マリウポリ市民避難難航か ロシア 支配を既成事実化の動き

ウクライナ東部のマリウポリではロシア軍が、取り残された市民を避難させるため一時的に戦闘を停止すると主張したものの、ウクライナ側は攻撃が続いていると訴え、市民の避難は難航しているもようです。
プーチン政権は大統領府の高官をマリウポリに派遣するなど、9日の「戦勝記念日」を前に、東部の支配を既成事実化しようとする動きを強めています。

ロシア国防省は5日、空軍がウクライナ側の軍事施設45か所を攻撃したと発表し、このうち東部ではルハンシク州で指揮所や武器庫を破壊するなど、攻勢を強めています。

東部の要衝マリウポリでは、ロシア軍が包囲するアゾフスターリ製鉄所に今も数百人の市民が取り残されているとみられ、ロシア国防省は5日から7日までの3日間、現地時間の午前8時から午後6時まで一時的に戦闘を停止し、市民が避難するための「人道回廊」を設置すると発表しました。

しかしウクライナの「アゾフ大隊」の副司令官は5日、「ロシアが停戦の約束を守らず、市民に避難の機会を与えていない」と述べ、激しい攻撃によって、避難は思うように進んでいないと訴えています。

これについてプーチン大統領は5日、イスラエルのベネット首相と電話で会談し、ロシア大統領府によりますと「マリウポリの製鉄所から市民の安全な避難を確保する準備ができている」と主張しました。そのうえで「ウクライナ政府は、製鉄所に残る武装勢力に、武器を置くよう命じなければならない」と述べ、引き続き圧力を強める構えを示しました。

一方、ロシア西部のベルゴロド州の知事は5日、州内の2つの村がウクライナ側から砲撃を受け、電線が損傷し、電力供給に影響が出たと主張しました。ウクライナと国境を接するベルゴロド州などはウクライナ東部に攻勢をかけるロシア軍の拠点の一つで、先月には石油貯蔵施設が爆発するなどの被害が報告されています。

ウクライナ側は公式には認めていませんが、一部の爆発については、軍事侵攻に抵抗するためロシア軍の補給拠点をねらった越境攻撃ではないかという見方も出ています。
攻防が激しさを増すなか、プーチン政権は大統領府のキリエンコ第1副長官を4日、マリウポリに派遣し、キリエンコ氏は住民との会合で、生活の再建に向けた支援を強調したということです。

キリエンコ氏は1990年代、エリツィン政権下で首相を務めたこともあるプーチン大統領の側近の1人で、将来、ウクライナの東部2州の問題を担当する可能性があるとロシアの一部メディアは伝えています。

プーチン政権としては、9日の「戦勝記念日」を前に、キリエンコ氏を派遣することで、マリウポリを掌握したと内外に強調し、支配を既成事実化する思惑があるとみられます。