシアの軍事侵攻が北朝鮮の核開発に与える影響について礒ザキ教授は「北朝鮮はウクライナ情勢を注意深く観察し、大国から身を守るためには核がないといけないという考え方にさらに傾倒していくことは間違いない。背中を押されていると思う。核を持っていればアメリカからの攻撃を受けないですむという考え方もさらに重視せざるを得ない状況にある」と指摘しました。

核実験は中国との関係を踏まえて判断か…

さらに、北朝鮮が7回目の核実験に踏み切る可能性が指摘されていることについて「中国は北朝鮮が核を保有することや核実験について猛反発している。前回核実験を行った2017年のときは中朝関係が悪化していた。だからこそ核実験ができたと言える。そのため北朝鮮は修復してきた中朝関係を壊してまで果たして核実験に踏み込むのかどうかで、キム・ジョンウン政権は中国との関係を重視するのか、それとも抑止力、軍事力を強化することがそれを上回るのかという判断になる」と述べ、北朝鮮にとって最大の支援国である中国との関係を踏まえて判断するという見方を示しました。

※ザキは「立つ崎」