1-3月のGDP 2期ぶりマイナス 回復の力強さに欠ける要因は

ことし1月から3月までのGDP=国内総生産は、前の3か月と比べた実質の伸び率が年率に換算してマイナス1.0%と2期ぶりのマイナスになりました。この期間にまん延防止等重点措置が各地に適用され、外食や旅行などのサービスの需要が低迷したほか、公共事業が落ち込んだことなどが要因です。

内閣府が18日に発表したことし1月から3月までのGDPの速報値は、物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてマイナス0.2%となりました。

これが1年間続いた場合の年率換算は、マイナス1.0%で、2期ぶりのマイナスになりました。

項目別にみますと▽GDPの半分以上を占める「個人消費」は、この期間に、オミクロン株の感染拡大でまん延防止等重点措置が各地に適用されていた影響で、外食や旅行などの需要が低迷し、前の3か月と比べてマイナス0.03%となりました。

また、▽公共事業などの「公共投資」はマイナス3.6%となったほか、

▽「輸入」が新型コロナのワクチンなど医薬品やスマートフォンの輸入が増えて、プラス3.4%と伸びました。

その結果、GDPの計算上は伸び率を押し下げることになりました。

一方、▽「企業の設備投資」は、機械類や研究開発の投資が伸びプラス0.5%となりました。
この結果、昨年度・2021年度の1年間のGDPの伸び率は、実質でプラス2.1%と、3年ぶりにプラスに転じました。

ただ、前の年度が、新型コロナの影響でマイナス4.5%と大きく落ち込んでいたことと比べると、回復の力強さに欠ける形となりました。

一方、1月から3月までの名目のGDPの伸び率はエネルギー価格など物価の上昇を反映して前の3か月と比べてプラス0.1%、年率換算でプラス0.4%となりました。

回復に鈍さ その要因は?

新型コロナの感染拡大前、3年前の2019年の10月から12月のGDPは1年間続いたと仮定した年率換算で541兆円でした。

GDPは2020年4月から6月を底に回復しますが、その後は一進一退を繰り返します。

緊急事態宣言が解除されたあとの去年10月から12月までのGDPは年率換算で539兆円まで回復し、政府は「コロナ前の水準にほぼ回復した」としています。

しかし、18日に発表されたことし1月から3月までのGDPはマイナス成長となったことで537兆円に減りました。感染拡大前のピークだった2019年4月から6月の557兆円とはおよそ20兆円の開きがあります。
回復に鈍さがみられる大きな要因は、GDPの半分以上を占める「個人消費」の動向です。感染拡大前の2019年の10月から12月の個人消費は年率換算で293兆円でした。

その後、個人消費は感染状況に左右される形でプラスとマイナスを繰り返し、GDP全体も同様の動きをします。

そしてことし1月から3月までの個人消費は年率換算で292兆円、感染拡大前とほぼ同じ水準となっていますが、拡大前のピークには届いていません。
足元では、ことし3月にまん延防止等重点措置が解除され、旅行や外食の回復が期待される一方、ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギーや食料品の価格上昇に拍車がかかる事態となっています。

相次ぐ物価の上昇は消費者心理を冷え込ませ、個人消費の先行きの懸念材料となっています。

松野官房長官「下振れリスクには十分注意する必要」

松野官房長官は、午前の記者会見で「過去の感染拡大時には、内需のGDPに対する寄与度が大幅にマイナスだったが、1月から3月は感染者数が多い中にあってもプラスとなった。これはオミクロン株の特性を踏まえたメリハリの効いた対策を講じ、経済社会活動を極力継続できるよう取り組んできたことが表れたものと考えている」と述べました。

そのうえで、「今後、感染対策に万全を期し、経済社会活動が正常化に向かう中で、各種政策の効果もあって景気は持ち直していくことが期待される。ただし、ウクライナ情勢などによる不透明感が見られる中で原材料価格の上昇や金融資本市場の変動、供給面での制約などによる下振れリスクには十分注意する必要がある」と指摘しました。

山際経済再生相「下振れリスクに対応していく」

山際経済再生担当大臣は、記者会見で、ことし1月から3月までのGDPの実質の伸び率が2期ぶりのマイナスとなったことについて、「過去の感染拡大時に比べてマイナス幅が相当少なかったのは偽らざる実感だ。国民全体としていわゆる『ウィズコロナ』、コロナとうまく付き合いながら社会経済活動を続ける意識があったからでないか。また、まん延防止等重点措置の解除後の、飲食やサービスの消費は4月から6月までのGDPで結果が出てくるが、決してマイナスではない。足もとの景気は持ち直しているという判断を変える必要はない」と述べました。

一方で景気の先行きについては、「ウクライナ情勢は下振れリスクとして不確実性が相当ある。1月から3月までで影響がなかったとは言わないが、4月から6月のほうが影響が色濃く出てくるものとみられる。総合緊急対策を迅速かつ着実に実行し、下振れリスクに対応していく」と述べました。

日本貿易会 小林会長「内需が横ばい、消費が横ばいは残念」

ことし1月から3月までのGDP=国内総生産が、2期ぶりのマイナスとなったことについて、日本貿易会の小林健 会長は18日の会見で、「内需が横ばい、消費が横ばいというのは、大方の予想どおりではあるが残念だ。日本経済は原材料高を背景とした物価上昇から抜け出せておらず、需要が伸びていくよう努力しないといけない」と述べました。

そのうえで「中小も含めて賃金の引き上げを行って、消費を喚起させなければならない」と述べ、日本経済の持続的な成長に向けては、企業が積極的に賃上げを行うことが重要だという認識を示しました。