フィンランド首相 1週間以内にNATO加盟申請に向け決断
日本を訪れている北欧フィンランドのマリン首相が、NHKのインタビューに応じ、ウクライナ情勢を受けて「ヨーロッパの安全保障の環境はすべて変わってしまった。国際法を守らないロシアに対しては無防備であってはいけない」と述べ、今後1週間以内にNATO=北大西洋条約機構への加盟申請に向けて決断することを明らかにしました。
10日から初めて日本を訪れているマリン首相は、11日午後、都内でNHKのインタビューに応じました。
フィンランドは、ロシアとおよそ1300キロにわたって国境を接しながら、ロシアとの関係に配慮してNATOに加盟してきませんでしたが、ウクライナ情勢を受けて、国内で加盟を支持する声が急速に高まっています。
これについてマリン首相は「ヨーロッパの安全保障の環境がすべて変わってしまった。国際法やルールを守らないロシアに対して、無防備ではいられない」と述べ、NATOへの加盟申請について「国民にも議会にも加盟に賛成する声が多い。今後1週間以内に決断をする」と述べ、帰国後まもなく加盟申請に向け決断することを明らかにしました。
また「私たちは去年12月にも戦闘機に100億ユーロを投資するなど、これまでも最悪の事態に備えて防衛力を維持してきた」と述べ、以前から有事に備えて軍事力を維持してきたと強調しました。
さらに、NATOへの加盟が承認されるまでの間にロシアがフィンランドに対して軍事的な行動をとるのではないかという見方については「複数の友好国が何らかの支援を約束してくれているし、EU=ヨーロッパ連合にも相互に協力する義務がある。NATOが承認手続きを迅速に進めることが重要で、これについても議論されている」と述べ、各国との調整が進んでいることを明らかにしました。
そして、36歳の女性のリーダーとしてフィンランドの歴史的な転換を率いることについて「多くの人の意見に耳を傾け、すべての人とともに決断することが重要です。私は一般的なリーダー像とは違うかもしれませんが、常にその精神を大切にしてきました」と話していました。
マリン首相とは
南部の工業都市タンペレの市議会議員などを経て、2015年に国会議員に初当選したあと、社会民主党が率いる連立政権で運輸・通信相などを歴任し、2019年にフィンランドで最年少の首相に就任しました。
環境問題に関心が高く、温室効果ガスの排出量をEU全体の目標よりも15年早い2035年までにゼロにする政策を推し進めてきました。
幼い頃に両親が離婚したあと、母親と女性のパートナーの家庭で育ち、苦しい経済状況の中で15歳からアルバイトをして家計を支えたということです。
社会な平等や多様性の実現にも力を入れていて、過去のインタビューでは「さまざまなジェンダー、世代、背景を持つ人が意思決定層にいて、一緒に決めていくことがとても重要だ」と述べています。
現在は夫と幼い娘とともに暮らし、趣味はアウトドアだということです。
フィンランドとは
主な産業は、豊富な森林資源を生かした林業や製紙業のほか、通信技術などのハイテク産業も基幹産業となっていて、次世代の通信規格「6G」の開発では日本も参加する産官学のプロジェクトを進めています。
福祉国家としても知られており、子育てや教育、医療に対する手厚い補助があり、国連が毎年まとめている世界各国の「幸福度」を数値化する報告書では、5年連続で1位になっています。
また、男女平等の意識が根づいていて「世界経済フォーラム」が発表している男女平等を示す指数でも去年世界で2位となっていて、国会議員のおよそ半数を女性が占め、19人の閣僚のうち半数以上を女性が務めています。
フィンランドの対ロシア政策
第2次世界大戦の際には2度にわたって当時のソビエトから軍事侵攻を受け、多くの犠牲を出し領土の一部も失いましたが、独立を守りました。
その後は、民主主義や資本主義を維持するために、国境を接する大国ソビエトとの関係に配慮して、冷戦中も西側の軍事同盟であるNATO=北大西洋条約機構には加盟しませんでした。
こうした大国に隣接する小国が生き残るための政策は「フィンランド化」とも呼ばれるようになりました。
ソビエト崩壊後の1995年にはEU=ヨーロッパ連合に加盟する一方でNATOには加盟しませんでしたが、徴兵制を設けて防衛力は維持し、NATOのパートナー国として軍事演習などに参加しています。
一方でロシアとは毎年、首脳が行き来して会談を行っていて、ウクライナへの軍事侵攻が始まったあとも、ニーニスト大統領がプーチン大統領と電話会談を行いました。