ウクライナ東部 戦況こう着か ロシアで軍事同盟首脳会議開催へ

ロシア軍が掌握を目指すウクライナ東部では、欧米の軍事支援を受けるウクライナ軍の反撃でロシア軍の勢いが失われ、戦況はこう着しているとみられます。一方、16日にはロシアが主導する軍事同盟の首脳会議がモスクワで開催される予定で、プーチン大統領としては加盟国の結束をアピールし欧米側をけん制するねらいがあるとみられます。

ロシア国防省は15日、空軍がウクライナ東部のドネツク州の各地をミサイルで攻撃し、指揮所や武器庫などを破壊したほか北東部スムイ州で対空ミサイルシステムを破壊したと発表しました。

一方、ウクライナ側はロシア軍が進軍の拠点の1つとしてきた東部のハルキウ州で周辺の集落を次々と奪還するなど反撃を続けていて、今月11日ごろ、東部のルハンシク州を流れるドネツ川を渡ろうとしていたロシア軍を攻撃して進軍を阻んだとみられています。
これについてウクライナ軍は13日SNSに投稿し、川を渡ろうとしていたロシア軍の戦車や装甲車など70台以上を破壊することに成功したと主張したうえで、軍事支援を続けるアメリカから供与されたりゅう弾砲による成果だとしています。

イギリス国防省も15日、ロシア軍の地上部隊に大きな被害が出ていると分析したうえで「東部のドンバス地域でロシア軍は勢いを失い進軍は予定より大きく遅れている。今後30日で進軍が劇的に加速する可能性は低い」と指摘し、戦況はこう着しているとみられます。
こうした中、北欧フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相は15日、首都ヘルシンキで会見し、NATO=北大西洋条約機構への加盟を申請することを正式に明らかにしました。

隣国のスウェーデンも加盟申請について近く結論を出す見通しで、マリン首相はスウェーデンと一緒に申請を行いたいという考えを強調しました。

こうした動きにロシアは反発を強めていて、プーチン大統領は14日、ニーニスト大統領と電話で会談し、ロシア大統領府によりますと「軍事的中立という伝統的な政策を放棄するのは誤りだ。長年にわたる両国の互恵関係に否定的な影響を及ぼす可能性がある」と批判しています。

さらに、16日にはロシアが主導する軍事同盟のCSTO=集団安全保障条約機構の首脳会議が首都モスクワで開催される予定で、プーチン大統領としては軍事同盟の結束をアピールし、NATOをけん制するねらいがあるとみられます。

ロシア主導の軍事同盟「CSTO」とは

CSTO=集団安全保障条約機構はロシアが主導する軍事同盟で、ロシアをはじめベラルーシや中央アジアのカザフスタンなど旧ソビエトの6か国で構成されています。

ソビエトが崩壊したことで安全保障をめぐる環境が急激に変化したことを受けて、30年前の1992年5月、関係国が集団安全保障条約に調印し、2002年に機構が発足しました。

条約では加盟国が侵略を受けた場合、加盟国全体に対するものと見なしその国の要請に基づき、軍事援助などを行うとされています。

ことし1月には、中央アジアのカザフスタンで燃料価格の引き上げをきっかけに政府に対する大規模な抗議活動が起きた際、トカエフ大統領の要請でCSTOの部隊2000人余りが派遣されました。

ロシアのプーチン大統領は部隊が現地で展開している最中に開かれたCSTOの首脳会議で「この活動は極めて時宜を得た全く合法的なものだ」と述べ、部隊の果たした役割を強調しました。

そして「CSTOを通じた対応はいわゆるカラー革命のシナリオの実現を許さないことを明確に示している」と述べ、ロシアが勢力圏とみなす旧ソビエト諸国への欧米からの干渉を防ぐためにもCSTOの枠組みをいっそう重視する考えを示しました。

今回CSTOの首脳会議はウクライナへの軍事侵攻を受けて、ロシアが欧米などから制裁を科され国際社会から孤立を深めるとともに、NATO=北大西洋条約機構が、ウクライナに対する軍事支援を強化するなかで開かれます。

プーチン大統領としては、CSTOの首脳会議を通して加盟国に対してウクライナでの軍事作戦への理解を求めるとともに結束をアピールすることで、欧米側をけん制したいねらいがあるとみられます。