「戦後最悪」千日デパートビル火災から50年 今も残る課題 大阪

118人が死亡し、国内の建物火災で戦後最悪の被害となった大阪の千日デパートビル火災から、13日で50年です。
専門家が「日本の建物火災を考える原点」と評した火災のあと、数々の防火対策が進められましたが、今なお課題は残っています。

118人が犠牲 熱や煙から逃れようと飛び降りて亡くなった人も

火災は昭和47年の5月13日の夜、大阪市の繁華街、ミナミにある雑居ビル、千日デパートビルで起きました。

7階にあった飲食店の客や従業員など118人が犠牲になり、国内の建物火災で戦後最悪の被害となりました。
ビルは地上7階建てで、電気工事中だった3階のスーパーから出火し、煙が空調ダクトやエレベーターの昇降路を伝って、7階の飲食店に充満しました。

煙で窒息して亡くなった人だけでなく、熱や煙から逃れようとビルから飛び降りて亡くなった人も多くいました。

火災から50年 当時を知る人が現場訪れ祈り

火災から50年となった13日、現場のビルがあった場所には当時を知る人が訪れ、亡くなった人たちに祈りをささげました。

火災があった場所は現在、別のビルが建っていますが、敷地内に犠牲者を慰霊するための地蔵が設置されていて、今もビルの管理会社が毎朝、地蔵の周りをきれいに拭いて花を交換しています。
13日午前中には、当時のビルで電気設備管理の仕事をしていたという85歳の男性が訪れ、地蔵に向かって手を合わせて祈りをささげていました。
男性は「あのときのことを思い出すと涙が出そうになります。周りの建物も変わり、火災があったことは今では忘れられてしまっているのではないでしょうか」と話していました。

元救助隊員「私の肩をかすめて落下し 亡くなる人も」

大阪市消防局の元救急隊員、植尾昌彦さん(80)は当時、現場で救助活動にあたりました。

駆けつけた現場で目にしたのは、煙や火から逃れようと、7階から次々と飛び降りてくる人たちでした。

そこで、飛び降りてくる人を助けようと、近くを通りかかった人にも手伝ってもらい、地上でシートを広げて受け止めようとしました。

植尾さんが受け止めることができたのは6人。

多くの人が転落して亡くなりました。
植尾さんは「現場に到着したときは何が起きているのかもわかりませんでした。私の肩をかすめて落下し、亡くなる人もいました。とにかく1人でも助けようと必死でした」と話していました。

そして、火が収まってからビルの7階に入ると、逃げ遅れた多くの人たちが折り重なるようにして亡くなっていました。

少しでもきれいな空気を求めようとしたのか、トイレの便器に顔を入れて亡くなっている人もいたといいます。

いまでもその光景を忘れられないでいます。

植尾さんは「50年たっても当時のことを思い出します。7階で多くの亡くなった方の顔を見ました。それぞれの方にご家族がいたはずで、取り返しのつかないことが起きたのだと感じました」と話しました。

当時 現地調査行った専門家「日本の建物火災の対策考える原点」

災害対策に詳しい専門家は、千日デパートビル火災から50年たった今も、その課題が残されていると指摘します。
神戸大学の室崎益輝 名誉教授(77)は、当時、この火災の現地調査を行いました。

室崎名誉教授は「日本の建物火災の対策を考える原点だったと思います。われわれに投げかけられた課題がどこまで改善されて、何が残されたかを考え続ける必要があります」と話しています。

規制が適用されない「既存不適格」のビル 今も各地に

この火災では、
▽出火場所にスプリンクラーが設置されていなかったことや、
▽一部の防火シャッターが閉められていなかったなど、
防災設備の不備が明らかになりました。

また、
▽上の階に火事の情報がすぐ伝わらなかったことや、
▽避難経路が限られ、わかりにくかったことなども、
被害が拡大した要因とされています。

次の年にも熊本市の「大洋デパート」で104人が死亡する火災が起き、国は法令を改正するなどしてビルの防火対策を見直しました。
このうちスプリンクラーをめぐっては、設置を義務づけた消防法の規制強化が行われ、以前からある古い建物にもさかのぼって適用されることになりました。

一方、原則6階以上のビルに階段を2つ以上設置することを義務づけた建築基準法の規制強化をめぐっては、古い建物には適用されず、「既存不適格」のビルが今も各地にあります。

去年12月に大阪 北区でクリニックの入るビルが放火された事件でも、現場は規制が強化される前に建てられた「既存不適格」の建物で、階段が1つしかなく、被害拡大の要因となった可能性が指摘されています。

室崎名誉教授は「既存不適格の建物は新しい法律からすると危険な建物です。既存不適格のビルがどれだけどこにあるというのを、国と自治体が把握して、特に危険な建物については行政指導で改善を図っていくことが求められます」と話します。

そのうえで、ビルの所有者に対して「法律はあくまでも最低限の安全基準にすぎません。そのことを理解する必要があります。常に安全のための措置を付け加えていくことが必要です」と呼びかけました。

私たち一人ひとりの備えも大切

また、ビルを利用する私たちに対して、室崎名誉教授は「建物の階段がどこにあるのか、防火対策はされているのかなど、自身でチェックする姿勢が重要です。ふだんから避難用具などの使い方を学んで、火災に対する教養を身につけてほしいと思います」と話しました。

救助にあたった植尾さんも、「建物の耐火基準が厳しくなった今も、避難の重要性は変わっていません。外出先でも避難階段の位置を常に確認するなど、ぜひ意識してほしいです」と話していました。