日米豪印クアッド首脳会合終わる 協議の成果 共同声明で発表へ

日米豪印4か国の枠組み、クアッドの首脳会合は午後0時半すぎに終了しました。
冒頭、岸田総理大臣は、ウクライナ情勢などを踏まえ「法の支配に基づく国際秩序を根底から揺るがす事態が起きた」と述べ、インド太平洋地域で同様の事態を起こさないよう4か国で連携して対応していく考えを示しました。

会合には、岸田総理大臣、アメリカのバイデン大統領、23日就任したばかりのオーストラリアのアルバニージー首相、インドのモディ首相の4か国の首脳が参加しました。

冒頭、岸田総理大臣は「去年9月の会合以降、われわれが重視する法の支配に基づく国際秩序を根底から揺るがす事態が起きた。ロシアによるウクライナ侵略は国連憲章でもうたわれている諸原則への真っ向からの挑戦でインド太平洋地域で同じようなことを起こしてはいけない」と述べました。

そのうえで「こうした厳しい情勢の中だからこそ、われわれが一堂に会して4か国の連帯と『自由で開かれたインド太平洋』という共通のビジョンへの強固なコミットメントを国際社会に示す意義は極めて大きい」と述べました。

また岸田総理大臣は「地域諸国とともに歩むことなしに、日米豪印協力の成功はありえない。ASEAN、南アジア、太平洋島しょ国といった地域諸国の声にしっかりと耳を傾け、地域が直面する喫緊の課題の解決に資するような協力を一層進めていく必要がある」と述べました。

会合では、ウクライナ情勢のほか、海洋進出の動きを強める中国などを念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた連携、経済を含めた幅広い分野の協力の在り方をめぐって協議が行われました。
このあと岸田総理大臣は、バイデン大統領らとのワーキングランチを経て、議長国として記者会見し、議論の内容を発表することにしています。

また協議の成果が共同声明として発表される見通しです。

共同声明には、自由で開かれたインド太平洋への4か国の強固な関与を確認し、自由や法の支配に加え、主権と領土の一体性などの原則を強く支持するとともに、こうした原則を、ほかの地域でも推進する立場が盛り込まれる方向です。

そのうえで、地域情勢に関して、中国が海洋進出の動きを強めていることを念頭に、ルールに基づく海洋秩序への挑戦に対抗し、国際法を順守する重要性を明記することが検討されています。

また、北朝鮮をめぐって、朝鮮半島の非核化や、拉致問題の即時解決の必要性を確認し、情勢の不安定化をもたらす核・ミサイル開発を非難する見通しです。

このほか、インド太平洋地域での実践的な協力の在り方も盛り込まれ、気候変動問題に対応する新たな枠組みの立ち上げに加え宇宙分野では、日米豪印4か国の衛星データを各国に提供するなど、協力の仕組みの創設などが明記される見通しです。

来年はオーストラリアで開催

オーストラリアのアルバニージー首相は、来年のクアッドの首脳会合がオーストラリアで開催されることを明らかにしました。

クアッドの首脳会合のあと記者団の取材に応じたアルバニージー首相は「来年、オーストラリアでバイデン大統領、モディ首相、岸田総理大臣を迎えることを楽しみにしている」と述べました。

【米豪印首脳の発言と解説】

バイデン大統領 “クアッドを土台に連携を深めるべき”

アメリカのバイデン大統領は、「ロシアはウクライナの文化を消滅させようとしている」とプーチン大統領を強く非難しました。

そのうえで「ロシアによるウクライナへの侵攻は、インド太平洋戦略の重要性を高めただけだ」と述べて、ウクライナ危機は、みずからのインド太平洋戦略を推し進める理由にしかならないと強調しました。

背景には、アメリカが、対ロシアと中国の二正面の対応を迫られていることでアジア地域への関与が弱まることへの懸念が生じていることがあり、ウクライナ危機が起きたからこそ、中国の覇権主義的な動きに対抗するため、クアッドを土台に連携を深めるべきだと訴えました。

アルバニージー首相「政権交代後も変わらない」

オーストラリアのアルバニージー首相は、就任直後の最初の活動としてクアッドに参加できることを名誉に思うとしたうえで「オーストラリアは政権が交代したが、われわれはクアッドに関与する姿勢は変わっていないし、これからも変わらない」と強調しました。

これはみずからの労働党がかつては中国寄りとも言われる姿勢をとってきたことで、オーストラリアの中国への対抗姿勢に変化が現れるのか、注目されていることを意識した発言で、新政権も、クアッドを基盤に地域の安定と発展に寄与したいという姿勢を明確に打ち出しました。

モディ首相「クアッドは平和と安定を確保するもの」

インドのモディ首相は「クアッドの取り組みはインド太平洋地域の平和と安定を確保するものだ」と述べて、クアッドの重要性を強調しました。

インドは特定の勢力にもくみしない「戦略的自立性」を基本とした外交姿勢をとっていますが、そのインドにおいても、クアッドの重要性は増しているという認識を示しました。