ロシア 東部2州の完全掌握目指すも ウクライナが徹底抗戦

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍は、東部2州の完全掌握を目指していますが、ウクライナ側の徹底抗戦を前に、苦戦が続いています。
激しい攻防が続く中、ロシアのラブロフ外相はウクライナへの欧米側の軍事支援を改めて強くけん制しました。

ロシア国防省は30日、東部ドネツク州や東部ハルキウ州などでミサイルによる攻撃を行い、ウクライナ軍の弾薬庫や燃料庫などを破壊したとしたほか、ロシア軍の砲兵部隊がウクライナ側の各地の拠点、389か所を攻撃したなどと発表し、東部を中心に戦闘を続けています。

一方、イギリス国防省は、30日に公表したウクライナの戦況分析で、「ロシア軍は、ウクライナ北東部での前進に失敗したことで、部隊の再配置を強いられ、士気の低下に苦しんでいる」として部隊の運用などを巡り、ロシア軍が課題を解決できていないと指摘しています。

また、アメリカ国防総省の高官も29日「ロシア軍のウクライナ東部での計画は当初の予定より遅れていると考えられる」と述べていて、ロシア軍が東部2州の完全掌握をねらうものの、ウクライナ側の徹底抗戦を前に、苦戦が続いていると分析しています。

一方、ウクライナ南部では、ロシアが掌握したとする地域で、支配の正当化を主張するため「ロシア化」とも言える既成事実化が進められています。

南部ヘルソン州ではあす5月1日からロシアの通貨ルーブルが導入されると国営のロシア通信などが伝え、4か月の移行期間のあと、ウクライナの通貨フリブニャから完全にルーブルに切り替えるとしています。

これに対し、ウクライナ保安庁は、26日、ヘルソン州で、ロシア側が一方的に任命した州知事と市長の2人について、国を裏切ったとして、反逆罪で起訴したことを明らかにしました。

ウクライナ側としては、ロシア側がこの地域の支配の既成事実化を強めようとする動きを認めない姿勢を示すねらいがあるとみられます。

こうした中、ロシアのラブロフ外相は30日に公開された中国の国営、新華社通信のインタビューの中で、欧米からの制裁について「ロシアの経済を抑圧し、競争力を弱体化させ、さらなる発展を阻止しようとしている。しかし、われわれが弱体化することはない」と批判しました。

一方、ウクライナ側との停戦交渉は、双方の代表団がオンライン形式で続けているとしたうえで、ウクライナの「中立化」や「非軍事化」だけでなく、ロシアの制裁解除についても議題になっていると主張しました。

また、ラブロフ外相は、「アメリカやNATO=北大西洋条約機構がウクライナの危機の解決に本当に関心を持つなら、まず、ウクライナへの武器と弾薬の供給をやめるべきだ」と述べ、ウクライナ東部などで激しい攻防が続く中、欧米側の軍事支援を改めて強くけん制しました。

掌握地域の「ロシア化」その実態は

ロシアはこれまでも、武力で掌握した地域で支配の正当性を主張するため「ロシア化」とも言える既成事実化を進めてきました。

2014年には、ウクライナ南部のクリミア半島で、軍事力を背景に、一方的に住民投票が実施され、プーチン大統領は、その結果を根拠にクリミアを併合しました。

住民投票を前にクリミアでは、ロシア軍の後ろ盾を得た武装集団が地元行政府や議会の庁舎などを次々に占拠し、ロシアの国旗を掲げたほか、ウクライナのテレビ放送が相次いで打ち切られ、ロシアの国営テレビ放送に切り替わっていきました。

プーチン大統領が一方的な併合を宣言したあとは、通貨がロシアのルーブルに切り替えられたほか、地元住民にロシア国民であることを証明するパスポートが発給され、標準時もモスクワ時間に変更されました。

その後、クリミアとロシア南部を結ぶ巨大な橋や火力発電所を建設するなど、プーチン政権は、インフラ整備にも力を入れ、国際社会からの非難や制裁にもかかわらず、ロシア支配の既成事実を重ねています。

また、ウクライナ東部でも、親ロシア派の武装勢力が事実上支配する地域で、3年前からロシアのパスポートを一方的に発給し、少なくとも70万人がロシア国籍を取得したとされ、「ロシア系住民を保護するため」とする軍事侵攻を正当化する名目として利用されました。

こうした「ロシア化」を強行しようという動きは、ウクライナへの侵攻が続く中でも進められています。

東部マリウポリでは、来月9日、第2次世界大戦で旧ソビエトがナチス・ドイツに勝利した「戦勝記念日」の式典が、ロシア国内と同じように行われると伝えられたほか、親ロシア派は、新たに学校が開き、700人以上の子どもたちがロシアの教科書を使って学び始めたと主張しています。

さらに南部ヘルソン州では、クリミアと同じように住民投票が行われる可能性が指摘されているほか、あす1日からはロシアの通貨ルーブルが導入されるとも伝えられ、経済面でもロシアによる支配を強めていくねらいがあるものとみられます。