円安・株価 潮目に変化?【経済コラム】

大型連休明けのマーケットは、1ドル=131円30銭台と20年ぶりの円安水準を更新した後、逆に一時127円台まで円高方向に動きました。
また、日経平均株価は一時2万6000円割れ。アメリカでもダウ平均株価が年初来安値を更新。
背景にあるのが「アメリカのインフレ長期化」への懸念で、それによって相場の潮目に変化が出てきているようにも見えますが、果たして?
(経済部記者 猪俣英俊)

主要企業「円安続かず」

大型連休明けに、大手企業の昨年度の決算が相次いで発表されましたが、市場で注目されたのが「円相場の見立て」です。

決算発表にあわせて、今年度・2022年度の業績見通しの前提となる為替相場の想定が示されますが、その想定はトヨタ自動車が「1ドル=115円」、日産自動車や日立製作所が「120円」、ソニーグループが「123円」と、いずれも足元の水準と比べるとかなり「円高」方向で想定されているのです。

急速に進んだ円安を織り込み切れていない面もありますが、主要企業の多くがいまの水準の円安が続くとは見ていないということです。

円相場に動きが

4月下旬に、20年ぶりに1ドル=131円台に突入した円相場。
その後も130円台近辺で推移し、大型連休明けの5月9日には131円30銭台をつけて、20年ぶりの円安水準を更新。

ところが12日になると、逆に一時127円台まで円高ドル安が進みました。

米インフレ長期化への懸念

この円相場の動きの背景にあるのが、「アメリカのインフレ長期化への懸念」です。

アメリカのインフレをめぐっては、そろそろ物価上昇率が頭打ちになるというピークアウト論も出ていましたが、日本時間11日夜に発表された4月の消費者物価指数は前年同月比で「プラス8.3%」。

3月は8.5%だったので、8か月ぶりの伸び率縮小となりました。

これに対する市場の反応が、「インフレが長期化し、景気を冷え込ませるのではないか」という懸念でした。

確かに伸び率は縮小したものの、事前の市場予想である8.1%を上回り、水準自体も依然として記録的な高さだという受け止めです。

変動の大きいエネルギーや食品を除いたコア指数は前月比「プラス0.6%」で、3月の0.3%からむしろ上昇しました。

家賃や航空運賃など幅広い品目が上がり、人手不足を背景に賃金の上昇も続いています。

予想以上の物価上昇の強さだったことなどから、なおインフレが長期化するという見方が広がる形となりました。

このため、アメリカの中央銀行にあたるFRBが金融引き締めを加速させ、その急激な金利上昇などにアメリカ経済が耐えきれず景気後退につながりかねないという見方にもつながっています。
●市場関係者
「市場のインフレ予想も上振れてきているのが気がかりで、これはFRBがインフレを制御できないのではないかという信認の揺らぎが生じていることを示唆するものだ。
そうなると市場でインフレ予想が暴走し、駆け込み消費や便乗値上げを招いて歯止めが効かなくなるおそれもある」

株価は、上値重く

こうした懸念を受けて、12日にはダウ平均株価は年初来安値を更新。

アメリカの長期金利も3%を下回りました。

また、中国では「ゼロコロナ政策」のもとで、上海などに続いて北京でも厳しい外出制限が出され、生産や物流の停滞懸念も強まりました。

先行きのリスクが高まる中、最近では影が薄くなっていた「有事の円買い」の動きが出た、円相場の反転につながったものと見られます。

一方で、日経平均株価は12日にアメリカや中国の景気先行き懸念から、およそ2か月ぶりに2万6000円を割り込みました。
振り返れば株価は去年9月には3万円台、ことしの年初には2万9000円をつけていましたが、その後は下落傾向が続いています。

市場関係者の中には、さらに年初来安値の2万4700円台(終値)を下回るタイミングがくるとの予想も出ています。

「円安」「株高」の流れに潮目の変化が出ているようにも見えますが、日米の金融政策の方向性や金利差拡大の構図には変わりはないため、円相場は今後も円安が進み、135円、140円になる可能性もあるという見方もあります。

また、アメリカのインフレについても「やはりピークアウトした」という受け止めもあり、一辺倒ではありません。

本当に潮目の変化になるのかどうか、さらにマーケットの動きの裏側を探っていく必要がありそうです。

注目予定

16日には中国が先月の工業生産や消費など、主要な経済指標を公表します。

「ゼロコロナ政策」のもと、上海などの各地で厳しい外出制限がとられた影響の広がりが懸念されます。

20日に発表される日本の4月の消費者物価指数は、日銀が目標としてきた「プラス2%程度」になる可能性も指摘されています。